持続的細胞プログラミング装置
本発明は、抗原特異的樹状細胞の活性化を刺激するように、ポリマー足場内に感染症模倣環境を作出するための、組成物、方法、および装置を含む。本発明の装置は、感染症および癌に対する防御免疫を被験体に提供するために用いられる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
政府の支援
本出願は、米国国立衛生研究所によって与えられたR37 DE013033の下で政府の支援を受けてなされた。米国政府は本発明において一定の権利を有する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
樹状細胞は、抗原提示細胞の中でも免疫系の最も強力な活性化物質である。治療上の利点を得るために樹状細胞を用いることに重点を置いた研究は、樹状細胞が希少であり、単離することが困難であるために遅れている。
【発明の概要】
【0003】
本発明は、インサイチューで細胞、例えば樹状細胞などの免疫細胞を持続的にプログラムするための装置および方法を特色とする。例えば、装置は埋め込まれて滞留し、そのあいだに細胞を絶えず動員して、教育し、およびリンパ節または体の疾患もしくは感染症部位に分散させるまたは送る。既存の装置に対する改善には、装置に入る細胞が長期間活性化され続けること、および免疫学的に活性化された、例えば抗原プライミングされた細胞が同時に長期間出現し続けることが含まれる。装置には、足場組成物、動員組成物、および展開組成物が含まれる。プライミングされた細胞の長期間の持続的な出現を媒介する展開組成物は、細菌由来免疫モジュレーターなどの感染症模倣組成物である。好ましい態様において、細菌由来免疫モジュレーターは、シトシン-グアニンオリゴヌクレオチド(CpG-ODN)などの核酸である。
【0004】
方法は、広く多様な疾患を処置するために、および広く多様な抗原に対するワクチンを開発するために用いられる。好ましい態様において、本発明は、癌ワクチンを開発するために用いられる。本発明の別の好ましい態様は、宿主免疫系を活性化して、続けて免疫応答を誘導するための手段を有する感染症模倣微小環境を含む。外因性の顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)と共に合成シトシン-グアノシンオリゴヌクレオチド(CpG-ODN)配列を用いることは、樹状細胞の遊走を正確に制御して、抗原特異的免疫応答をモジュレートするための方法を提供する。実際に、この合成シトシン-グアノシンオリゴヌクレオチド(CpG-ODN)配列を用いた新規アプローチは、有意な改善を証明し、免疫治療を開発するための新しい道を提供する。
【0005】
装置の様々な成分を表にして以下に記述する。
【0006】
【表1】
【0007】
装置は、3つの一次機能、例えば細胞を装置に誘引すること、免疫原性因子を提示すること、および装置から離れる細胞遊走を誘導することを行う。これらの一次機能の各々は、足場組成物(太字のフォント)および/または生物学的組成物(標準的なフォント)によって行われる。表1は、例示的な装置において少なくとも1つの一次機能と対をなした足場組成物または生物学的組成物のいずれかの例示的な組み合わせを提供する(1〜8)。例えば、足場組成物が、3つ全ての一次機能を行う(装置1)。代替の例において、足場組成物が、1つの一次機能、例えば装置に細胞(好ましくは、樹状細胞)を誘引することを行い、一方で生物学的組成物が、2つの一次機能、例えば免疫原性因子を提示する機能、および装置から離れて遊走するように細胞(好ましくは、樹状細胞)を誘導する機能を行う(装置3)。例として装置5は、装置3の逆の組み合わせである。足場組成物および/または生物学的組成物の例示的な二次機能には、特定の細胞または組織タイプへと装置を仕向けること、装置を1つまたは複数の細胞または組織の表面に接着させる/表面から放出させること、および装置の安定性/分解をモジュレートすることが含まれるがこれらに限定されるわけではない。
【0008】
本発明は、足場組成物と、該足場組成物の中に組み入れられているかまたは該足場組成物の上にコンジュゲートされている生物活性組成物とを含む装置を含み、該足場組成物は、樹状細胞を誘引して、該樹状細胞に免疫原性因子を導入し、それによって該樹状細胞を活性化し、かつ該足場組成物から離れて遊走するように該樹状細胞を誘導する。または、足場組成物の中に組み入れられているかまたは足場組成物の上にコーティングされている生物活性組成物が、樹状細胞を誘引して、該樹状細胞に免疫原性因子を導入し、それによって該樹状細胞を活性化し、かつ該足場組成物から離れて遊走するように該樹状細胞を誘導する。他の好ましい態様においては、足場組成物または生物活性組成物が、個別に樹状細胞を装置に誘引して、樹状細胞に免疫原性因子を導入し、かつ装置から離れて遊走するように樹状細胞を誘導する。
【0009】
好ましい態様において、動員組成物はGM-CSF、例えば封入されたGM-CSFである。装置は、局所GM-CSF濃度を一時的に制御して、それによって免疫細胞の動員、常在化、および装置から位置が離れているリンパ節または組織部位、例えば感染の部位または腫瘍の位置へのその後の分散/展開を制御する。GM-CSFの濃度は、それが動員要素または展開要素として機能するか否かを決定する。したがって、インサイチューで樹状細胞をプログラムする方法は、足場組成物と、封入された動員組成物とを含む装置を、被験体に導入することによって行われる。動員組成物のパルスが、装置の導入後1〜7日以内に装置から放出されて、残余量の動員組成物を装置内または装置上に残す。パルスに続いて、数週間にわたる残余量の緩徐な放出がある。動員組成物の局所濃度および放出の時間的パターンは、樹状細胞の動員、保持、および装置からのその後の放出を媒介する。例えば、パルスは、装置と会合した動員組成物の量の少なくとも50、60、75、90、または95%を含む。例示的な時間放出プロファイルは、装置を被験体へと導入した後1〜5日で、装置と会合した動員組成物の量の少なくとも60%を放出することを特徴とするパルスを含む。パルスに続いて、残余量は、パルス期間後長期間(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12日間、または2、3、4、5週間もしくはそれより長く)にわたって緩徐に放出される。
【0010】
足場を作出する方法は、足場組成物を提供する段階、樹状細胞を誘引または忌避するための手段を有するポリペプチドを含む第一の生物活性組成物を該足場組成物の中に組み入れるかまたは該足場組成物の上にコーティングする段階、および該足場組成物を第二の生物活性組成物と接触させる段階によって行われ、ここで、前記第二の生物活性組成物は、前記足場組成物に共有結合的にまたは非共有結合的に会合し、前記第二の生物活性組成物は、免疫原性因子を含む。この方法の代替の態様において、連結させるおよび接触させる段階は、複数の層をもたらすように繰り返され、ここで、第二の生物活性組成物は、樹状細胞を活性化する手段を有する化合物の組み合わせを含む。
【0011】
方法は、足場組成物と、該足場組成物の中に組み入れられているかまたは該足場組成物の上にコンジュゲートされている生物活性組成物とを含む装置を、被験体に投与する段階を含む、インサイチューで持続的に樹状細胞をプログラムすることを含み、該足場組成物は、樹状細胞を誘引して該樹状細胞に免疫原性因子を導入し、それによって該樹状細胞を活性化し、かつ該足場組成物から離れて遊走するように該樹状細胞を誘導する。装置は、樹状細胞の不均一な集団を動員して刺激する。各々のサブセットは、特殊化されて大いに免疫応答の生成の一因となる。例えば、装置は、CpG-ODN提示を媒介し、かつ抗腫瘍免疫の発達において特に重要である樹状細胞のサブセットである形質細胞様DC(pDC)の濃縮を媒介する。
【0012】
方法は、足場組成物と、該足場組成物の中に組み入れられているかまたは該足場組成物の上にコンジュゲートされている生物活性組成物とを含む装置を、被験体に投与する段階を含む、ワクチンの効力を増加させることを含み、該足場組成物は、樹状細胞を誘引して該樹状細胞に免疫原性因子を導入し、それによって該樹状細胞を活性化し、かつ該足場組成物から離れて遊走するように該樹状細胞を誘導し、それによってワクチン接種手法の有効性を増加させる。
【0013】
方法は、足場組成物と、該足場組成物の中に組み入れられているかまたは該足場組成物の上にコンジュゲートされている生物活性組成物とを含む装置を、被験体に投与する段階を含む、癌に対するワクチン接種を被験体に行うことを含み、該足場組成物は、樹状細胞を誘引して該樹状細胞に免疫原性因子を導入し、それによって該樹状細胞を活性化し、かつ該足場組成物から離れて遊走するように該樹状細胞を誘導し、それによって被験体に抗腫瘍免疫を付与する。限局性腫瘍または充実性腫瘍の場合、装置は、腫瘍部位もしくはその近傍に、または腫瘍が切除されたもしくは外科的に除去された部位に投与されるかまたは埋め込まれる。例えば、装置は、腫瘍部位または切除部位から1、3、5、10、15、20、25、40 mm離れた距離で埋め込まれ、例えばPLGワクチン装置は腫瘍塊から16〜21 mm離して投与される。
【0014】
免疫原性因子には、toll様受容体(TLR)リガンドが含まれる。好ましい態様において、用いられる免疫原性因子は、改変TLR-9リガンド配列、PEI-CpG-ODNである。
【0015】
足場組成物は、非生物分解性材料を含む。例示的な非生物分解性材料には、金属、プラスチックポリマー、またはシルクポリマーが含まれるがこれらに限定されるわけではない。その上、足場組成物は生物適合性の材料で構成される。生物適合性材料は非毒性または非免疫原性である。
【0016】
生物活性組成物は、足場構造に共有結合的または非共有結合的に連結される。生物活性組成物は、樹状細胞を誘引する手段を有する、足場組成物の表面に共有結合的または非共有結合的に結合される要素を含む。またはもしくは加えて、生物活性組成物は、免疫原性因子を樹状細胞に導入する手段を有する、足場組成物の表面に共有結合的にまたは非共有結合的に結合される要素を含む。またはもしくはさらに加えて、生物活性組成物は、足場組成物から離れて遊走するように樹状細胞を誘導する手段を有する、足場組成物の表面に共有結合的にまたは非共有結合的に結合される要素を含む。
【0017】
樹状細胞を操作する手段を有する生物活性組成物の要素は、分泌型または膜結合型アミノ酸、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、ヌクレオチド、ジヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、ポリマー、低分子、または化合物である。好ましい態様において、この要素は、樹状細胞を足場組成物に誘引することから、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)である。別の好ましい態様において、この要素は、CpG-ODN配列を樹状細胞に導入して、それによって細胞を活性化するための手段を有することから、PEI-CpG-ODN配列である。第三の好ましい態様において、この要素は、足場組成物から離れてリンパ節へと向かう樹状細胞の遊走を媒介するケモカイン受容体である、CCR7をコードするポリヌクレオチドまたはポリペプチドである。CCR7要素は、足場組成物から離れる樹状細胞の遊走を増強するために、PEI-CpG-ODN配列と同時にまたは連続的に樹状細胞に導入される。
【0018】
本発明の足場組成物は、外部表面を含有する。本発明の足場組成物は、またはもしくは加えて内部表面を含有する。足場組成物の外部または内部表面は、中実または多孔性である。孔サイズは、約10 nm未満、直径約100 nm〜20μmの範囲であるか、または約20μmより大きい。
【0019】
本発明の足場組成物は、1つまたは複数の区画を含む。
【0020】
本発明の装置は、経口、全身、皮下もしくは経皮、人工ステントとして、または外科的に投与されるかまたは埋め込まれる。
【0021】
本発明の装置および方法は、インサイチューでの持続的な細胞プログラミングのためのプロトコルに関連するいくつかの問題に対する解決策を提供する。細胞の免疫応答を刺激して、感染または疾患を有する体の組織に定着するようにその外向きの遊走を誘導するインサイチュー細胞プログラミングシステムは、回復の成功、例えば疾患組織の特異的消失を増強する。細胞機能および/または挙動、例えば移動を制御するそのような装置は、足場組成物と1つまたは複数の生物活性組成物とを含有する。生物活性組成物は、足場組成物の中に組み入れられるかまたはその上にコーティングされる。足場組成物および/または生物活性組成物は、樹状細胞の誘引、プログラミング、および遊走を時間的および空間的に(方向性に)制御する。
【0022】
装置は、インビボで材料からの宿主細胞の能動的動員、改変、および放出を媒介して、それによって足場に接触する細胞の機能を改善する。例えば、装置は、体において既に常在している細胞を足場材料に誘引または動員して、常在細胞を望ましい運命(例えば、免疫活性化)へとプログラムまたは再プログラムする。
【0023】
この装置には、生物活性材料を組み入れるかまたはそれによってコーティングされる足場組成物が含まれ;装置は、樹状細胞の誘引、活性化、および遊走を調節する。装置が設計される応用に応じて、装置は、足場自身の物理または化学的特徴を通して樹状細胞の誘引、活性化、および/または遊走を調節する。例えば、足場組成物は、差次的に透過性であり、足場の一定の物理的領域に限って細胞の遊走を可能にする。足場組成物の透過性は、例えばより大きいまたはより小さい孔サイズ、密度、ポリマーの架橋、剛性、靱性、延性、粘弾性に関して材料を選択または操作することによって調節される。足場組成物は、装置または装置内の区画の出口の標的領域に向かって細胞がその中をより容易に動くことができる物理的通路または小道を含有する。足場組成物は任意で、細胞が装置の中を動くために必要な時間が正確に予測可能に制御されるように、各々が異なる透過性を有する区画または層に組織化される。遊走はまた、足場組成物の分解、脱水もしくは再水和、酸素添加、化学変化もしくはpHの変化、または進行中の自己アセンブリによっても調節される。
【0024】
誘引、活性化、および/または遊走は生物活性組成物によって調節される。装置はその構造を通して細胞の活性化および遊走を制御および指示する。化学的親和性は、出口の特定の領域に細胞を向けるために用いられる。例えば、サイトカインは、細胞の遊走を誘引または抑制させるために用いられる。それらの生物活性物質の密度および混合物を変化させることによって、装置は遊走の時期を制御する。これらの生物活性物質の密度および混合物は、物質の初回ドープ処理レベルまたは濃度勾配によって、公知の浸出率を有する足場材料に生物活性物質を包埋することによって、足場材料の分解による放出によって、ある濃度領域からの拡散によって、ある領域に拡散する前駆体化学物質の相互作用によって、または常在サポート細胞による組成物の産生/排泄によって制御される。足場の物理または化学構造はまた、装置の中への生物活性物質の拡散も調節する。
【0025】
生物活性組成物には、細胞機能および/または挙動を調節する1つまたは複数の化合物が含まれる。生物活性組成物は、足場組成物に共有結合的に連結するか、または足場に非共有結合的に会合する。
【0026】
細胞遊走プロセスに関与するシグナル伝達事象は、免疫メディエータに応答して開始される。このように、装置は、GM-CSF、CpG-ODN配列、癌抗原、および/または免疫モジュレーターを含む第二の生物活性組成物を任意に含有する。
【0027】
いくつかの場合において、第二の生物活性組成物は、組成物が足場組成物の中または上に相対的に固定化された状態で、足場組成物に機能的に連結する。他の場合において、第二の生物活性組成物は、足場に非共有結合的に会合する。非共有結合は、共有結合より強さが一般的に1桁から3桁弱い結合であり、足場からのおよび周辺組織への因子の拡散を容認する。非共有結合には、静電結合、水素結合、ファンデルワールス結合、芳香族π結合および疎水結合が含まれる。
【0028】
足場組成物は、生物適合性である。組成物は、生物分解性/腐食性であるか、または体内での分解に対して抵抗性である。比較的永続的な(分解抵抗性の)足場組成物には、金属および絹などのいくつかのポリマーが含まれる。好ましくは、足場組成物は、温度、pH、水和状態、および多孔性、主鎖連結の架橋密度、タイプ、および化学、もしくは分解に対する感受性からなる群より選択される物理的パラメータに基づいて既定の速度で分解するか、または足場組成物は化学ポリマーの比率に基づいて既定の速度で分解する。例えば、ラクチドのみを含む高分子量ポリマーは一定期間かけて、例えば1〜2年かけて分解するが、ラクチドとグリコリドの50:50混合物を含む低分子量ポリマーは数週間、例えば1、2、3、4、6、10週間のうちに分解する。高分子量の高グルクロン酸アルジネートで構成されるカルシウム架橋ゲルは、インビボで数ヶ月(1、2、4、6、8、10、12ヶ月)から数年(1、2、5年)かけて分解するが、低分子量アルジネートおよび/または部分的に酸化されているアルジネートを含むゲルは数週間のうちに分解する。
【0029】
例示的な足場組成物には、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、PLGAポリマー、アルジネートおよびアルジネート誘導体、ゼラチン、コラーゲン、フィブリン、ヒアルロン酸、ラミニンに富むゲル、アガロース、天然および合成多糖、ポリアミノ酸、ポリペプチド、ポリエステル、ポリ酸無水物、ポリホスファジン、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(アルキレンオキシド)、ポリ(アリルアミン)(PAM)、ポリ(アクリレート)、改変スチレンポリマー、プルロニックポリオール、ポリオキサマー、ポリ(ウロン酸)、ポリ(ビニルピロリドン)、および上記のいずれかのコポリマーまたはグラフトコポリマーが含まれる。1つの好ましい足場組成物には、RGD-改変アルジネートが含まれる。
【0030】
別の好ましい足場組成物は、マクロ孔性ポリ-ラクチド-コ-グリコリド(PLG)である。例えば、PLGマトリクスには、GM-CSF、危険シグナル、および標的抗原、例えば癌抗原が含まれ、PLGマトリクスは、動員されたDCがプログラムされる際の居所として役立つ。動員要素であるGM-CSFはPLG足場に封入される。封入されたGM-CSFを含むPLGマトリクスは、樹状細胞動員組成物のパルスを提供して、次に放出速度は徐々に遅くなる。パルスは、生物活性組成物の初回量の少なくとも40、50、60、75、80%またはそれより多くを含み、残りのパーセントは、処置される被験体内のまたは被験体上の部位への投与後の翌日または数週間にわたって徐々に放出される。例えば、放出は、最初の5日以内に生物活性GM-CSF量のおよそ60%であり、その後、次の10日間にわたって生物活性GM-CSFの緩徐で持続的な放出が続く。この放出プロファイルは、常在DCを有効に動員するための周辺組織中への因子の拡散速度に影響を与える。
【0031】
足場組成物の多孔性は、装置の中の細胞の遊走に影響を及ぼす。孔はナノ孔性、ミクロ孔性、またはマクロ孔性である。例えば、ナノ孔の直径は約10 nm未満であり、ミクロ孔は直径約100 nm〜20μmの範囲であり、およびマクロ孔は約20μmより大きい(好ましくは約100μmより大きく、およびさらにより好ましくは約400μmより大きい)。1つの例において、足場は直径約400〜500μmの整列した孔を有するマクロ孔性である。
【0032】
装置は一段階で製造され、この場合1つの層または区画を作出して、1つまたは複数の生物活性組成物を注入またはコーティングする。例示的な生物活性組成物は、ポリペプチドまたはポリヌクレオチドを含む。または、装置は、二段階またはそれより多い(3、4、5、6、......10段階またはそれより多い)段階で製造され、この場合1つの層または区画を作出して1つまたは複数の生物活性組成物を注入またはコーティングした後に、第二の、第三の、第四の、またはそれより多い層を構築し、次に1つまたは複数の生物活性組成物を順に注入またはコーティングする。各々の層もしくは区画は、他の層もしくは区画と同じであるか、または生物活性組成物の数もしくは混合物のみならず、独自の化学的、物理的、および生物的特性によって互いに区別される。
【0033】
足場を作出する方法は、足場組成物を提供する段階、足場組成物を第一の生物活性組成物と共有結合的に連結させるかまたは非共有結合的に会合させる段階によって行われる。第一の生物活性組成物は好ましくは、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子を含有する。足場組成物はまた、第二の生物活性組成物、好ましくは1つまたは複数のシトシン-グアノシンオリゴヌクレオチド(CpG-ODN)配列と接触させる。第二の生物活性組成物は、足場組成物と会合して、ドープ処理された足場、すなわち1つまたは複数の生物活性物質を含む足場組成物をもたらす。接触させる段階を任意で繰り返して、複数のドープ処理足場を作製し、例えば接触段階の各々は、足場装置において第二の生物活性組成物の勾配をもたらすように、第二の生物活性組成物の異なる量を特徴とする。組成物の量を変化させることよりむしろ、その後の接触段階は、異なる生物活性組成物、すなわち、前回のドープ処理段階の前回の組成物または混合物とは因子の構造または化学式によって区別される、第三、第四、第五、第六の組成物または組成物の混合物を伴う。方法は任意で、個々のニッチ(niche)、層、または成分を互いに接着させること、および/または細胞の移動または生物活性組成物をさらに制御/調節するために装置の1つまたは複数の境界内または境界で半透過性、透過性、または非透過性の膜を挿入することを伴う。
【0034】
装置の治療応用には、免疫細胞の教育が含まれる。例えば、方法には、生物活性組成物がその中またはその上に組み入れられている足場組成物を含む装置と、足場に結合した哺乳動物細胞とを提供する段階、および例えば装置を哺乳動物組織の中に埋め込むまたは固定することによって、哺乳動物組織を装置に接触させる段階が含まれる。装置の投与または埋め込み時の、各々の成分、動員組成物(例えば、GM-CSF)、危険シグナル(例えば、CpG-ODN)、および抗原(例えば、精製腫瘍抗原または腫瘍細胞溶解物)の例示的な相対量は、以下のとおりである:GM-CSF:0.5μg〜500μg;CpG-ODN:50μg〜3,000μg;および腫瘍抗原/溶解物:100μg〜10,000μg。
【0035】
細胞、例えば宿主細胞の活性をモジュレートする方法は、足場組成物とその中またはその上に組み入れられた動員組成物とを含有する装置を哺乳動物に投与する段階、および次に細胞を展開シグナルに接触させる段階によって行われる。展開シグナルは、装置からの細胞の出現を誘導する。出口での細胞の活性は、装置に入る前の細胞の活性とは異なる。細胞は装置に動員されて、一定期間、例えば数分間;0.2、0.5、1、2、4、6、12、24時間;2、4、6日間;数週間(1〜4)、数ヶ月間(2、4、6、8、10、12)、または数年間装置内に常在して、そのあいだに細胞は構造要素および生物活性組成物に曝露されて、細胞の活性または活性レベルの変化に至る。細胞は、変化した(再教育されたまたは再プログラムされた)細胞の出現を誘導する展開シグナルに接触するかまたは曝露されて、細胞は装置から周辺組織または離れた標的位置へと遊走する。
【0036】
展開シグナルは、タンパク質、ペプチド、または核酸などの組成物である。例えば、装置の中に遊走する細胞は、それらが装置の中に入ると展開シグナルに遭遇するしかない。いくつかの場合において、展開シグナルは核酸分子、例えば装置からのおよび周辺組織への細胞の遊走を誘導するタンパク質をコードする配列を含有するプラスミドである。展開シグナルは、細胞が装置内のプラスミドに遭遇した場合に生じ、DNAは細胞にインターナライズされて(すなわち細胞はトランスフェクションを受けて)、細胞は、DNA分子によってコードされる遺伝子産物を産生する。いくつかの場合において、展開のシグナルを伝達する分子は装置の要素であり、動員組成物に対する細胞の曝露と比較して遅れて(例えば時間的または空間的に)装置から放出される。または、展開シグナルは、動員組成物の低減または非存在である。例えば、動員組成物は、細胞の装置内への遊走を誘導して、および動員組成物の濃度の低減または装置からの枯渇、消散、もしくは拡散によって、装置から細胞の出現が起こる。このようにして、個体のT細胞、B細胞、または樹状細胞(DC)などの免疫細胞は、装置へと動員されて、プライミングされ、活性化されて、抗原特異的標的に対する免疫応答を開始する。任意で、標的に対する抗原(その標的に対する免疫応答が望まれる)が、足場構造の中または足場構造の上に組み入れられる。顆粒球マクロファージ刺激因子(GM-CSF)などのサイトカインはまた、免疫活性化を増幅するためのおよび/またはプライミングした細胞のリンパ節への遊走を誘導するための装置の成分でもある。他の細胞特異的動員組成物を以下に記述する。
【0037】
装置は、インビボで細胞を動員して、これらの細胞を改変した後、体の別の部位へとその遊走を促進する。このアプローチは本明細書において樹状細胞および癌ワクチン開発の文脈において例示されるが、微生物病原体に対するワクチンなどの他のワクチンのみならず、細胞治療全般にとっても有用である。本明細書において記述される装置を用いて教育された細胞は、材料に直ちに近接するかまたはいくつかの遠隔部位の組織または臓器の再生を促進する。または、細胞は、組織(局所または遠隔部位)の破壊を促進するように教育される。方法はまた、疾患の予防にとって、例えば疾患の進行または加齢関連組織変化を停止または遅らせるために、組織構造および機能の、細胞に基づく維持を促進するために有用である。装置内での細胞の教育、「プログラミング」および「再プログラミング」によって、体内の任意の細胞の機能または活性が改変されて、多能性幹細胞となり、治療効果を発揮することができる。
【0038】
従来のおよびエクスビボDCに基づくワクチン接種戦略は、癌患者における不均一なDCネットワークによって媒介される免疫応答を、協調して持続することができないことから、これらのアプローチの臨床有効性は限定的である。本明細書において記述される装置および方法は、pDCの選択的動員および増大が癌抗原に対する免疫応答を劇的に改善して、これまでのワクチンアプローチと比較して腫瘍進行を低減させることから、独自の長所を有する。
【0039】
本発明の他の特色および長所は、その好ましい態様の以下の説明および特許請求の範囲から明らかであろう。本明細書において引用される全ての参考文献は参照により本明細書に組み入れられる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】感染症に対する免疫応答の図解である。図1は、細菌の侵入および細菌毒素が皮膚常在細胞に損傷を与えて、GM-CSFを含む炎症性サイトカインの産生および皮膚内皮の活性化を促進する機序を示す図解である。サイトカイン刺激は、白血球の浸出を誘導して、皮膚常在DC(ランゲルハンス細胞)および単球/プレDCを動員する。炎症部位に動員されたDCは、細菌と抗原分子およびTLR9活性化を刺激するCpGに富むDNAとを含む細菌産物に遭遇してこれらを摂取する。TLRライゲーションおよび炎症状態の結果として、DCは、急速に成熟して、そのMHC-抗原複合体、共刺激分子、およびCCR7の発現をアップレギュレートして、リンパ節へのホーミングを開始し、そこでDCは抗原特異的T細胞応答を開始しかつ伝播する。
【図2】図2Aは、CpGに富むオリゴヌクレオチド配列のPEI縮合の模式図である。陽性荷電アミン基を有するPEI多価陽イオンを陰性荷電リン酸基からなるCpG-ODNと電荷比(NH3+:PO4-)で混合すると、陽性荷電PEI-CpG-ODN縮合体が得られる。図2Bは、電荷比4、7および15でのCpG-ODN 1826およびそのPEI縮合体のゼータ電位(mV)を示す棒グラフである。四角は、平均値および標準偏差(n=4)を表す。図2Cは、電荷比4、7および15でのCpG-ODN 1826およびそのPEI縮合体の粒子サイズを示す棒グラフである。値は平均粒子サイズおよび標準偏差を表す(n=4)。
【図3−1】図3A〜Cは、JAWSII DCによるCpG-ODNのインビトロ取り込みを示す。図3A〜Bは、細胞の明視野画像およびTAMRA標識CpG-ODN(A)分子またはPEI-CpG-ODN縮合体(B)の取り込みを示すその対応する蛍光画像である。図3Cは、110時間に及ぶ裸の(-○-)およびPEI-CpG-ODN(-●-)縮合体の取り込みの定量化を示す棒グラフである。尺度のバー−20μm。C(n>細胞10個)における値は、平均値および標準偏差を表す。
【図3−2】図3Dは、PEI-CpG-ODN縮合体の取り込みの定量とJAWSII DC内でのその後の脱縮合とを示す折れ線グラフである。細胞におけるPEI-CpGODN縮合体の数(-■-)および非縮合CpG-ODNの量(-□-)を70時間にわたってモニターして定量した。D(n>細胞7個)における値は、平均値および標準偏差を表す。
【図4−1】(A)DC活性化の撮像。図4Aは、PEI(電荷比-7)と縮合したTAMRA標識CpG-ODN分子の取り込みを示す蛍光画像と相関する活性化DC形態の一連の明視野画像である。尺度のバー−20μm。
【図4−2】図4Bは、非刺激後(陰影をつけた線)、CpG-ODN(---)、およびPEI-CpG-ODN縮合体(−)後の活性化マーカーCD86、MHCII、およびCCR7に関して陽性の一連のJawsII DCの一連のFACSヒストグラムである。
【図4−3】図4Cは、非刺激、およびTNF-α/LPS、またはCpG-ODN、またはPEI-CpG-ODNによる刺激後の活性化マーカーCD86、MHCIIおよびCCR7に関して陽性のDCのパーセンテージを示す表データを示すチャートである。図4Dは、CCL19に向かうCpG-ODNおよびDC遊出を示す棒グラフである。300 ng/ml CCL19を添加した培地に向かうトランスウェルシステムの上部のウェルからのDC遊出に及ぼす、非刺激(■)、およびPEI(■)、またはCpG-ODN(■)、またはPEI-CpG-ODN(■)刺激の効果。遊走数を24時間で得た。CおよびDにおける値(n=4)は、平均値および標準偏差を表す。CpG-ODN活性化培地(5μg/ml)。*P<0.05、**P<0.01。
【図5A】0(□)、50(■)、および500 ng/ml GM-CSF(■)を添加した培地におけるPEI-CpG-ODN(5μg/ml)刺激後のMHCIIおよびCCR7発現に関して陽性のJawsII DCのパーセンテージを示す一連の棒グラフである。
【図5B】GM-CSFの存在下、CCL19に向かうCpG-ODNおよびDC遊出を示す折れ線グラフである。300 ng/ml CCL19を添加した培地に向かうトランスウェルシステムの上部のウェルからのDC遊出に及ぼす、非刺激(-■-)およびPEI(---)、またはCpG-ODN(-●-)、またはPEI-CpG-ODN(-●-)による刺激の効果。遊走数を24時間で得た。値は平均値および標準偏差(n=4)を表す。
【図6−1】図6Aは、インビトロでPBSにおいてインキュベートした時間に対するPLGマトリクスに保持されたPEI-CpG-ODN縮合体の画分を示す折れ線グラフである。
【図6−2】図6B〜6Cは、CpG-ODN負荷足場からのJAWS II DCの遊出を示す棒グラフである。(B)300 ng/ml CCL19を添加した培地に向かう、CpG-ODN 5、50、500μgを負荷した足場から遊走したDCの総数。(C)500 ng/ml GM-CSFの存在下、CpG-ODN 25μgを負荷した足場から300 ng/ml CCL19を添加した培地に向かって遊走したDCの総数。遊走数を48時間で得た。値は、平均値および標準偏差を表す(n=4または5)。
【図7A】PLGに基づく感染症模倣体は、インサイチューでDCを持続的にプログラムする。図7aは、PLGマトリクスに負荷された様々な用量のPEI-CpG-ODNおよびGM-CSFに応答した宿主DC動員(細胞数)およびDC活性化(MHCまたはCCR7を発現する%)の表データを示すチャートである。
【図7B】PLGに基づく感染症模倣体は、インサイチューでDCを持続的にプログラムする。マトリクスをC57/BL6Jマウスの背部に7日間埋め込んだ。図7Bは、C57/BL6Jマウスの背部に埋め込んだ後7日目でのPEI-ODN対照、PEI-CpG-ODN 10μg、GM-CSF 400および3000 ng、ならびにPEI-CpG-ODN 10μgと組み合わせてGM-CSG 400および3000 ngを負荷したマトリクスから単離されたCD11c(+)MHCII(+)およびCD11c(+)CCR7(+)宿主DCの数を示す棒グラフである。値は、平均値および標準偏差(n=3〜5)を表す。*P<0.05、**P<0.01。
【図8A】感染症模倣体は、インサイチューでプログラムされたDCを持続的に分散させる。図8aは、FITC着色ブランクマトリクス(-□-)、FITC着色GM-CSF負荷マトリクス(-■-)、ならびにFITC着色GM-CSFおよびCpG-ODNマトリクス(-■-)に常在後の時間の関数としての、鼠径リンパ節にホーミングしたFITC(+)DCの数を示す棒グラフである。GM-CSFの用量は、3000 ngであり、CPG-ODNの用量は10μgであった。Aにおける値は、平均値および標準偏差(n=4または5)を表す。*P<0.05、**P<0.01。
【図8B】感染症模倣体は、インサイチューでプログラムされたDCを持続的に分散させる。図8Bは、C57BL/6Jマウスから抽出された(対照)およびCpG-ODN 10μg+GM-CSF 3000 ngを組み入れたマトリクスの埋め込み後10日目に抽出された(感染症模倣体)鼠径リンパ節のデジタル写真である。
【図8C】感染症模倣体は、インサイチューでプログラムされたDCを持続的に分散させる。図8Cは、ブランクマトリクス(□)およびGM-CSF 3000 ng(■)またはCpG-ODN 10μg+GM-CSF 3000 ng(■)を組み入れたマトリクスの埋め込み後2および7日目でC57BL/6Jマウスから抽出された鼠径リンパ節から単離された総細胞数を示す棒グラフである。Cにおける値は、平均値および標準偏差(n=4または5)を表す。*P<0.05、**P<0.01。
【図8D】感染症模倣体は、インサイチューでプログラムされたDCを持続的に分散させる。図8Dは、ブランクマトリクス(□)およびGM-CSF 3000 ng(■)またはCpG-ODN 10μg+GM-CSF 3000 ng(■)を組み入れたマトリクスの埋め込み後2および7日目でC57BL/6Jマウスから抽出された鼠径リンパ節から単離されたCD11c+DC数を示す棒グラフである。Dにおける値は、平均値および標準偏差(n=4または5)を表す。*P<0.05、**P<0.01。
【図9】感染症模倣微小環境が強力な抗腫瘍免疫を付与することを示す棒グラフである。PLG癌ワクチンをマウスに埋め込んだ後の腫瘍発生までの時間。ブランクPLG足場(ブランク)、抗原単独(Lys)、抗原+GM-CSF 3000 ng(Lys+GMCSF 3000 ng)、抗原+PEI-CpG-ODN縮合体(Lys+CpG)、ならびに抗原、GM-CSF 3000 ngおよびPEI-CpG-ODNの組み合わせ(Lys+3000 ng+PEI-CpG-ODN)を負荷した足場の比較。動物をまた、比較のために、GM-CSFを産生するように遺伝子改変されている放射線照射B16-F10黒色腫細胞を用いた細胞に基づくワクチン(細胞ベース)を用いても免疫した。ワクチン接種後14日目に、C57BL/6JマウスにB16-F10黒色腫腫瘍細胞105個を投与して、腫瘍発生の開始に関してモニターした(n=9または10)。
【図10】感染症模倣体のワクチン接種効率はT細胞応答に依存する。図10Aは、腫瘍溶解物、GM-CSF 3000 ngおよびCpG-ODNの提示を適切に制御するPLG癌ワクチン、ならびにブランク(ブランク)足場対照をワクチン接種したマウスからの腫瘍切片の代表的な一連の光学顕微鏡写真である。腫瘍を発症したマウスから20〜25日目に外植された腫瘍組織へのCD4(+)およびCD8(+)T細胞浸潤を検出するために、切片を染色した。図10Bは、ワクチン接種動物のB16-F10黒色腫腫瘍へのT細胞浸潤を示す棒グラフである。腫瘍を、ブランクPLG足場(□)、またはB16-F10黒色腫腫瘍溶解物、GM-CSF 3000 ngおよびPEI-CpG-ODN 10μgを組み入れたPLG足場(■)によって処置したC57BL/6Jマウスから20〜25日目に外植した。T細胞浸潤をランダムな腫瘍切片(n=4、1 mm3)において検査した。尺度のバー−50μm。A、DおよびEにおける値は平均値および標準偏差(n=3または4)を表す。*P<0.05、**P<0.01。
【図11A】DC動員およびプログラミングのインビボ制御。図11Aは、23日間のPLGマトリクスからのGM-CSFの累積放出を示す折れ線グラフである。Aにおける値は、平均値および標準偏差を表す(n=4または5)。
【図11B】DC動員およびプログラミングのインビボ制御。図11Bは、14日後のC57BL/6Jマウスの背部における皮下嚢から外植されたPLG足場切片のH&E染色を示す写真である:ブランク足場およびGM-CSF(3000 ng)負荷足場。尺度のバーB−500μm。
【図11C】DC動員およびプログラミングのインビボ制御。図11cは、外植された足場から単離されて、DCマーカー、すなわちCD11cおよびCD86に関して染色された細胞の一連のFACSプロットである。細胞を、28日間埋め込んだブランクおよびGM-CSF(3000 ng)負荷足場から単離した。FACSプロットにおける数値は、双方のマーカーに関して陽性の細胞集団のパーセンテージを示す。
【図11D】DC動員およびプログラミングのインビボ制御。図11Dは、ブランク対照(ブランク)に対して標準化した、GM-CSF 1000、3000、および7000 ngの用量に応答した、埋め込み後14日目にPLG足場から単離されたCD11c(+)CD86(+)DCの画分の増加を示す棒グラフである。Dにおける値は、平均値および標準偏差を表す(n=4または5)、*P<0.05、**P<0.01。
【図11E】DC動員およびプログラミングのインビボ制御。図11Eは、埋め込み後の時間の関数として、GM-CSF 0(-)、3000(--○--)、および7000 ng(--●--)を組み入れたPLG足場の埋め込み部位でのGM-CSFのインビボ濃度プロファイルを示す折れ線グラフである。Eにおける値は、平均値および標準偏差を表す(n=4または5)。
【図11F】DC動員およびプログラミングのインビボ制御。図11Fは、C57BL/6Jマウスの背部への埋め込み後の時間の関数として、GM-CSF 0(□)、400(■)、3000 ng(■)、および7000 ng(網掛けの□)を負荷した足場から単離されたCD11c(+)CCR7(+)宿主DCのパーセンテージを示す棒グラフである。Fにおける値は、平均値および標準偏差を表す(n=4または5)、*P<0.05、**P<0.01。
【図12A】PLGマトリクスに浸潤しているDCに対するCpG-ODNと抗原の同時提示は、局所CD8+cDC数、IL-12産生、および総CD8(+)細胞数を増強する。ブランクマトリクス(ブランク)およびGM-CSF 3000 ng(GM)もしくはCpG-ODN 100μg(CpG)の用量単独、または併用(CpG+GM)に応答した、または腫瘍溶解物(GM+Ant、CpG+Ant、およびCpG+GM+Ant)を同時提示された、埋め込み後10日目での形質細胞様DCの数。Aにおける値は、平均値および標準偏差(n=4または5)を表す。*P<0.05、**P<0.01。
【図12B】PLGマトリクスに浸潤しているDCに対するCpG-ODNと抗原の同時提示は、局所CD8+cDC数、IL-12産生、および総CD8(+)細胞数を増強する。ブランクマトリクス(ブランク)およびGM-CSF 3000 ng(GM)もしくはCpG-ODN 100μg(CpG)の用量単独、または併用(CpG+GM)に応答した、または腫瘍溶解物(GM+Ant、CpG+Ant、およびCpG+GM+Ant)を同時提示された、埋め込み後10日目でのCD11c(+)CD11b(+)cDCの数。Bにおける値は、平均値および標準偏差(n=4または5)を表す。*P<0.05、**P<0.01。
【図12C】PLGマトリクスに浸潤しているDCに対するCpG-ODNと抗原の同時提示は、局所CD8+cDC数、IL-12産生、および総CD8(+)細胞数を増強する。ブランクマトリクス(ブランク)およびGM-CSF 3000 ng(GM)もしくはCpG-ODN 100μg(CpG)の用量単独、または併用(CpG+GM)に応答した、または腫瘍溶解物(GM+Ant、CpG+Ant、およびCpG+GM+Ant)を同時提示された、埋め込み後10日目でのCD11c(+)CD8(+)cDCの数。Cにおける値は、平均値および標準偏差(n=4または5)を表す。*P<0.05、**P<0.01。
【図12D】PLGマトリクスに浸潤しているDCに対するCpG-ODNと抗原の同時提示は、局所CD8+cDC数、IL-12産生、および総CD8(+)細胞数を増強する。ブランクマトリクス(ブランク)およびGM-CSF 3000 ng(GM)もしくはCpG-ODN 100μg(CpG)単独用量、もしくは併用(CpG+GM)に応答した、または腫瘍溶解物(GM+Ant、CpG+Ant、およびCpG+GM+Ant)と同時提示された、埋め込み後10日目でのIFN-αのインビボ濃度。Dにおける値は、平均値および標準偏差(n=4または5)を表す。*P<0.05、**P<0.01。
【図12E】PLGマトリクスに浸潤しているDCに対するCpG-ODNと抗原の同時提示は、局所CD8+cDC数、IL-12産生、および総CD8(+)細胞数を増強する。ブランクマトリクス(ブランク)およびGM-CSF 3000 ng(GM)もしくはCpG-ODN 100μg(CpG)単独用量、もしくは併用(CpG+GM)に応答した、または腫瘍溶解物(GM+Ant、CpG+Ant、およびCpG+GM+Ant)と同時提示された、埋め込み後10日目でのIFN-γのインビボ濃度。Eにおける値は、平均値および標準偏差(n=4または5)を表す。*P<0.05、**P<0.01。
【図12F】PLGマトリクスに浸潤しているDCに対するCpG-ODNと抗原の同時提示は、局所CD8+cDC数、IL-12産生、および総CD8(+)細胞数を増強する。ブランクマトリクス(ブランク)およびGM-CSF 3000 ng(GM)もしくはCpG-ODN 100μg(CpG)単独用量、もしくは併用(CpG+GM)に応答した、または腫瘍溶解物(GM+Ant、CpG+Ant、およびCpG+GM+Ant)と同時提示された、埋め込み後10日目でのIL-12のインビボ濃度。Fにおける値は、平均値および標準偏差(n=4または5)を表す。*P<0.05、**P<0.01。
【図12G】PLGマトリクスに浸潤しているDCに対するCpG-ODNと抗原の同時提示は、局所CD8+cDC数、IL-12産生、および総CD8(+)細胞数を増強する。ブランクPLGマトリクス(−)ならびにGM-CSF 3000 ngおよびCpG-ODN 100μg単独(---)を負荷したマトリクス、または腫瘍抗原を負荷したマトリクス(陰影をつけた線)に浸潤しているCD8(+)細胞のFACSヒストグラム。
【図13−1】CpG-ODN提示および形質細胞様DCの濃縮によって調節される腫瘍防御。B16-F10黒色腫腫瘍投与の14日前にPLGワクチンをワクチン接種したマウスの生存時間。(図13A)は、腫瘍溶解物およびCpG-ODN 1、10、50、または100μgを負荷したPLGマトリクスをワクチン接種したマウスにおける生存期間の比較を示す。図13Bは、腫瘍溶解物、GM-CSF 3000 ng、およびCpG-ODN 1、10、50、または100μgを負荷したPLGマトリクスをワクチン接種したマウスにおける生存時間の比較を示す。
【図13−2】CpG-ODN提示および形質細胞様DCの濃縮によって調節される腫瘍防御。10日目でのPLGワクチン部位での(図13C)CD11c(+)PDCA-1(+) DC、(図13D)CD11c(+)CD11b(+)DC、および(図13E)CD11c(+)CD8(+)cDCの数の相関、ならびに100日目でのB16-F10黒色腫腫瘍投与で生き残った動物のパーセンテージ。
【図13−3】CpG-ODN提示および形質細胞様DCの濃縮によって調節される腫瘍防御。図13Fは、10日目でPLGワクチン部位で生成されたCD11c(+)CD11b(+)cDC、CD11c(+)PDCA-1(+)pDC、およびCD11c(+)CD8(+)cDCからなる総DC集団の画分を示す。生存率(%)をB16-F10黒色腫細胞の投与後100日目で得る。
【図14】確立された腫瘍に対するPLGワクチン有効性を示す折れ線グラフである。図14Aは、ブランクPLG足場、およびPLGワクチン(GM-CSF 3μg+CpG-ODN 100μg+腫瘍溶解物)で処置したC57BL/6マウスにおける生存時間の比較を示す。図14Bは、ブランクPLG足場およびPLGワクチン(GM-CSF 3μg+CpG-ODN 100μg+腫瘍溶解物)によって処置したC57BL/6マウスにおける腫瘍の成長の比較を示す。マウスに0日目にB16-F10黒色腫腫瘍細胞5×105個を接種して、腫瘍を7日間成長させて、マウスにブランクPLGマトリクスまたはPLGワクチンのいずれかを埋め込んだ。腫瘍サイズの代表値を最小の直径および最大の直径の積の半分として表記した。
【発明を実施するための形態】
【0041】
発明の詳細な説明
癌ワクチンは典型的に、研究室における面倒で費用のかかる細胞の操作に依存し、その後の細胞移植によって、不良なリンパ節ホーミングおよび限られた効力に至る。本発明は、体内における免疫細胞の輸送および活性化を直接制御するために、細菌感染症の重要な局面を模倣する材料を用いることによって、これらの問題を解決する。ポリマーは、最初に宿主樹状細胞(DC)を動員して収容するようにサイトカインを放出し、その後常在DCを活性化してリンパ節へのそのホーミングを劇的に増強するように癌抗原および危険シグナルを提示するよう、設計した。そうでなければ癌のために25日以内に死亡する動物において90%の生存が達成されたことから、これらの材料によって特異的および防御的抗腫瘍免疫が生じた。これらの材料は、体内における多様な細胞タイプの輸送をプログラムして制御するために、癌および他のワクチンにおいて有用である。
【0042】
ポリマーシステムは、薬物送達装置として役立つのみならず、それに対してDCが動員され、そこにDCが常在する物理的な抗原提示構造として役立つように設計され、常在のあいだにDCは材料(ポリ[ラクチド-コ-グリコリド])および生物活性分子(GM-CSFおよびCpG-ODN)を用いて活性化される。これらの生物活性分子は優れた安全性プロファイルを有する。材料システムは、有効な癌ワクチンとして役立ち、既存の細胞治療に固有の時間、出費、および調節負荷を解消して、かつ多数回の全身注射、および高い総薬物負荷の必要性を低減または消失させる。本明細書において記述される装置は、インサイチューでDCをプログラムするために感染症模倣材料を利用する。
【0043】
ワクチン接種のための材料システムを適切に設計するために、GM-CSFがインビトロでDC動員、活性化および遊出に強い影響を与えることができることの定量的理解を発展させた。GM-CSFはDC動員および増殖を用量依存的に増強した。しかし、高濃度(>100 ng/ml)のGM-CSFは、リンパ節由来化学誘引物質(CCL19)に向かうDCの遊走を阻害した。免疫組織化学染色により、高濃度のGM-CSF(500 ng/ml)はまた、CCL19受容体CCR7およびMHCIIのDC発現をダウンレギュレートすることが判明した。これらの結果は、インビボでDCを動員およびプログラムするためにGM-CSF曝露に対する制御が必要であることを示した。GM-CSF単独を双方の目的のために用いる場合、その局所濃度は、材料に捕捉されるようになったDCを解放するために経時的に減少するように設計される。または、局所環境における危険シグナル(例えば、CpG-ODN)の提供を用いて、それらが感染症模倣部位に常在したらGM-CSF阻害からDCを解放するようにする。
【0044】
この理解に基づいて、インビボで定義された空間的時間的様式で、GM-CSF、危険シグナル、および癌抗原を提示するように、ならびに動員DCがプログラムされる際の居所として役立つように、マクロ孔のポリ-ラクチド-コ-グリコリド(PLG)マトリクスを設計した。GM-CSFを高圧CO2発泡プロセスを用いてPLG足場に封入した(54%効率)。これらのマトリクスは、最初の5日以内にその生物活性GM-CSF負荷のおよそ60%を放出し、その後生物活性GM-CSFの遅い持続的な放出が次の10日間にわたって起こった。この放出プロファイルは、常在DCを効率よく動員するように周辺組織の中へと因子が拡散することを可能にする。
【0045】
炎症メディエータ
樹状細胞(DC)の増殖、遊走、および成熟は、炎症性メディエータに対して感受性であり、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)は、特に癌抗原に対する免疫応答の強力な刺激物質として同定されている。GM-CSFはまた、これらの抗原提示免疫細胞を動員およびプログラムする能力も有する。加えて、細菌DNAにおいて見いだされるシトシン-グアノシン(CpG)オリゴヌクレオチド(CpG-ODN)配列は、DC活性化を刺激して、特異的T細胞応答に至る強力な免疫モジュレーターである。外因性のGM-CSFおよびCpG-ODNの提示による感染症模倣微小環境の作製は、DC遊走の数および時期を正確に制御して抗原特異的免疫応答をモジュレートするための道を提供する。
【0046】
脊椎動物の免疫系は、抗原特異的応答の生成および感染症の一掃に長けた、病原体を認識するための様々な機序を使用する。免疫は、抗原提示細胞(APC)によって、特に、抗原を捕捉して、刺激、すなわち細菌DNAにおけるCpGジヌクレオチド配列などの侵入病原体の独自の「危険シグナル」によって活性化される樹状細胞(DC)によって、制御される(その各々が参照により本明細書に組み入れられる、Banchereau J, and Steinman RM. Nature. 392, 245-252. (1998);Klinman DM. Nat. Rev. Immunol. 4, 249-58 (2004))。
【0047】
しかし、自己組織に由来する癌様細胞は、DC成熟にシグナルを伝達するために必要な危険シグナルを欠いており、代わりに細胞が免疫から逃避することを可能にする免疫抑制性の微小環境を促進する。感染の重要な要素は、炎症性サイトカインおよび危険シグナルである(図1)。ポリマー材料システムは、ワクチンとして有用なインサイチューの感染症模倣微小環境を提供するために必要な空間的時間的様式で、これらの要因を提示するのに理想的である。これらの感染症模倣体は、宿主DCの持続的プログラミングを提供し、インサイチューでの効率的なDC活性化および分散を提供する。これらの感染症模倣装置は、黒色腫癌ワクチンを含む多数のワクチン応用にとって必要である。
【0048】
多くの感染症において、炎症性サイトカインおよび危険シグナルは、免疫認識および病原体の一掃を媒介する特異的DC応答を刺激する(図1)。例えば、細菌の侵入および毒素の放出の際に、線維芽細胞、ケラチノサイト、およびメラノサイトなどの皮膚細胞が損傷を受けて、それによってランゲルハンスDC(皮膚)およびDC前駆体(単球;血液)(Hamilton J. Trends in Immunol. 23, 403-408. (2002);Hamilton J., and Anderson G. Growth Factors. 22(4), 225- 231. (2004);Bowne W.B., et al. Cytokines Cell Mol Ther. 5(4), 217-25. (1999).;Dranoff, G. Nat. Rev. Cancer 4, 11-22 (2004);各々が参照により本明細書に組み入れられる)を動員するように作用するGM-CSF(Hamilton J. Trends in Immunol. 23, 403-408. (2002);Hamilton J., and Anderson G. Growth Factors. 22(4), 225-231. (2004);その各々が参照により本明細書に組み入れられる)などの炎症性サイトカインが放出される。DCは、感染部位に達すると、分化し始め、炎症に応答して貪食能を増加させて(Mellman I., and Steinman R.M. Cell. 106, 255-258. (2001)、参照により本明細書に組み入れられる)、細菌またはその産物を摂取したDCは抗原を処理し始めて、細菌DNAにおけるCpGジヌクレオチド配列によって刺激されるエンドソームTLR9シグナル伝達によって、DC成熟は進行する(Krieg A. M., Hartmann G., and Weiner G. J. CpG DNA: A potent signal for growth, activation, and maturation of human dendritic cells. Proc Natl Acad Sci U S A. 16, 9305-9310(1999);参照により本明細書に組み入れられる)。次に、成熟DCは、リンパ節にホーミングして、そこでそれらは感染症を一掃するために抗原特異的T細胞応答をプライミングする。
【0049】
CpG-ODNは、CCR7、CD80/86共刺激分子、およびMHC抗原複合体のDC発現をアップレギュレートする強力な「危険シグナル」である。重要なことに、TLR9シグナル伝達は、サイトカイン産生(例えば、1型IFN)および抗原のMHCI分子への交差提示によって、Th1様の細胞傷害性T細胞応答を促進するようにDCを誘導する。これらのシグナルの提示は、癌様細胞と有効に戦う免疫応答を促進するために必要な危険シグナルを提供する。
【0050】
異なるクラスのCPG-ODNは、ODNの特定の構造および配列に応じて異なる免疫応答を促進する。本発明において利用されるODNであるCpG-ODN 1826は、黒色腫を含む様々なマウスワクチン接種モデルにおいて試験されて成功を収めている。CpG-ODN 1826は、単独で、またはペプチドワクチンおよび全細胞ワクチンのためのアジュバントとして用いられた場合に有益な効果を示している。その上、ODN 1826はDC成熟およびサイトカイン産生を直接促進することが示されている。この特定のCpG ODN配列はまた、Th1細胞およびNK細胞を間接的に活性化して、このように、適応細胞免疫応答を増強する。
【0051】
送達およびTLR9へのその局在化を増強するためにDCへのCpGインターナリゼーションを促進するベクターシステムが開発されている。アミンに富む多価陽イオンであるポリエチルイミン(PEI)は、DNAリン酸基との会合によって、プラスミドDNAを縮合させるために広く用いられており、それによって細胞膜会合および細胞へのDNA取り込みを容易にする小さい陽性荷電縮合体が得られる(Godbey W.T., Wu K.K., and Mikos, A.G. J. of Biomed Mater Res, 1999, 45, 268-275;Godbey W.T., Wu K.K., and Mikos, A.G. Proc Natl Acad Sci U S A. 96(9),5177-81. (1999);その各々が参照により本明細書に組み入れられる)。その結果、PEIは、遺伝子のトランスフェクションを増強するために、およびインサイチューで宿主細胞における長期間の遺伝子発現を促進するPEI-DNA負荷PLGマトリクスを組み立てるために、非ウイルスベクターとして利用されている(Huang YC, Riddle F, Rice KG, and Mooney DJ. Hum Gene Ther. 5, 609-17. (2005)、参照により本明細書に組み入れられる)。ゆえに、CpG-ODNをPEI分子とともに縮合して、アミン−ホスフェート電荷比に依存したこれらのPEI-CpG-ODN縮合体のサイズおよび電荷を特徴付けした。CpG-ODNのDCインターナリゼーションをPEI縮合体が増強できることを査定して、DC内のPEI-CpG-ODNのその後の脱縮合、およびDC活性化のその促進をインビトロで分析した。PEI-CpG-ODNが第3章において記述されるGM-CSFに基づくシステムのワクチン接種効果に対して改善能を有するか否かを決定するために、GM-CSFの存在下でのDC成熟および可動化に及ぼすその刺激効果も同様に検査した。
【0052】
インサイチューで感染症を適切に模倣して細胞をプログラムするために、PLGシステムは、炎症性サイトカイン(例えば、GM-CSF)を放出する薬物送達装置として役立つのみならず、DCが動員されて常在し、そのあいだにそれらが危険シグナル(例えば、CpG-ODN)によって活性化される物理的構造として役立つように設計された。DC動員および多孔性PLGマトリクス内でのDC常在を制御できることは、インサイチューでGM-CSFの送達に対する時間的制御を用いることによって達成され、それによってGM-CSFレベルがインサイチューで鎮静するように設計された場合に限って、プログラムされたDCのバッチが分散されることになる。このシステムは、プログラムされたDCの6%をリンパ節に分散して、癌ワクチンとして適用した場合にマウスの23%において防御的抗腫瘍免疫を誘導した。細胞のプログラミングおよび分散効率は、GM-CSF阻害からDCを持続的に解放して、インサイチューで高いGM-CSFレベルの存在下でのDC成熟および分散を促進する、圧倒的な二次シグナル(CpG-ODN)を用いて改善される。具体的に、PLGマトリクスは、外因性のGM-CSFと共に合成CpG-ODNを局所提示して、GM-CSFによって動員されたDCがインサイチューでCpG-ODNによって刺激されるように組み立てられた。
【0053】
樹状細胞
樹状細胞(DC)は、哺乳動物免疫系内の免疫細胞であり、造血骨髄前駆細胞に由来する。より具体的には、樹状細胞は、リンパ(または形質細胞)または骨髄前駆細胞からそれぞれ生じる、リンパ系(または形質細胞様)樹状細胞(pDC)および骨髄系樹状細胞(mDC)の小分類に分類されうる。前駆体細胞のタイプによらず、前駆体細胞から未成熟な樹状細胞が産まれる。未成熟樹状細胞は、高いエンドサイトーシス活性と低いT細胞活性化能とを特徴とする。このように、未成熟樹状細胞は構成的に、そのすぐ隣にある病原体の周囲の環境を採取する。例示的な病原体には、ウイルスまたは細菌が含まれるがこれらに限定されるわけではない。採取は、toll様受容体(TLR)などのパターン認識受容体(PRR)によって達成される。樹状細胞は、toll様受容体などのパターン認識受容体によって病原体を認識すると、活性化して成熟する。
【0054】
成熟樹状細胞は、病原体を貪食してそれらを切断するのみならず、それらのタンパク質を分解して、MHC(腫瘍組織適合性抗原複合体)分子(クラスI、IIおよびIII)を用いてその細胞表面上に抗原と呼ばれるこれらのタンパク質の小片を提示する。成熟樹状細胞はまた、T細胞活性化の共受容体として役立つ細胞表面受容体をアップレギュレートする。例示的な共受容体には、CD80、CD86、およびCD40が含まれるがこれらに限定されるわけではない。同時に、成熟樹状細胞は、CCR7などの化学走化性受容体をアップレギュレートして、それによって細胞は、血流またはリンパ系を通じてそれぞれ脾臓またはリンパ節へと遊走することが可能になる。
【0055】
樹状細胞は、皮膚などの外部環境に接触する外部組織に存在する(皮膚に常在する樹状細胞はまた、ランゲルハンス細胞とも呼ばれる)。または、樹状細胞は、鼻、肺、胃、および腸管の内層などの外部環境に接触する内部組織に存在する。最後に、未成熟樹状細胞は血流に常在する。活性化されると、これらの組織の全てからの樹状細胞がリンパ様組織へと遊走して、そこでそれらは抗原を提示して、T細胞およびB細胞と相互作用して免疫応答を開始する。本発明に関して特に重要な1つのシグナル伝達システムは、高濃度の免疫細胞に向かって遊走する成熟樹状細胞を誘引するために、樹状細胞表面上に発現されるケモカイン受容体CCR7およびリンパ節構造によって分泌されるケモカイン受容体リガンドCCL19を伴う。成熟樹状細胞との接触によって活性化される例示的な免疫細胞には、ヘルパーT細胞、キラーT細胞、およびB細胞が含まれるがこれらに限定されるわけではない。マクロファージおよびBリンパ球を含む免疫系における多数の細胞タイプが抗原を提示するが、樹状細胞は、全ての抗原提示細胞の中でも最も強力な活性化物質である。
【0056】
樹状細胞は、細胞体から伸長する多数の樹状突起を含む特徴的な細胞の形状からその名称を得た。この細胞形状の機能上の利点は、細胞の体積と比較して有意に増加した細胞表面および周囲に対する接触領域である。未成熟の樹状細胞は時に特徴的な樹状突起形成を欠損し、ベール細胞と呼ばれる。ベール細胞は、樹状突起よりむしろ大きい細胞質ベールを保有する。
【0057】
Toll様受容体(TLR)
TLRは、病原体関連分子パターン(PAMP)と呼ばれる構造的に保存された分子を認識する1回膜貫通ドメインの非触媒性受容体のクラスである。PAMPは、微生物上に存在して、宿主分子とは識別される。TLRは全ての脊椎動物に存在する。TLR 13個(連続的にTLR 1〜13と呼ばれる)がヒトおよびマウスにおいて同定されている。ヒトはTLR 1〜10を含む。
【0058】
TLRおよびインターロイキン-1(IL-1)受容体は、その全てのメンバーがTIRドメインを共有する(Toll-IL-1受容体)受容体スーパーファミリーを含む。TIRドメインは、3つの独自の機能を有する3つの変種に存在する。サブグループ1のTIRドメインは、マクロファージ、単球、および樹状細胞によって産生されるインターロイキンに関する受容体に存在する。サブグループ2のTIRドメインは、微生物起源の分子に直接または間接的に結合する古典的なTLRに存在する。サブグループ3のTIRドメインは、サブグループ1のTIRドメインを含むタンパク質とサブグループ2のTIRドメインを含むタンパク質とのあいだのシグナル伝達を媒介する細胞質ゾルアダプタータンパク質に存在する。
【0059】
TLRリガンドは、病原体または細胞ストレスなどの宿主生存に対する脅威に常に関連して、それらに対して非常に特異的である分子を含む。TLRリガンドは病原体に対して非常に特異的であるが、宿主に対しては特異的ではない。例示的な病原性分子には、リポ多糖(LPS)、リポタンパク質、リポアラビノマンナン、フラゲリン、二本鎖RNA、およびDNAの非メチル化CpG島が含まれるがこれらに限定されるわけではない。
【0060】
本発明の1つの好ましい態様において、Toll様受容体9(TLR9)は、細菌DNAにおける特異的非メチル化CpG含有配列、または樹状細胞のエンドソーム区画において見いだされる合成オリゴヌクレオチド(ODN)によって活性化される。CpG部位のメチル化状態は、細菌DNAと哺乳動物DNAのあいだのみ成らず、正常組織と癌様組織のあいだにおいて決定的な差異である。1つまたは複数のCpGモチーフを含む非メチル化ODNは、細菌DNAの効果を模倣する。またはもしくは加えて、1つまたは複数のCpGモチーフを含む非メチル化ODNは、悪性腫瘍細胞内に存在する腫瘍遺伝子において生じる。
【0061】
TLR-9受容体の1つまたは複数の配列は、本発明の1つまたは複数のCpG-ODN配列を認識する。本発明に包含されるTLR-9受容体は、以下の配列によって記述される。
【0062】
ヒトTLR-9イソ型Aは、以下のmRNA配列(NCBIアクセッション番号NM_017442およびSEQ ID NO:1;本明細書において提示される全てのmRNA配列の開始コドンを太字で大文字で示す)によってコードされる。
【0063】
ヒトTLR-9イソ型Aは、以下のアミノ酸配列(NCBIアクセッション番号NP_059138およびSEQ ID NO:2)によってコードされる。
【0064】
顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)
顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)は、マクロファージ、T細胞、肥満細胞、内皮細胞、および線維芽細胞によって分泌されるタンパク質である。具体的にGM-CSFは白血球増殖因子として機能するサイトカインである。GM-CSFは幹細胞を刺激して顆粒球および単球を産生する。単球は血流に存在して、組織へと遊走し、その後マクロファージへと成熟する。
【0065】
本明細書において記述される足場装置は、宿主DCを装置に誘引するためにGM-CSFポリペプチドを含み、放出する。企図されるGM-CSFポリペプチドは、内因性の起源から単離されるか、またはインビボもしくはインビトロで合成される。内因性のGM-CSFポリペプチドは、健康なヒト組織から単離される。合成GM-CSFポリペプチドは、鋳型DNAを用いて宿主生物または細胞、例えば哺乳動物または培養ヒト細胞株のトランスフェクションまたは形質転換を行った後にインビボで合成される。または、合成GM-CSFポリペプチドは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)または他の当技術分野において認識される方法によってインビトロで合成される(Sambrook, J., Fritsch, E.F., and Maniatis, T., Molecular Cloning: A Laboratory Manual. Cold Spring Harbor Laboratory Press, NY, Vol. 1, 2, 3 (1989)、参照により本明細書に組み入れられる)。
【0066】
GM-CSFポリペプチドは、インビボでタンパク質安定性を増加するように改変される。または、GM-CSFポリペプチドは、ある程度免疫原性であるように操作される。内因性の成熟ヒトGM-CSFポリペプチドは、アミノ酸残基23位(ロイシン)、27位(アスパラギン)、および39位(グルタミン酸)でグリコシル化されると報告されている(米国特許第5,073,627号を参照されたい)。本発明のGM-CSFポリペプチドは、グリコシル化状態に関してこれらのアミノ酸残基の1つまたは複数で改変される。
【0067】
GM-CSFポリペプチドは組換え型である。または、GM-CSFポリペプチドは、哺乳動物GM-CSFポリペプチドのヒト化誘導体である。GM-CSFポリペプチドが誘導される例示的な哺乳動物種には、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、フェレット、ネコ、イヌ、サル、または霊長類が含まれるがこれらに限定されるわけではない。好ましい態様において、GM-CSFは、組換え型ヒトタンパク質(PeproTech、カタログ番号300-03)である。または、GM-CSFは組換え型ハツカネズミ(マウス)タンパク質(PeproTech、カタログ番号315-03)である。最後にGM-CSFは組換え型マウスタンパク質のヒト化誘導体である。
【0068】
ヒト組換え型GM-CSF(PeproTech、カタログ番号300-03)は、以下のポリペプチド配列(SEQ ID NO:3)によってコードされる。
【0069】
マウス組換え型GM-CSF(PeproTech、カタログ番号315-03)は、以下のポリペプチド配列(SEQ ID NO:7)によってコードされる。
【0070】
ヒト内因性のGM-CSFは、以下のmRNA配列(NCBIアクセッション番号NM_000758およびSEQ ID NO:8)によってコードされる。
【0071】
ヒト内因性GM-CSFは、以下のアミノ酸配列(NCBIアクセッション番号NP_000749.2およびSEQ ID NO:9)によってコードされる。
【0072】
シトシン-グアノシン(CpG)オリゴヌクレオチド(CpG-ODN)配列
CpG部位は、その長さに沿った直線状の塩基配列においてシステインヌクレオチドがグアニンヌクレオチドの次に出現する(「p」はそれらのあいだのリン酸基連結を表し、これは、シトシン-グアニン相補的塩基対形成とは区別される)デオキシリボ核酸(DNA)の領域である。CpG部位は、DNAメチル化において中心的役割を果たし、これは遺伝子発現をサイレンシングするために細胞が用いるいくつかの内因性の機序の1つである。プロモーター要素内のCpG部位のメチル化によって、遺伝子のサイレンシングが起こりうる。癌の場合、腫瘍抑制遺伝子はしばしばサイレンシングされ、一方で、腫瘍遺伝子または癌誘導遺伝子が発現されることは公知である。重要なことに、腫瘍抑制遺伝子(癌形成を防止する)のプロモーター領域におけるCpG部位は、メチル化されることが示されているが、腫瘍遺伝子のプロモーター領域のCpG部位は、一定の癌において低メチル化されているかまたはメチル化されていない。TLR-9受容体は、DNAにおける非メチル化CpG部位に結合する。
【0073】
本発明は、CpGジヌクレオチドおよびオリゴヌクレオチドを含む。企図されるCpGオリゴヌクレオチドは、内因性の起源から単離されるか、またはインビボもしくはインビトロで合成される。内因性のCpGオリゴヌクレオチドの例示的な起源には、微生物、細菌、真菌、原虫、ウイルス、カビ、または寄生虫が含まれるがこれらに限定されるわけではない。または、内因性のCpGオリゴヌクレオチドは、哺乳動物の良性または悪性新生物腫瘍から単離される。合成CpGオリゴヌクレオチドは、鋳型DNAの宿主生物へのトランスフェクションまたは形質転換後にインビボで合成される。または合成CpGオリゴヌクレオチドは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)または他の当技術分野において認識される方法によってインビトロで合成される(Sambrook, J., Fritsch, E.F., and Maniatis, T., Molecular Cloning: A Laboratory Manual. Cold Spring Harbor Laboratory Press, NY, Vol. 1, 2, 3 (1989)、参照により本明細書に組み入れられる)。
【0074】
CpGオリゴヌクレオチドは、樹状細胞による細胞取り込みのために提示される。1つの態様において、裸のCpGオリゴヌクレオチドが用いられる。「裸の」という用語は、追加の置換基を含まない、単離された内因性または合成ポリヌクレオチド(またはオリゴヌクレオチド)を記述するために用いられる。別の態様において、CpGオリゴヌクレオチドは、細胞取り込みの効率を増加させるために、1つまたは複数の化合物に結合している。またはもしくは加えて、CpGオリゴヌクレオチドは、足場および/または樹状細胞内のオリゴヌクレオチドの安定性を増加させるために1つまたは複数の化合物に結合している。
【0075】
CpGオリゴヌクレオチドは、細胞取り込みの前に縮合される。1つの好ましい態様において、CpGオリゴヌクレオチドは、樹状細胞への細胞取り込み効率を増加させる陽イオンポリマーであるポリエチルイミン(PEI)を用いて縮合される。
【0076】
本発明のCpGオリゴヌクレオチドは、多数のクラスに分けられうる。例えば、本発明の組成物、方法および装置に包含される例示的なCpG-ODNは、刺激性、中性(neutral)、または抑制性である。本明細書において用いられる「刺激性」という用語は、TLR9を活性化するクラスのCpG-ODN配列を記述することを意味する。本明細書において「中性」という用語は、TLR9を活性化しないクラスのCpG-ODN配列を記述することを意味する。本明細書において用いられる「抑制性」という用語は、TLR9を阻害するクラスのCpG-ODN配列を記述することを意味する。「TLR9を活性化する」という用語は、それによってTLR9が細胞内シグナル伝達を開始するプロセスを記述する。
【0077】
刺激性のCpG-ODNは、その免疫刺激活性が異なるさらに3つのタイプ、A型、B型、およびC型に分けられうる。A型刺激性CpG-ODNは、ホスホジエステル中心CpG含有回文モチーフおよびホスホロチオエート3'ポリ-Gストリングを特徴とする。TLR9の活性化後、これらのCpG ODNは、形質細胞様樹状細胞(pDC)からの高いIFN-α産生を誘導する。A型CpG ODNは、TLR9-依存的NF-κBシグナル伝達を弱く刺激する。
【0078】
B型刺激性CpG ODNは、1つまたは複数のCpGジヌクレオチドを有する完全なホスホロチオエート骨格を含有する。TLR9活性化後、これらのCpG-ODNはB細胞を強く活性化する。A型CpG-ODNとは対照的にB型CpG-ODNは、IFN-α分泌を弱く刺激する。
【0079】
C型刺激性CpG ODNは、A型およびB型の特色を含む。C型CpG-ODNは、完全なホスホロチオエート骨格とCpG含有回文モチーフとを含有する。A型CpG ODNと同様に、C型CpG ODNは、pDCからの強いIFN-α産生を誘導する。B型CpG ODNと同様に、C型CpG ODNは、強いB細胞刺激を誘導する。
【0080】
例示的な刺激性CpG ODNは、ODN 1585、ODN 1668、ODN 1826、ODN 2006、ODN 2006-G5、ODN 2216、ODN 2336、ODN 2395、ODN M362(全てInvivoGen)を含むが、これらに限定されるわけではない。本発明はまた、先のCpG ODNの任意のヒト化バージョンを包含する。1つの好ましい態様において、本発明の組成物、方法、および装置は、ODN 1826(その配列は5'から3'方向へ
であり、CpG要素を太字で示す、SEQ ID NO:10)を含む。
【0081】
TLR9を刺激しない中性の、または対照のCpG ODNが、本発明に包含される。これらのODNは、その刺激相対物と同じ配列を含むが、CpGジヌクレオチドの代わりにGpCジヌクレオチドを含有する。
【0082】
本発明に包含される例示的な中性または対照のCpG ODNは、ODN 1585対照、ODN 1668対照、ODN 1826対照、ODN 2006対照、ODN 2216対照、ODN 2336対照、ODN 2395対照、ODN M362対照(全てInvivoGen)を含むがこれらに限定されるわけではない。本発明はまた、先のCpG ODNの任意のヒト化バージョンを包含する。
【0083】
TLR9を阻害する抑制性CpG ODNは、本発明に包含される。例示的な強力な阻害性配列は、哺乳動物テロメアにおいて見いだされる (TTAGGG)4(ODN TTAGGG、InvivoGen、SEQ ID NO: 11)、および3塩基の交換によってマウス刺激性CpG ODNに由来するODN 2088(InvivoGen)である。抑制性ODNは、細胞結合および細胞取り込みに影響を及ぼすことなくエンドソーム小胞におけるTLR9とCpG ODNの同時局在を破壊する。本発明に包含される抑制性のCpG ODNは、刺激性CpG ODNの作用を微調節する、減弱させる、逆転させる、または妨害するために用いられる。またはもしくは加えて、抑制性のCpG ODNを含む本発明の組成物、方法、または装置は、自己免疫状態を処置するために、または移植手法後の免疫応答を防止するために用いられる。
【0084】
癌抗原
本発明の組成物、方法、および装置は、そのような装置が投与された被験体にワクチン接種を行うためのおよび/または被験体に対して防御免疫を提供するための手段を有する癌抗原を含む。癌抗原は、単独でまたはGM-CSF、CpG-ODN配列、もしくは免疫モジュレーターと組み合わせて用いられる。その上、癌抗原は、GM-CSF、CpG-ODN配列、または免疫モジュレーターと同時にまたは連続的に用いられる。
【0085】
本発明の組成物、方法、および装置に包含される例示的な癌抗原には、生検から抽出された腫瘍溶解物、放射線照射腫瘍細胞、MAGEシリーズ抗原(MAGE-1は一例である)、MART-1/黒色腫、チロシナーゼ、ガングリオシド、gp100、GD-2、O-アセチル化GD-3、GM-2、MUC-1、Sos1、プロテインキナーゼC-結合タンパク質、逆転写酵素タンパク質、AKAPタンパク質、VRK1、KIAA1735、T7-1、T11-3、T11-9、ヒト(Homo Sapiens)テロメラーゼ酵素(hTRT)、サイトケラチン-19(CYFRA21-1)、扁平上皮癌抗原1(SCCA-1)、(プロテインT4-A)、扁平上皮癌抗原2(SCCA-2)、卵巣癌抗原CA125(1A1-3B)(KIAA0049)、MUCIN 1(腫瘍関連ムチン)、(癌腫関連ムチン)、(多形上皮ムチン)、(PEM)、(PEMT)、(エピシアリン(EPISIALIN))、(腫瘍関連上皮膜抗原)、(EMA)、(H23AG)、(落花生反応性尿中ムチン)、(PUM)、(乳癌関連抗原DF3)、CTCL腫瘍抗原se1-1、CTCL腫瘍抗原se14-3、CTCL腫瘍抗原se20-4、CTCL腫瘍抗原se20-9、CTCL腫瘍抗原se33-1、CTCL腫瘍抗原se37-2、CTCL腫瘍抗原se57-1、CTCL腫瘍抗原se89-1、前立腺特異的膜抗原、5T4癌胎児栄養膜糖タンパク質、Orf73カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス、MAGE-C1(癌/精巣抗原CT7)、MAGE-B1抗原(MAGE-XP抗原)(DAM10)、MAGE-B2抗原(DAM6)、MAGE-2抗原、MAGE-4a抗原、MAGE-4b抗原、結腸癌抗原NY-CO-45、肺癌抗原NY-LU-12変種A、癌関連表面抗原、腺癌抗原ART1、傍腫瘍関連脳-精巣癌抗原(癌神経抗原MA2;傍腫瘍神経抗原)、神経腫瘍遺伝子腹側抗原(Neuro-oncological ventral antigen)2(NOVA2)、肝細胞癌抗原遺伝子520、腫瘍関連抗原CO-029、腫瘍関連抗原MAGE-X2、滑膜肉腫、Xブレークポイント2、T細胞によって認識される扁平上皮癌抗原、血清学的に定義された結腸癌抗原1、血清学的に定義された乳癌抗原NY-BR-15、血清学的に定義された乳癌抗原NY-BR-16、クロモグラニンA;副甲状腺分泌タンパク質1、DUPAN-2、CA 19-9、CA 72-4、CA 195、癌胎児抗原(CEA)が含まれるがこれらに限定されるわけではない。
【0086】
免疫モジュレーター
本発明の組成物、方法、および装置は、樹状細胞活性化を刺激する手段を有する、TLRリガンド、増殖因子、死につつある細胞の産物、例えば熱ショックタンパク質が含まれるがこれらに限定されるわけではない免疫モジュレーターを含む。免疫モジュレーターは、単独で、またはGM-CSF、CpG-ODN配列、もしくは癌抗原と組み合わせて用いられる。免疫モジュレーターは、GM-CSF、CpG-ODN配列、または癌抗原と同時にまたは連続的に用いられる。
【0087】
細胞表面または内部細胞区画のいずれかにおいて見いだされる公知の全てのTLRリガンドは、本発明の組成物、方法、および装置に包含される。例示的なTLRリガンドには、トリアシルリポタンパク質(TLR1);リポタンパク質、グラム陽性ペプチドグリカン、リポテイコ酸、真菌、およびウイルス糖タンパク質(TLR2);二本鎖RNA、ポリI:C(TLR3);リポ多糖、ウイルス糖タンパク質(TLR4);フラゲリン(TLR5);ジアシルリポタンパク質(TLR6);低分子合成化合物、一本鎖RNA(TLR7およびTLR8);非メチル化CpG DNA(TLR9);プロフィリン(TLR11)が含まれるがこれらに限定されるわけではない。同様に、フィブロネクチンおよび熱ショックタンパク質(HSP)のような宿主分子もTRLリガンドとして含まれる。宿主TLRリガンドも同様に本発明に包含される。生得の免疫におけるTLRの役割ならびにそれらを活性化および阻害するために用いられるシグナル伝達分子は、当技術分野において公知である(論評に関しては、参照により本明細書に組み入れられる、Holger K. Frank B., Hessel E., and Coffman RL. Therapeutic targeting of innate immunity with Toll-like receptor agonists and antagonists. Nature Medicine 13, 552-559 (2007)を参照されたい)。
【0088】
公知の全ての増殖因子は、本発明の組成物、方法および装置に包含される。例示的な増殖因子には、トランスフォーミング増殖因子(TGF-β)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、神経成長因子(NGF)、ニューロトロフィン、血小板由来増殖因子(PDGF)、エリスロポエチン(EPO)、トロンボポエチン(TPO)、ミオスタチン(GDF-8)、増殖分化因子-9(GDF9)、酸性線維芽細胞増殖因子(aFGFまたはFGF-1)、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGFまたはFGF-2)、上皮細胞増殖因子(EGF)、肝細胞増殖因子(HGF)が含まれるがこれらに限定されるわけではない。本発明は、サイトカインのみならず樹状細胞活性化を刺激するための増殖因子を包含する。例示的なサイトカインには、IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-8、IL-10、IL-12、IL-15、IL-17、IL-18、TNF-α、IFN-γ、およびIFN-αが含まれるがこれらに限定されるわけではない。
【0089】
細胞死および死につつある細胞の産物の指標は、樹状細胞活性化を刺激する。そのため、死につつある細胞の全ての産物が、本発明の組成物、方法、および装置に包含される。例示的な細胞死産物には、オルガネラ、小胞、細胞骨格要素、タンパク質、DNA、およびRNAなどの細胞の任意の細胞内特色が含まれるがこれらに限定されるわけではない。特に重要なものは、細胞がストレス下にある際に発現され、細胞死の際に放出される熱ショックタンパク質である。例示的な熱ショックタンパク質には、Hsp10、Hsp20、Hsp27、Hsp33、Hsp40、Hsp60、Hsp70、Hsp71、Hsp72、Grp78、Hsx70、Hsp84、Hsp90、Grp94、Hsp100、Hsp104、Hsp110が含まれるがこれらに限定されるわけではない。
【0090】
微小環境およびワクチン効率
本明細書において記述される装置/足場は、感染症模倣微小環境を表す。各々の装置は、特定の抗原に対する免疫応答を刺激/増強することができる活性化樹状細胞を、誘引/受容、教育/刺激し、かつ周辺の体組織へと送る工場を構成する。具体的には、足場装置は、感染症微小環境を模倣して樹状細胞応答をさらに活性化するために、病原性分子と共に埋め込まれるかまたは病原性分子によってコーティングされる。
【0091】
材料システムによって感染症を適切に模倣する局面は、DCを持続的に動員して、活性化し、LNへとホーミングすることによって、癌ワクチンとして適用された場合に、腫瘍の進行に対して劇的に強い影響を与える。GM-CSF単独を用いた第一のPLGワクチンによって、バッチプロセスが得られ、この場合宿主DCはGM-CSFによって動員されて腫瘍抗原提示部位に常在し、GM-CSFレベルが低下するまで捕捉され、細胞は活性化されて分散するようになる(参照により本明細書に組み入れられる、米国特許出願第11/638,796号を参照されたい)。局所GM-CSF濃度の時間的変動により、動員されたDCの数、ならびにその活性化および分散の時期に対する制御が可能となった。最善のGM-CSFに基づくワクチンは、試験した動物のほぼ4分の1において防御免疫を付与することができたが、動員されたDCのおよそ26%が活性化され(DC〜240,000個)およびDCのおよそ6%がLNに分散された。高レベルのGM-CSFは多数のDCを動員したが、DCの活性化を限定し、潜在的に治療的なDCは足場内に捕捉されたままであった。これらの結果は、DC活性化および分散のGM-CSF阻害を妨害する圧倒的な「危険シグナル」としてCpG-ODNを局所に提示することによって細菌感染症を模倣する改善されたシステムを開発する動機付けとなった。本明細書において記述されるこれらの装置は、DCの増加したおよび持続的な出現を媒介することによって有意な進歩を表す。
【0092】
CpG-ODN分子を、DCへのODN取り込みおよびそのTLR-9受容体への局在化を促進するのみならず(図3)、PLGマトリクスにおいて静電気的に固定されて腫瘍抗原と共に同時に提示されるようにするために、PEIと共に縮合した(図6)。インビトロの結果は、PEI-CpG-ODN縮合体がDC内で脱縮合して、阻害レベルのGM-CSF(500 ng/ml)の存在下で、DCの活性化とリンパ節由来ケモカインCCL19に向かう分散とを促進するTLRシグナル伝達を刺激できることを示した。
【0093】
インビボにおいて、適切に設計された感染症模倣体は、GM-CSFによる動員の後に縮合CpG-ODNの提示による常在DCSの即時活性化およびその後の放出により、感染症様微小環境を通じてDCを往復輸送する、持続的プロセスを媒介した。併用CpG-ODN送達の用量効果のインビボスクリーニングによって、DC活性化に及ぼす差次的効果が明らかとなり、高用量のCpG-ODN(>50μg)およびGM-CSF(>1μg)ではCCR7およびMHCII発現の異常な切り離しが起こったが、最適なCpG-ODN用量(10〜25μg)は、高レベルのGM-CSF(3μg、インビボ)によって妨害される場合でも有意なDC活性化(44%、および細胞1.5×106個)を誘導した。したがって、最適なCpG-ODN提示は、インサイチューで強いGM-CSFパルスによって動員された多数のDCを活性化することができ、これらの数は、エクスビボプロトコルにおいてしばしばプログラムされて移植された数を超える(図7)。
【0094】
このDCプログラミングプロセスは、GM-CSFの強いパルスによる動員の後に縮合CpG-ODN刺激による常在DCSのその後のプログラミングおよび放出が起こる感染症様微小環境を通じてDCが往復輸送されることから持続的であることが証明された。LNにホーミングするDCのパーセンテージは6%から13%へとほぼ倍加し(米国特許出願第11/638,796号および図8)、これはプログラムされたDC 180,000個(CpG-ODNが存在しない場合の装置と比較して〜4倍の増強)が感染症模倣体によってリンパ節に分散されたことに対応した(図7および8)。特に、この状態におけるリンパ節は著しく肥大して(図8)、屠殺時には多数のDCが負荷されており、感染症模倣体がそれらの動物において作出されたという結論を支持した。
【0095】
これらの感染症材料システムが、DCの輸送および活性化を持続的に制御できることは、癌ワクチンの有効性に対する調節と言い換えられた。プログラムされてリンパ節へと分散される材料に常在する活性化DCの数が増加すると、効力は、0〜23%および最後に50%に増加した。宿主T細胞は、免疫防御を媒介し、実際に形成された腫瘍(図10)におけるCD4およびCD8リンパ球の数(感染症の模倣により〜50%の増加)とワクチンの効力のあいだに明確な関係が見いだされた。これらの結果は、このシステムが強力で特異的で持続的な抗腫瘍免疫を刺激することが既に見いだされていることから(Akira S, Takeda K, Kaisho T. Nature Immunol, 2, 675-80, 2001)、GM-CSFを分泌するように操作された放射線照射腫瘍細胞を用いて開発されたエクスビボワクチンと定性的に一貫する。対照的に、感染症模倣材料システムは、インサイチューでDCをプログラムして、全てのエクスビボ細胞操作および移植を必要とすることなく、動員されて活性化されリンパ節(LN)へと分散されるDCの数に対して厳密な制御を提供した。
【0096】
これらの結果は、インサイチューでの細胞の挙動およびプログラミングを微調整する価値があることを示している。これらの研究におけるワクチンの効力の背後にある機序は、明らかに、DCの可動化およびプログラミングの数および時期に対する適切な制御であった。感染症模倣体は、そうでなければ致死的となる感染症、癌、および自己免疫に対する免疫を作製する手段を有するワクチンを開発するための有用なツールである。
【0097】
足場組成物および構築
足場の成分は、多様な幾何学形状(例えば、ビーズ、ペレット)、ニッチ、平面層(例えば、薄いシート)で組織化される。例えば、多成分足場は、その各々が異なる物理的性質(ポリマーの%、ポリマー架橋の%、足場の化学組成、孔サイズ、多孔性、および孔の構築、剛性、靱性、延性、粘弾性、および/または増殖因子、ホーミング/遊走因子、分化因子などの生物活性物質の組成)を特徴とする同心円に構築される。各々のニッチは、細胞集団に対して特定の効果を有し、例えば特定の細胞機能、増殖、分化、分泌された因子もしくは酵素の生成、または遊走を促進または阻害する。足場においてインキュベートされた細胞は、標的組織、例えば損傷を受けた組織部位に直接影響を及ぼすために、足場から出て遊走するように教育および誘導される。例えば、間質血管細胞および平滑筋細胞は、血管または体腔の層などの管様構造の修復のために用いられるシート様構造において有用である。例えば、そのような構造は、胃壁破裂などの腹壁損傷または欠損を修復するために用いられる。同様に、皮膚幹細胞および/またはケラチノサイトを播種したシート様足場は、皮膚組織を再生するための帯具または創傷包帯において用いられる。装置は、標的組織上にまたはそれに近接して、体の防護された位置に、血管に近接して、または外部創傷包帯の場合には体外に留置または移植される。装置は、多様な公知の方法およびツール、例えばスプーン、鉗子またはグラスパー、皮下注射針、内視鏡マニピュレータ、血管内または経血管カテーテル、定位針、スネーク装置、臓器表面跛行ロボット(米国特許出願第20050154376号;Ota et al., 2006, Innovations 1:227-231)、最小侵襲性外科装置、外科埋め込みツールおよび経皮パッチを用いて体組織の中または体組織の上に導入される。装置はまた、例えばマトリクス材料を連続的に注入または挿入することによってその場でアセンブルされうる。足場装置に任意で、例えば増殖因子または分化因子などの物質の連続的注入または噴霧によって、細胞または生物活性組成物を再度充填する。
【0098】
足場または足場装置は、その上またはその中で細胞が会合または付着する物理的構造であり、足場組成物は構造を作出する材料である。例えば、足場組成物には、以下に記載される材料などの生物分解性のまたは永続的な材料が含まれる。足場の機械的特徴は、再生が求められる応用または組織タイプに従って多様である。これは、生物分解性(例えば、コラーゲン、アルジネート、多糖、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ(グリコリド)(PGA)、ポリ(L-ラクチド)(PLA)、またはポリ(ラクチド-コ-グリコリド)(PLGA))であるか、または永続的(例えば、絹)である。生物分解性の構造の場合、組成物は物理的または化学的作用、例えば水和レベル、熱もしくはイオン交換によって、または細胞作用、例えば近傍もしくは常在細胞による酵素、ペプチドもしくは他の化合物の生成によって、分解する。硬度は、軟性/柔軟(例えば、ゲル)からガラス状、ゴム状、もろい、強靱、弾性、堅い、まで多様である。構造は、ナノ孔性、ミクロ孔性、またはマクロ孔性である孔を含有し、孔のパターンは任意で、均一、不均一、整列、反復、またはランダムである。
【0099】
アルジネートは、分子量、分解速度、および足場形成法を制御することによって、特定の応用のために処方される可能性がある用途の広い多糖に基づくポリマーである。カップリング反応を用いて細胞接着配列RGDなどの生物活性エピトープをポリマー骨格に共有結合的に付着させることができる。アルジネートポリマーは、多様な足場タイプに形成される。注射可能なハイドロゲルは、カルシウムイオンなどの架橋剤を付加することによって低分子量アルジネート溶液から形成されうるが、マクロ孔の足場は、高分子量のアルジネートディスクの凍結乾燥によって形成される。足場処方の差は、足場分解の動態を制御する。アルジネート足場からのモルフォゲンまたは他の生物活性物質の放出速度は、空間的および時間的に制御された様式でモルフォゲンを提示するように足場処方によって制御される。この制御された放出は、全身の副作用を消失させて、多数回注射の必要性をなくすのみならず、埋め込み部位での宿主細胞および足場に播種された移植細胞を活性化する微小環境を作製するために用いることができる。
部分的に酸化されたアルジネート
RGD改変アルジネート
【0100】
足場は、任意で全体または部分的に生物分解性である生物適合性のポリマーマトリクスを含む。ハイドロゲルは、適したポリマーマトリクス材料の一例である。ハイドロゲルを形成することができる材料の例には、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、PLGAポリマー、アルジネートおよびアルジネート誘導体、ゼラチン、コラーゲン、アガロース、天然および合成多糖、ポリペプチド、特にポリ(リジン)などのポリアミノ酸、ポリヒドロキシ酪酸およびポリ-ε-カプロラクトン、ポリ酸無水物などのポリエステル;ポリホスファジン、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(アルキレンオキシド)、特にポリ(エチレンオキシド)、ポリ(アリルアミン)(PAM)、ポリ(アクリレート)、ポリ(4-アミノメチルスチレン)などの改変スチレンポリマー、プルロニックポリオール、ポロキサマー、ポリ(ウロン酸)、ポリ(ビニルピロリデン)、およびグラフトコポリマーを含む上記のコポリマーが含まれる。
【0101】
足場は、コラーゲン、フィブリン、ヒアルロン酸、アガロース、およびラミニンに富むゲルなどの、しかしこれらに限定されない多様な合成ポリマーおよび天然に存在するポリマーから組み立てられる。ハイドロゲルに関して1つの好ましい材料は、アルジネートまたは改変アルジネート材料である。アルジネート分子は、(1-4)連結β-D-マンヌロン酸(M単位)およびα-L-グルロン酸(G単位)モノマーを含み、これはポリマー鎖に沿って比率および連続した分布が多様でありうる。アルジネート多糖は、二価の陽イオン(例えば、Ca+2、Mg+2、Ba+2)に対して強い親和性を有し、これらの分子に曝露されると安定なハイドロゲルを形成する多価電解質システムである。Martinsen A., et al., Biotech. & Bioeng., 33 (1989) 79-89を参照されたい。例えば、カルシウム架橋アルジネートハイドロゲルは歯科応用、創傷包帯、軟骨細胞の移植にとって、および他の細胞タイプのためのマトリクスとして有用である。
【0102】
例示的な装置は、比較的低分子量、好ましくはサイズが解離後にヒトの腎クリアランス閾値であるアルジネートまたは他の多糖を利用し、例えばアルジネートまたは多糖は分子量1000〜80,000ダルトンに低減される。好ましくは、分子量は、1000〜60,000ダルトンであり、特に好ましくは1000〜50,000ダルトンである。同様に、グルロン酸単位は、マンヌロン酸単位とは対照的に、ポリマーをゲル化するために二価の陽イオンによるイオン架橋のための部位を提供することから、高いグルロン酸含有量のアルジネート材料を用いることが有用である。参照により本明細書に組み入れられる米国特許第6,642,363号は、細胞移植および組織工学操作応用にとって特に有用であるアルジネートまたは改変アルジネートなどの多糖を含有するポリマーを作出および用いるための方法を開示する。
【0103】
アルジネート以外の有用な多糖には、以下の表に記載されるものなどのアガロースおよび微生物多糖が含まれる。
【0104】
多糖足場組成物
a N−中性、A=陰イオン性、およびC=陽イオン性。
【0105】
本発明の足場は、多孔性または非多孔性である。例えば、足場は約10 nm未満の直径を有するナノ孔性;孔の直径が好ましくは約100 nm〜20μmの範囲であるミクロ孔性;または孔の直径が約20μmより大きい、より好ましくは約100μmより大きい、およびさらにより好ましくは約400μmより大きいマクロ孔性である。1つの例において、足場は、直径約400〜500μmの孔が整列するマクロ孔性である。望ましい孔サイズおよび孔の整列を有するポリマーマトリクスの調製は、実施例において記述される。多孔性のハイドロゲル産物を調製するための他の方法は当技術分野において公知である(参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第6,511,650号)。
【0106】
生物活性組成物
装置には、1つまたは複数の生物活性組成物が含まれる。生物活性組成物は、精製された天然に存在する化合物、合成によって産生された化合物、または組換え型化合物、例えばポリペプチド、核酸、低分子、または他の物質である。例えば、組成物には、GM-CSF、CpG-ODN、および腫瘍抗原または他の抗原が含まれる。本明細書において記述される組成物は精製される。精製化合物は関心対象化合物の重量(乾燥重量)で少なくとも60%である。好ましくは、調製物は、関心対象化合物の少なくとも75重量%、より好ましくは少なくとも90重量%、および最も好ましくは少なくとも99重量%である。純度は任意の適切な標準的な方法によって、例えばカラムクロマトグラフィー、ポリアクリルアミドゲル電気泳動、またはHPLC分析によって測定される。
【0107】
ポリマーマトリクスへのポリペプチドのカップリングは、当業者に公知の合成法を用いて達成される。ペプチドをポリマーにカップリングさせるアプローチは、Hirano and Mooney, Advanced Materials, p.17-25 (2004)において考察される。他の有用な結合化学には、Hermanson, Bioconjugate Techniques, p. 152-185 (1996)において考察される化学、特にカルボジイミドカップラー、DCCおよびDIC(ウッドワード試薬K)を用いることが含まれる。ポリペプチドは、そのようなカルボジイミド結合のための末端アミン基を含有する。アミド結合形成は好ましくは、ペプチド合成において一般的に用いられる水溶性酵素である1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)によって触媒される。
【0108】
生物活性組成物の放出動態の制御
GM-CSFなどの生物活性組成物の放出プロファイルは、多数の異なる技術、例えば封入、足場との付着/会合の性質、足場の多孔性、および生物活性組成物の粒子サイズを用いて制御される。
【0109】
例えば、GM-CSFは、GM-CSFを足場に組み入れる1つの手段によって封入される。GM-CSFを最初にPLGミクロスフェアに封入した後、これらのGM-CSF負荷ミクロスフェアを気体発泡プロセスに供し、マクロ孔PLG足場を作製した。ミクロスフェアにGM-CSFを組み入れることによって、GM-CSFをポリマーのより深部に包埋して、これによって装置は1〜5日間にわたってGM-CSF送達の初回パルスを持続させることができる。他の組み入れ法は任意で、望ましいGM-CSFパルスの持続を変更するまたは微調整するために用いられ、次にこれはDC動員の動態を変化させると考えられる。例えば、凍結乾燥GM-CSFと混合した発泡性のPLG粒子によって、ポリマー足場の表面により多く会合するGM-CSFが得られ、タンパク質はより迅速に拡散する。
【0110】
放出動態を改変する代替の足場組み立て法には、足場の孔の物理的構造を改変して、それによって例えばRiddle et al., Role of poly(lactide-co-glycolide) particle size on gas-foamed scaffolds. J Biomater Sci Polym Ed. 2004;15(12):1561-70において記述されるように異なる分解時間および放出動態(体積のパーセンテージとしての孔サイズまたは総多孔性の変化)をもたらすことが含まれる。放出動態を変化させる別の方法は、組成物、すなわち足場を作出する原料を改変して、それによって放出特性を変化させることである。例えば、異なるポリマー、例えばアルジネート、PLA、PGA、またはPLGAを用いる。同様に、グリコール酸および乳酸の異なる比率を有するポリマーを用いることによって、異なる放出プロファイルが得られる。例えば、組成(ラクチド対グリコリド比)および分子量が異なる多様なPLGを用いて、公知のダブルエマルション(水/油/水)プロセスによりミクロスフェア(5〜50μm)を調製した後、気体発泡/微粒子浸出技術を用いて、微粒子PLGおよびPLGミクロスフェアを用いた足場の調製を行う(Ennett et al., Temporally regulated delivery of VEGF in vitro and in vivo. J Biomed Mater Res A. 2006 Oct;79(1))。別の技術は、異なる区画にタンパク質を組み入れる段階を伴う(例えばタンパク質PLGミクロスフェアを封入する、または発泡前にポリマーと単純に混合して凍結乾燥する)。
【0111】
装置の充填および/または再充填
GM-CSFなどの生物活性組成物を、装置の異なる層/区画内に組み入れて、それによってGM-CSFの多数のパルスを送達させる。各々のパルスは、DCの流入によって装置を充填(または再充填)する。足場は、GM-CSF(または他の生物活性物質)の多数のパルスを作製するために多様な方法を用いて組み立てられる。例えば、そのような装置は、異なる区画にタンパク質を組み入れて(例えば、タンパク質PLGミクロスフェアを封入することによって、または発泡前に単純にポリマーと混合して凍結乾燥することによって)、それによってタンパク質の2つまたはそれより多い独自の放出プロファイル(すなわち、パルス)を作製することによって作出される(例えば、Richardson et al., Polymeric system for dual growth factor delivery. Nat Biotechnol. 2001 Nov;19(11)において記述されるように)。
【0112】
または、タンパク質は、迅速に分解するPLGミクロスフェア(例えば、低分子量、50:50比)、および遅く分解するPLGミクロスフェア(高分子量、85:15比)に封入される。次に、これらのミクロスフェアを共に混合して、後にこれらを用いて足場を組み立てる。ゆえに、タンパク質は速く分解するポリマーおよび遅く分解するポリマーの双方に封入されて、それによって少なくとも2つの独自の放出動態および送達パルスが得られる。この方法は、その比測定特徴が異なる、3、4、5種類またはそれより多い異なるミクロスフェアを作製するために利用され、それによってGM-CSFなどの生物活性組成物の放出の3、4、5回またはそれより多いパルスが得られる。
【0113】
1つより多いパルスを送達する装置を作出するための別のアプローチは、層状の足場を組み立てることである。層状の足場は、異なる足場処方における別の足場との圧縮成形によって作出される。例えば、原料(ショ糖+PLG1+タンパク質)はまた、型において圧縮され、わずかに変化した処方(ショ糖+PLG2+タンパク質)も同様に型において圧縮される。次にこれらの2つの層を互いに圧縮した後、発泡させ、それによって例えばChen et al., Pharm Res. Spatio-temporal VEGF and PDGF delivery patterns blood vessel formation and maturation. 2007 Feb;24(2):258-64において記述されるように、タンパク質の濃度が独自に空間的に制御された二層足場が得られる。
【0114】
装置の構築
足場構造は、ペプチドポリマー、多糖、合成ポリマー、ハイドロゲル材料、セラミクス(例えば、リン酸カルシウムまたはヒドロキシアパタイト)、タンパク質、糖タンパク質、プロテオグリカン、金属および金属合金などの、多数の異なる堅固な、半堅固な、柔軟な、ゲル、自己アセンブルする、液晶、または流体組成物から構築される。組成物は、当技術分野において公知の方法、例えば注入成形、予め形成された構造の凍結乾燥、プリンティング、自己アセンブリ、転相、溶媒鋳造、融解プロセシング、気体発泡、繊維形成/プロセシング、微粒子浸出、またはその組み合わせを用いて細胞足場構造にアセンブルされる。次に、アセンブルされた装置を、処置される個体の体に埋め込むかまたは投与する。
【0115】
装置は、いくつかの方法でインビボでアセンブルされる。足場は、体に非ゲル化型で導入されて、インサイチューでゲル化するゲル化材料から作出される。装置成分を、アセンブリが起こる部位に送達する例示的な方法には、針または他の押し出しツールを通しての注入、噴霧、塗布、または組織部位での沈着法、例えばカニューレを通して挿入される適用装置を用いた送達が含まれる。1つの例において、非ゲル化または無構造足場材料を、体に導入する前にまたは導入しているあいだに生物活性物質および細胞と混合する。得られたインビボ/インサイチューアセンブル足場は、これらの物質および細胞の混合物を含有する。
【0116】
足場のインサイチューアセンブリは、ポリマーの自然発生的会合の結果として、または相乗的もしくは化学的に触媒された重合化から起こる。相乗的または化学的触媒作用は、アセンブリ部位でのまたはその近傍での多数の内因性因子または状態、例えば体温、イオン、もしくは体のpHによって、またはオペレータによってアセンブリ部位に供給される外因性の因子もしくは状態、例えば導入された後の非ゲル化材料に向けられる光子、熱、電気、音、または他の放射線によって開始される。エネルギーは、放射線ビームによって、またはワイヤもしくは光ファイバーケーブル、もしくは超音波変換器などの、熱もしくは光の導体を通して、足場材料に向けられる。または、例えば針の中を通過することによって剪断力を受けた後に再架橋する両親媒性物質などのシアーシニング材料が用いられ、軽減されている。
【0117】
足場装置のインビボおよびエクスビボアセンブリの双方にとって適したハイドロゲルは、当技術分野において周知であり、例えばLee et al., 2001, Chem. Rev. 7:1869-1879において記述される。アセンブリを自己アセンブルするための両親媒性ペプチドアプローチは、例えばHartgerink et al., 2002, Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 99:5133-5138において記述されている。シアーシニング後の可逆的なゲル化法は、Lee et al., 2003, Adv. Mat. 15:1828-1832において例示される。
【0118】
類似にまたは異なるようにドープ処理されたゲルまたは他の足場材料の連続層を標的部位に適用することによって、多数の区画装置がインビボでアセンブルされる。例えば、装置は、既に注入された材料の中心に針を用いて次の内層を連続的に注入することによって形成され、同心円の球状体を形成する。非同心円区画は、既に注入された層の異なる位置に材料を注入することによって形成される。マルチヘッド注入装置は区画を並行しておよび同時に押し出す。層は、生物活性物質および異なる細胞タイプによって異なるようにドープ処理された類似のまたは異なる足場組成物で作出される。または、区画は、各区画内でのその親水性/疎水性特徴または二次相互作用に基づいて自己組織化する。
【0119】
区画化装置
一定の状況において、独自の化学および/または物理的特性を有する区画を含有する装置は有用である。区画化装置は、各区画に関して異なる組成または濃度の組成物を用いることによって設計されて組み立てられる。
【0120】
または、区画は、個々に組み立てた後に、互いに接着させる(例えば、内部区画が1つまたは全ての面で第二の区画によって取り囲まれる「サンドイッチ」)。後者の構築アプローチは、各層の他の層に対する内因性の接着、各層におけるポリマー鎖の拡散および相互浸透、第二の層の第一の層に対する重合化または架橋、接着剤(例えば、フィブリン糊)の使用、または他の区画における1つの区画の物理的捕捉を用いて達成される。区画は、自己アセンブルして、適切な前駆体(例えば、温度感受性オリゴペプチド、イオン強度感受性オリゴペプチド、ブロックポリマー、架橋剤およびポリマー鎖(またはその組み合わせ)、ならびに細胞制御アセンブリを許容する細胞接着分子を含有する前駆体)の存在に応じてインビトロまたはインビボのいずれかで適切に相互接続する。
【0121】
または、区画化装置は、プリンティング技術を用いて形成される。生物活性物質をドープ処理した足場前駆体の連続層を基板上に置いて、その後例えば自己アセンブル化学によって架橋させる。架橋が化学、光または熱触媒重合化によって制御される場合、各層の厚さおよびパターンはマスクによって制御され、各触媒作用後に非架橋前駆体材料を洗浄すると複雑な三次元パターンが構築される(WT Brinkman et al., Photo-cross-linking of type 1 collagen gels in the presence of smooth muscle cells: mechanical properties, cell viability, and function. Biomacromolecules, 2003 Jul-Aug;4(4):890-895.;W. Ryu et al., The construction of three-dimensional micro-fluidic scaffolds of biodegradable polymers by solvent vapor based bonding of micro-molded layers. Biomaterials, 2007 Feb;28(6):1174-1184;Wright, Paul K. (2001). 21st Century manufacturing. New Jersey: Prentice-Hall Inc.)。複雑な多区画層はまた、基板の異なる領域上の異なるドープ処理足場前駆体を「塗布する」インクジェット装置を用いて構築される。Julie Phillippi (Carnegie Mellon University) presentation at the annual meeting of the American Society for Cell Biology on December 10, 2006; Print me a heart and a set of arteries, Aldhouse P., New Scientist 13 April 2006 Issue 2547 p 19.; Replacement organs, hot off the press, C. Choi, New Scientist, 25 Jan 2003, v2379。これらの層は、複雑な三次元区画に構築される。装置はまた、以下の方法のいずれかを用いて構築される:ジェットフォトポリマー、選択的レーザー焼結法、薄膜積層法、熱溶解積層法、シングルジェットインクジェット、三次元プリンティング、または薄膜積層法。
【0122】
足場装置からの生物活性物質の放出プロファイルは、拡散およびポリマー分解の双方の因子、システムに負荷される因子の用量、およびポリマーの組成によって制御される。同様に、作用範囲(組織分布)、および作用の持続、または放出された因子の空間時間的勾配は、これらの変数によって調節される。関心対象組織における因子の拡散および分解は、任意で因子を化学改変すること(例えば、PEG化増殖因子)によって調節される。いずれの場合においても、放出の時間枠は、装置による有効な細胞送達が望ましい時間を決定する。
【0123】
生物活性物質は、足場材料において物質を捕捉するために、表面吸着、物理的固定、例えば相の変化を用いることが含まれる公知の方法を用いて足場組成物に付加される。例えば、増殖因子は、水相または液相に存在する際に足場組成物と混合して、環境条件(例えば、pH、温度、イオン濃度)を変化させた後、液体をゲル化または固化して、それによって生物活性物質を捕捉する。または、例えばアルキル化剤またはアシル化剤を用いた共有結合的カップリングを用いて、既定のコンフォメーションにおける足場上で生物活性物質の安定な長期間の提示を提供する。そのような物質を共有結合的にカップリングするための例示的な試薬を以下の表に提供する。
【0124】
ポリマーにペプチド/タンパク質を共有結合的にカップリングさせる方法
[a]EDC:1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドヒドロクロリド;DCC:ジシクロヘキシルカルボジイミド。
【0125】
本発明において用いるのに適した生物活性物質には、インターフェロン、インターロイキン、ケモカイン、サイトカイン、コロニー刺激因子、化学走化性因子、顆粒球/マクロファージコロニー刺激因子(GMCSF)が含まれるがこれらに限定されるわけではない。樹状細胞を活性化するために都合よく用いられる可能性がある先に言及したタンパク質の任意のスプライス変種、およびその低分子アゴニストまたはアンタゴニストも同様に、本明細書において企図される。
【0126】
先に言及したサイトカインの例には、IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-10、IL-12、IL-15、IL-17、IL-18、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、インターフェロン-γ(γ-IFN)、IFN-α、腫瘍壊死因子(TNF)、TGF-β、FLT-3リガンド、およびCD40リガンドが含まれるがこれらに限定されるわけではない。
【0127】
本発明の足場は任意で、移植された細胞またはインプラントの近位の宿主細胞が、望ましい時間枠で望ましい因子を局所で利用できるようにする遺伝子を取り込んで発現させるように、少なくとも1つの非ウイルス遺伝子治療ベクターを含む。そのような非ウイルスベクターには、陽イオン脂質、ポリマー、ターゲティングタンパク質、およびリン酸カルシウムが含まれるがこれらに限定されるわけではない。
【0128】
足場の組み立て
D、L-ラクチドおよびグリコリドの85:15、120 kDコポリマー(PLG)(Alkermes, Cambridge, MA)を気体発泡プロセスにおいて利用して足場を形成した(Cohen S., Yoshioka T., Lucarelli, M., Hwang L.H., and Langer R. Pharm. Res. 8,713-720 (1991);参照により本明細書に組み入れられる)。GM-CSFを封入するPLGミクロスフェアを標準的なダブルエマルションを用いて作出した(Harris, L.D., Kim, B.S., and Mooney, D.J. J. Biomed.Mater. Res. 42,396-402 (1998);参照により本明細書に組み入れられる)。PLGミクロスフェア16 mgを孔形成物質であるNaClまたはショ糖(粒子サイズが250μm〜425μmとなるようにふるいにかける)150 mgと混合して、圧縮成形した。得られたディスクを高圧CO2環境において平衡にして、圧を急速に低減させて、ポリマー粒子を膨張させて相互接続構造へと融合させる。水の中に浸すことによってNaClを足場から浸出させると、90%多孔性である足場が得られた。腫瘍溶解物をPLG足場に組み入れるために、C57BL/6Jマウス(Jackson Laboratory, Bar Harbor Maine)の背部の皮下で成長させたB16-F10腫瘍の生検をコラゲナーゼ(250 U/ml)(Worthington, Lakewood, NJ)において消化して、40μmセルストレーナーを通して濾過した後、107個/mlと同等の濃度に浮遊させた。腫瘍細胞浮遊液を液体窒素中での急速凍結と融解(37℃)の4サイクルに供した後、400 rpmで10分間遠心した。腫瘍溶解物を含有する上清(1 ml)を収集してPLGミクロスフェアと共に凍結乾燥し、得られた混合物を用いてPLG足場に基づく癌ワクチンを作出した。CpG-ODNをPLG足場に組み入れるために、PEI-CpG-ODN縮合液を50%(重量/体積)ショ糖溶液60μlと共にボルテックスミキサーによって撹拌して、凍結乾燥して乾燥ショ糖と共に混合して最終重量を150 mgとした。PEI-CpG-ODN縮合体を含有するショ糖をブランク、GM-CSF、および/または腫瘍溶解物負荷PLGミクロスフェアと混合して、PLG癌ワクチンを作出した。
【0129】
本発明の足場組成物は、GM-CSFおよびCpG-ODN配列を含む。広範囲の濃度の各要素が企図される。好ましい態様において、足場組成物はPLGを含む。GM-CSFに関しては、ポリマー足場組成物40 mgあたりGM-CSFポリペプチド0〜100μgが足場組成物に組み入れられるか、またはその上にコーティングされる。または、GM-CSF 0〜50μg、0〜25μg、0〜10μg、0〜5μg、および0〜3μgを含む用量が足場組成物に組み入れられる。好ましい態様において、GM-CSF 0〜3μgが足場組成物に組み入れられる。CpG-ODN配列またはPEI-CpG-ODN縮合物に関しては、ポリマー足場組成物40 mgあたりPEI-CpG-ODN 0〜1000μgが足場組成物に組み入れられるか、またはその上にコーティングされる。または、PEI-CpG-ODN 0〜500μg、0〜250μg、0〜100μg、0〜50μg、0〜25μg、0〜10μg、および0〜5μgを含む用量が足場組成物に組み入れられる。好ましい態様において、PEI-CpG-ODN 0〜50μgが足場組成物に組み入れられる。
【0130】
CpG-ODNの組み入れおよびインビトロ放出試験
CpG-ODN組み入れの組み入れ効率を決定するために、CpG-ODN 50μgと共にPLG足場を調製して、クロロホルム(Sigma Aldrich)1 mlにおいて消化して、水性緩衝液2 mlによって洗浄した。水相を単離して、組み入れられたCpG-ODNの量を、Nanodrop機器ND1000(Nanodrop technologies, Wilmington, DE)を用いて吸光度の読み(光路0.2 mmで計算した260/280、および260/230比)によって決定した。同様に、CpG-ODN放出動態を決定するためにCpG-ODN負荷足場を、インキュベータ(37℃)内のリン酸緩衝生理食塩液(PBS)1 ml中に入れた。様々な時点で、PBS放出培地を収集して新鮮な培地と交換した。PLG足場に組み入れられてPBSの中に放出されたCpG-ODNの全量を経時的に分析して記録した。
【0131】
インビトロDC遊走アッセイおよびDC活性化
DC株、JAWSII(ATCC, Manassas, VA)をインビトロ実験のために用いて、20%FBS(Invitrogen, Carlsbad, CA)および5 ng/ml GM-CSFを添加したα-MEM(Invitrogen, Carlsbad, CA)において維持した。DC活性化に及ぼすCpGに富むオリゴヌクレオチド(CpG-ODN)のインビトロ効果を決定するために、JAWSII細胞を5μg/ml CpG-ODN 1826、5'-tcc atg acg ttc ctg acg tt-3'(Invivogen, San Diego, CA)と共に24時間培養して、0、50、または500 ng/ml GM-CSFの存在下で12時間培養した。DC活性化に及ぼす縮合CpG-ODNの効果を査定するために、混合物をボルテックスミキサーによって撹拌しながらODN-1826溶液をPEI溶液中に滴下することによってCpG-ODNをPEI分子と縮合した(Huang YC, Riddle F, Rice KG, and Mooney DJ. Hum Gene Ther. 5, 609-17. (2005);参照により本明細書に組み入れられる)。PEIとCpG-ODN(NH3+:PO4-)との電荷比を縮合の際に7で一定に維持した。DC活性化に関する陽性対照として、DCをまた、刺激因子、TNF-α(10 ng/ml)(Peprotech, Rocky Hill, NJ)、およびLPS(10 ng/ml)(Sigma-Aldrich, St. Louis, MO)と共に培養した。次にDCを採収して一次抗体(BD Pharmingen, San Diego, CA):PE結合CD86(B7、共刺激分子)、FITC結合CCR7、およびFITC結合MHCIIによって染色した。細胞をFACSによって分析して、アイソタイプ対照を用いて陽性FITCおよびPEに従ってゲートを設定し、各表面抗原に関して染色陽性の細胞のパーセンテージを記録した。
【0132】
遊走アッセイは、孔サイズ5μmの6.5 mmトランスウェルディッシュ(Costar, Cambridge, MA)において行った。CpG-ODN刺激が、GM-CSFの存在下でCCL19(Peprotech, Rocky Hill, NJ)に向かうDCの化学走化性に影響を及ぼす可能性を調べるために、5μg/mlのCpG-ODNまたはPEI-CpG-ODN(電荷比7)、および0、50、および500 ng/ml GM-CSFのいずれかによって刺激したDC 5×105個を上部のウェルに入れて、300 ng/ml CCL19を下のウェルに入れた。12時間後、チャンバーの底のウェルに遊走した細胞を採集して、コールターカウンターを用いて計数した。DC 1×106個を播種して、ウシコラーゲン(BD Biosciences, San Jose, CA)を用いてトランスウェルに固定したPLG足場(直径13 mm、4分の1である厚さ2 mm)に縮合体5、50、および500μgを組み入れることによって、PEI-CpG-ODN負荷PLGマトリクスからCCL19に向かうDCの分散を査定した。GM-CSFの存在下でのCpG刺激の効果を試験するために、PEI-CpG-ODN 25μgを含有する足場を有する上部ウェルの培地に500 ng/ml GM-CSFを添加した。様々な時点で、チャンバーの底のウェルに遊走した細胞を採収してコールターカウンターを用いて計数した。
【0133】
インビボDC遊走および活性化アッセイ
ブランク足場およびPEI-ODN対照(5'- tcc atg agc ttc ctg agc tt -3')10μgまたはPEI-CpG-ODN縮合体10μgを負荷した足場の存在下または非存在下でGM-CSFを含有する足場を、7〜9週齢の雄性C57BL/6Jマウスの背部の皮下嚢に埋め込んだ。組織学的検査のために、足場を切除して、Z-固定液において固定して、パラフィンに包埋して、ヘマトキシリンおよびエオジンによって染色した。DC動員を分析するために、足場を切除して、コラゲナーゼ溶液(Worthingtion, 250 U/ml)を用いて37℃で45分間撹拌して内植組織を単細胞浮遊液に消化した。細胞浮遊液を40μmセルストレーナーの中に注いで、足場の粒子から細胞を単離して、細胞を沈降させて冷PBSによって洗浄した後、Z2コールターカウンター(Beckman Coulter)を用いて計数した。得られた細胞集団を、フローサイトメトリーによって分析するために蛍光マーカーに結合させた一次抗体(BD Pharmingen, San Diego, CA)によって染色した。APC結合CD11c(樹状細胞マーカー)およびPE結合CD86(B7、共刺激分子)染色をDC動員分析のために行い、APC結合CD11c、FITC結合CCR7、およびPE結合MHCII染色をDCプログラミング分析のために行った。細胞を、アイソタイプ対照を用いて陽性FITC、APC、およびPEに従ってゲートを設定して、各表面抗原に関して染色陽性の細胞のパーセンテージを記録した。足場から鼠径リンパ節に向かうインビボDC遊出を追跡するために、凍結乾燥フルオレセインイソチオシアネート(FITC)(Molecular Probes, Carlsbad, CA)250μgを、足場の処理の前にPLGミクロスフェアと混合することによって足場に組み入れ、3%FITC溶液330μlと共に足場を30分間インキュベートすることによってFITCを適用した。FITC着色足場をC57BL/6Jマウスの左脇腹皮下に埋め込んで、鼠径リンパ節(LN)を、足場埋め込み後の様々な時点で採収した。LNからの細胞浮遊液をコラゲナーゼにおける30分間の消化、および70μmセルストレーナーを通して組織を押しつけることによって調製し、フローサイトメトリーによってCD11c(+)FITC(+)細胞数に関して検査した。
【0134】
腫瘍成長アッセイ
黒色腫腫瘍溶解物および様々な用量のGM-CSFおよび/またはPEI-CpG-ODN縮合体10μgを有するPLG足場をC57BL/6Jマウスの下左脇腹皮下に埋め込んだ。動物にB16-F10黒色腫細胞(ATCC, Manassas, NJ)105個を、背部頚部への皮下注射によって14日後に投与した。動物を腫瘍成長の発生(およそ1 mm3)に関してモニターして、腫瘍が20〜25 mm(最も長い直径)まで成長した場合には人道的理由から屠殺した。組織学検査に関して、腫瘍を注入後20〜25日目に生検を行ってZ固定液(Anatech, Battle Creek, MI)において固定して、ヘマトキシリンおよびエオジンに関して染色した。T細胞浸潤に関して腫瘍組織を調べるために、アビジン-ビオチン-ペルオキシダーゼVectastain Elite ABCキット(Vector Laboratories)を用いて免疫ペルオキシダーゼ染色を行った。用いた一次抗体はGK 1.5(CD4)および53-6.72(CD8)であり、染色を、DAB+基質色素原(DAKO, Carpinteria, CA)を用いて顕色させた。腫瘍試料(n=3または4)からの切片をNikon光学顕微鏡(Indianapolis, IN)によって40倍および100倍で可視化して、陽性染色T細胞を手動で計数した。PLG癌ワクチンをまた、既に記述されているように(Dranoff G., et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 90, 3539-3543(1993);参照により本明細書に組み入れられる)、GM-CSFを発現するように遺伝子改変されてその後放射線照射(3500 rad)されたB16-F10黒色腫細胞を用いた一般的な細胞に基づくワクチンと比較した。放射線照射腫瘍細胞(5×105個)をC57BL/6Jマウスの皮下に注射して、マウスにB16-F10黒色腫細胞105個を14日後に投与した。
【0135】
統計分析
本試験における値は全て、平均値±S.D.として表記した。群のあいだの有意差をStudentのt検定によって分析し、0.05未満のP値は有意であると見なした。
【0136】
ワクチン装置
生物適合性の足場は、癌ワクチンのための送達ビヒクルとして有用である。癌ワクチンは、癌細胞に対する内因性の免疫応答を刺激する。現在生産されているワクチンは主に液性免疫系(すなわち、抗体依存的免疫応答)を活性化する。現在開発中の他のワクチンは、腫瘍細胞を殺すことができる細胞傷害性Tリンパ球を含む細胞性免疫系の活性化に重点を置いている。癌ワクチンは一般的に、抗原提示細胞(例えば、マクロファージおよび樹状細胞)および/またはT細胞、B細胞、およびNK細胞などの他の免疫細胞の双方に対する癌抗原の提示を増強する。癌ワクチンはいくつかの型の1つをとってもよいが、その目的は、APCによるそのような抗原の内因性のプロセシング、およびMHCクラスI分子の状況における細胞表面上の抗原提示の最終的な提示を容易にするために、癌抗原および/または癌関連抗原を抗原提示細胞(APC)に送達することである。1つの型の癌ワクチンは、被験体から採取されてエクスビボで処置された後、被験体に細胞全体として再導入される癌細胞の調製物である全細胞ワクチンである。これらの処置は任意で、細胞を活性化するためにサイトカイン曝露、細胞からサイトカインを過剰発現させるための遺伝子操作、または腫瘍特異的抗原もしくは抗原カクテルによるプライミング、および培養物の増大を伴う。樹状細胞ワクチンは、抗原提示細胞を直接活性化し、その増殖、活性化、およびリンパ節への遊走は、免疫応答の誘発能を増強するために足場組成物によって調節される。処置される癌のタイプには、中枢神経系(CNS)癌、CNS胚細胞腫瘍、肺癌、白血病、多発性骨髄腫、腎臓癌、悪性神経膠腫、髄芽細胞腫、および黒色腫が含まれる。
【0137】
抗原特異的免疫応答を誘発する目的に関して、足場装置は哺乳動物に埋め込まれる。装置は、免疫細胞を活性化して特異的抗原によって細胞をプライミングするように調整されて、それによって免疫防御の増強ならびに望ましくない組織および細菌またはウイルス病原体などの標的微生物の破壊を増強する。装置は、GM-CSFなどのシグナル伝達物質を含有および/または放出することによって、マクロファージ、T細胞、B細胞、NK細胞、および樹状細胞などの適切な免疫細胞を誘引する。これらのシグナル伝達物質は、足場組成物において他の生物活性化合物を組み込むために用いられる同じ技術を用いて、その放出を空間的および時間的に制御するように足場組成物に組み入れられる。
【0138】
免疫細胞が装置の内部に存在すると、装置は、望ましくない組織(例えば、癌、脂肪の沈着、またはウイルス感染もしくはそうでなければ疾患を有する細胞)または微生物を攻撃するようにまたは免疫系の他の局面によって攻撃を与えるように、免疫細胞をプログラムする。免疫細胞活性化は、標的特異的組成物の調製物、例えば癌細胞表面マーカー、ウイルスタンパク質、オリゴヌクレアチド(oligonucleatide)、ペプチド配列、または他の特異的抗原などの望ましくない組織または生物の表面上に見いだされるリガンドに常在免疫細胞を曝露することによって達成される。例えば、有用な癌細胞特異的抗原および他の組織または生物特異的タンパク質を以下の表に記載する。
【0139】
装置は任意で、多価ワクチンを作製するために多数のリガンドまたは抗原を含有する。組成物は、装置の中を遊走する免疫細胞が装置の中を横切る際に組成物に曝露されるように、足場組成物の1つまたは複数の区画の表面内に包埋されるかまたはその上にコーティングされる。抗原または他の免疫刺激分子は、足場組成物が分解すると細胞に曝露されるかまたは細胞に曝露されるようになる。装置はまた、リガンドを認識して抗原提示を増強するように免疫細胞をプログラムするワクチンアジュバントを含有してもよい。例示的なワクチンアジュバントには、ケモカイン/サイトカイン、CpGに富むオリゴヌクレオチド、または標的細胞特異的抗原またはリガンドに同時に曝露される抗体が含まれる。
【0140】
装置は、免疫細胞を足場の中に遊走するように誘引して、そこで細胞は抗原特異的に教育されて活性化される。次に、プログラムされた免疫細胞は、多くの方法でリンパ節に向かって出て行くように誘導される。動員組成物および展開シグナル/組成物、例えばリンパ節遊走誘導物質は、足場材料への組み入れおよび/またはそこからの放出法によってプログラムされるか、または誘引物質を含有する足場区画の連続的分解によって制御されて、1回または複数回のバーストで放出される。バーストが消散すると、細胞は離れるように遊走する。忌避物質を含有する区画は、1回もしくは複数回のバーストで、または経時的に着実に忌避物質を分解および放出するように設計される。忌避物質の相対的濃度により、免疫細胞は装置から出るように遊走する。または、装置の中に置かれているまたは装置の中に遊走した細胞は、忌避物質を放出するように、または自身の挙動を変化させるようにプログラムされる。例えば、足場に付着させたプラスミドDNAに細胞を曝露することによって、局所遺伝子治療が行われる。有用な忌避物質には、ケモカインおよびサイトカインが含まれる。または装置は、装置を分解および放出することによって、免疫細胞を出現させる。
【0141】
ワクチン装置構築物において標的疾患状態、刺激分子、および有用な抗原を以下に記載する。
【0142】
免疫応答を促進するための生物活性因子
a.インターロイキン: IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-8、IL-10、IL-12、IL-15、IL-17、IL- 18等。
b.TNF-α
c.IFN-γ
d.IFN-α
e.GM-CSF
f.G-CSF
g.Ftl-3リガンド
h.MIP-3β(CCL19)
i.CCL21
j.M-CSF
k.MIF
1.CD40L
m.CD3
n.ICAM
o.抗CTLA-4抗体
p.TGF-β
q.CPGに富むDNAまたはオリゴヌクレオチド
r.細菌に関連する糖部分:リポ多糖(LPS)は例である。
s.Fasリガンド
t.Trail
u.リンフォタクチン
v.マンナン(M-FP)
w.熱ショックタンパク質(apg-2、Hsp70、およびHsp 90は例である。)
【0143】
疾患および抗原−ワクチン接種標的
a.癌:抗原およびその起源
i.生検から抽出された腫瘍溶解物
ii.放射線照射腫瘍細胞
iii.黒色腫
1.MAGE シリーズ抗原(MAGE-1は例である。)
2.MART-1/黒色腫
3.チロシナーゼ
4.ガングリオシド
5.gp100
6.GD-2
7.O-アセチル化GD-3
8.GM-2
iv.乳癌
1.MUC-1
2.Sos1
3.プロテインキナーゼC-結合タンパク質
4.逆転写酵素タンパク質
5.AKAPタンパク質
6.VRK1
7.KIAA1735
8.T7-1、T11-3、T11-9
V.他の一般的および特異的癌抗原
1.ヒトテロメラーゼ酵素(hTRT)
2.サイトケラチン-19(CYFRA21-1)
3.扁平上皮癌抗原1(SCCA-1)、(プロテインT4-A)
4.扁平上皮癌抗原2(SCCA-2)
5.卵巣癌抗原CA125(1A1-3B)(KIAA0049)
6.ムチン1(腫瘍関連ムチン)、(癌腫関連ムチン)、(多形上皮ムチン)(PEM)、(PEMT)、(エピシアリン)、(腫瘍関連上皮膜抗原)、(EMA)、(H23AG)、(落花生反応性尿中ムチン)、(PUM)、(乳癌関連抗原DF3)
7.CTCL腫瘍抗原se1-1
8.CTCL腫瘍抗原se14-3
9.CTCL腫瘍抗原se20-4
10.CTCL腫瘍抗原se20-9
11.CTCL腫瘍抗原se33-1
12.CTCL腫瘍抗原se37-2
13.CTCL腫瘍抗原se57- 1
14.CTCL腫瘍抗原se89-1
15.前立腺特異的膜抗原
16.5T4癌胎児栄養膜糖タンパク質
17.Orf73カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス
18.MAGE-C1(癌/精巣抗原CT7)
19.MAGE-B1抗原(MAGE-XP抗原)(DAM 10)
20.MAGE-B2抗原(DAM6)
21.MAGE-2抗原
22.MAGE-4a抗原
23.MAGE-4b抗原
24.結腸癌抗原NY-CO-45
25.肺癌抗原NY-LU-12変種A
26.癌関連表面抗原
27.腺癌抗原ART1
28.傍腫瘍関連脳-精巣-癌抗原(腫瘍神経抗原MA2;傍腫瘍神経抗原)
29.神経腫瘍腹側抗原2(NOVA2)
30.肝細胞癌抗原遺伝子520
31.腫瘍関連抗原CO-029
32.腫瘍関連抗原MAGE-X2
33.滑膜肉腫、Xブレークポイント2
34.T細胞によって認識される扁平上皮癌抗原
35.血清学的に定義された結腸癌抗原1
36.血清学的に定義された乳癌抗原NY-BR-15
37.血清学的に定義された乳癌抗原NY-BR-16
38.クロモグラニンA;副甲状腺分泌タンパク質1
39.DUPAN-2
40.CA 19-9
41.CA 72-4
42.CA 195
43.癌胎児抗原(CEA)
b.AIDS(HIV関連抗原)
i.Gp120
ii.SIV229
iii.SIVE660
iv.SHIV89.6P
V.E92
vi.HC1
vii.OKM5
viii.FVIIIRAg
ix.HLA-DR(Ia)抗原
X.OKM1
xi.LFA-3
c.一般感染疾患および関連抗原
i.結核
1.結核菌(Mycobacterium tuberculosis)抗原5
2.結核菌抗原85
3.ESAT-6
4.CFP-10
5.Rv3871
6.GLU-S
ii.マラリア
1.CRA
2.RAP-2
3.MSP-2
4.AMA-1
iii.可能性がある変異体インフルエンザおよび髄膜炎株
d.神経保護−神経疾患(例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、プリオン病)に対する保護
1.自己CNS抗原のクラス
2.ヒトα-シヌクレイン(パーキンソン)
3.βアミロイド斑(アルツハイマー)
e.自己免疫疾患(多発性硬化症、リウマチ性関節炎等)
i.MHC抗原に連鎖した疾患
ii.異なるクラスの自己抗原
iii.インスリン
iv.インスリンペプチドB9-23
v.グルタミン酸
vi.デカルボキシラーゼ65(GAD 65)
vii.HSP 60
疾患連鎖T細胞受容体(TCR)
【実施例】
【0144】
実施例
実施例1:GM-CSFを負荷したPLG装置
GM-CSF 3μgを負荷したPLGマトリクスをC57BL/6Jマウスの皮下嚢に埋め込んだ。マクロ孔性PLGマトリクスは、GM-CSF、危険シグナル、および癌抗原を既定の空間的時間的様式でインビボで提示し、かつ動員されたDCがプログラムされる際のDCの居所として役立つ。これらのマトリクスは、常在DCを有効に動員するために、最初の5日以内にその生物活性GM-CSF負荷のおよそ60%を放出し、その後次の10日間にわたって生物活性GM-CSFをゆっくりと持続的に放出した(図11A)。
【0145】
マトリクスは以下のように作出された。D,L-ラクチドおよびグリコリドの85:15、120 kDのコポリマー(PLG)(Alkermes, Cambridge, MA)を気体発泡プロセスにおいて利用してマクロ孔性のPLGマトリクスを形成した(Harris, L.D., Kim, B.S., and Mooney, D.J. Open pore biodegradable matrices formed with gas foaming. J. Biomed.Mater. Res. 42,396-402(1998))。GM-CSFは、高圧CO2発泡プロセスを用いてPLG足場に封入された(54%効率)。GM-CSFを封入するPLGミクロスフェアは、標準的なダブルエマルションを用いて作出された(Cohen S., Yoshioka T., Lucarelli, M., Hwang L.H., and Langer R. Controlled delivery systems for proteins based on poly(lactic/glycolic acid) microspheres. Pharm. Res. 8,713-720 (1991))。腫瘍溶解物を組み入れるために、C57BL/6Jマウス(Jackson Laboratory, Bar Harbor Maine)の背部皮下で成長させたB16-F10腫瘍の生検を、コラゲナーゼ(250 U/ml)(Worthington, Lakewood, NJ)において消化して、液体窒素での急速凍結および融解(37℃)4サイクルに供した後、400 rpmで10分間遠心した。腫瘍溶解物を含有する上清を収集してPLGミクロスフェアと共に凍結乾燥して、得られた混合物を用いてPLG足場に基づく癌ワクチンを作出した。CpG-ODNをPLG足場に組み入れるために、CpG-ODN 1826、5'-tcc atg acg ttc ctg acg tt-3'(Invivogen, San Diego, CA)を最初に、混合物をボルテックスミキサーによって撹拌しながらODN-1826溶液をPEI溶液に滴下することによって、ポリ(エチレンイミン)(PEI、分子量〜25,000 g mol-1、Sigma Aldrich)分子と縮合させた。PEIとCpG-ODN(NH3+:PO4-)の電荷比を、縮合のあいだ7で一定に維持した。PEI-CpG-ODN縮合体溶液を50%(重量/体積)ショ糖溶液60μlと共にボルテックスミキサーによって撹拌して凍結乾燥し、乾燥ショ糖と混合して最終重量を150 mgとした。ショ糖含有縮合体をブランク、GM-CSFおよび/または腫瘍溶解物を負荷したPLGミクロスフェアと混合してPLG癌ワクチンを作出した。
【0146】
動物に投与後、組織学的分析を14日目に行った。分析から、足場への総細胞浸潤は、対照(GM-CSFを組み入れていない)と比較して有意に増強されることが明らかとなった(図11B)。DC(細胞表面抗原CD11cおよびCD86に関して陽性の細胞)に関する特定の分析から、GM-CSFが総常在細胞数を増加させるのみならず、DCである細胞のパーセンテージも増加させることが示された(図11C)。GM-CSF送達の結果として材料に常在しているDCの数は、一般的にプログラムされてエクスビボプロトコル(〜106個)によって投与されたDCの数とほぼ同じであるかそれより良好であり、増強されたDC数は、経時的に材料において維持された。インビボDC動員に及ぼすGM-CSFの効果は時間および用量依存的であった(図11D)。
【0147】
周辺組織における独自のインビボ濃度プロファイルを提供して、DC成熟および常在DCの分散を調節するために、PLG足場から送達されるGM-CSFの用量を変化させた(図11E)。GM-CSFを有しない足場を埋め込むと、埋め込み直後に中等度の局所レベルが得られたがその後1〜2日までに低レベルへと低下し、おそらく手術および埋め込まれたPLGに対する炎症応答により5日目に再度ピークに達した。PLG足場からのGM-CSFの送達によって、経時的に類似のGM-CSF濃度プロファイルが得られたが、かなり高い局所濃度であった。GM-CSFの初回用量をほぼ倍加させると、システムは、おそらく常在DCおよび白血球による内因性のGM-CSF産生により、インビボでのGM-CSFピークレベルに一桁の差を達成した。GM-CSFの二次ピークは用量3000 ngで5日目に見いだされ、用量7000 ngでは7日目に見いだされた(図11E)。GM-CSFの3000または7000 ngのいずれの用量を利用したかによらず、DCの活性化状態は、GM-CSFレベルが低下し始めた際(それぞれ、10日および28日)にピークに達して、DCプログラミングに関して最適な濃度範囲に入る。
【0148】
GM-CSFのパルスが活性化DCのバッチを動員してその後リンパ節へとホーミングするように放出できるか否かを試験した。足場に動員されたDCはこの標識を摂取することから、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)をPLG足場に組み入れて着色した。標識は後に、鼠径リンパ節への輸送後にこれらの細胞を同定するために用いることができる。2日目に、用量3000 ngのGM-CSFによって、おそらく足場部位でDCを捕捉するGM-CSFの高い初回レベルにより、リンパ節ホーミングの阻害が起こった(図11F)。しかし、GM-CSFレベルが低下すると、動員されたFITC陽性DCのバッチはマトリクスから放出されて、それによってリンパ節において優れた持続的なDCの存在が得られる。
【0149】
局所GM-CSF濃度を一時的に制御すると、次にDCのバッチの動員および分散が制御されることから、癌ワクチンとしてのこれらの細胞の有用性を、常在DCに腫瘍抗原を負荷するためにマトリクスに黒色腫腫瘍溶解物を固定することによって評価した。これらのPLG癌ワクチンをC57BL/6Jマウスに埋め込んで、14日後にこれらのマウスに非常に攻撃性で転移性の高いB16-F10黒色腫細胞を注入した。ブランクPLG足場のみを埋め込まれたマウスは全て、これらの細胞の攻撃性により、18日以内に認識可能な腫瘍を有し、23日までに安楽死させなければならなかった。PLG足場からの抗原単独の送達は、この群における数匹のマウスが40日まで生存したことから、マウスの運命をわずかに改善した。意外なことに、GM-CSFと抗原とを同時に送達すると、腫瘍形成を劇的に減少させ、最適なGM-CSF用量は腫瘍の形成を、動物の50%においておよそ40日間遅らせて、動物の23%を治癒した。その上、最適なGM-CSF曝露(400 ng)と組み合わせた局所腫瘍抗原提示は、腫瘍形成までの時間の代表値を、抗原単独と比較して3倍増加させて、最適化されていないGM-CSF曝露と比較してほぼ2倍に増加させた。
【0150】
次に、免疫組織化学による腫瘍組織に対するT細胞浸潤の分析を行って、プログラムされたDCがT細胞活性化および腫瘍へのホーミングを誘導することができるか否かを決定した。抗原単独によるワクチン接種により、CD4(+)T細胞浸潤が得られた。特に、適切なGM-CSF提示によってインサイチューでDCのバッチを動員およびプログラムすることによって、CD8(+)細胞傷害性T細胞数はブランク対照に対して2倍増加した。ワクチンの効力は、CD8およびCD4 T細胞ノックアウトマウスにおいて減弱されて、免疫防御におけるCD4およびCD8 T細胞の特定の役割を証明した。
【0151】
インサイチューDCプログラミングの持続的プロセスは、それらがマトリクスに常在化した後に、GM-CSF阻害からDCを解放する追加の手がかりを提示することによって達成される。特に、外因性のGM-CSFによる合成CpG-ODNの提示は、細菌感染症の模倣体を提供して、その中で炎症性サイトカインによって動員された細胞は、細菌に存在するCpG-ODNなどの「危険シグナル」を活性化する局所のToll様受容体によって刺激される。CpG-ODNは、ヌクレオチドを最初にポリエチレンイミン(PEI)と縮合して陽イオンナノ粒子を形成することによってPLGマトリクスに固定された。CpG-ODNとPLG粒子との組み合わせを発泡させた後、CpG-ODNは、陰イオンPLG材料との静電気相互作用によりマトリクスにほとんどが保持された(25日間で>80%)。CpG-ODN固定によって、GM-CSFによって動員された宿主DCは、それらがマトリクス内に常在するとこれらのヌクレオチドを局所に取り込むことができる。意外にも、このアプローチによって、足場における活性化DC(MHCIIおよびCCR7に関して陽性)の数はそれぞれ、GM-CSFまたはCpG-ODN送達単独に対しておよそ2.5倍および4.5倍増加した。CpG-ODN提示は、インサイチューで阻害性GM-CSFレベル(>40 ng/ml)の存在下でDC活性化を増強し、このことは、DC動員および活性化のより持続的なプロセスを示している。この感染症模倣システムは、活性化DCを確実に生成した。この感染症模倣体による免疫応答の大きさは、これらの動物のリンパ節が顕著に肥大していることからおおよそ確認された。最も重要なことは、マトリクスに最初に動員されてその後リンパ節に分散されたDCの数が6倍に増加することがこのシステムにおいて達成されたことである。
【0152】
次に、持続的DC動員、プログラミングが免疫応答を生成できることを黒色腫モデルにおいて試験した。ワクチンは有意な防御を提供して、防御のレベルはCpG用量と相関した。動物の生存は、CpGの用量0μg、10μg、および100μgで23%から50%に増加して、最終的に90%まで増加した。この材料感染症模倣体は、既存の細胞に基づく治療によって得られる防御と同等またはより良好な免疫防御を誘導した。溶解物単独を伴いCpG-ODNを提示する材料は20%の生存を示すに過ぎず、これは、GM-CSFによってDCが動員されるという利点を示す。DCをプログラムする際に動員されたDCの居所を提供するという利点は、GM-CSF 3000 ngの存在下および非存在下で腫瘍溶解物、CpG-ODNのボーラス注射から成るワクチン製剤が失敗したことによって証明された。その上、動員された細胞の居所を提供することなく持続的なGM-CSF送達を提供するように、ボーラスCpG-ODNおよび腫瘍溶解物送達と共にGM-CSF負荷PLGミクロスフェアを注入した場合、免疫防御はほとんど起こらず、動物は35日間以上生存しなかった。
【0153】
この材料システムによる免疫防御の機序をさらに検査するために、GM-CSFおよびCpG-ODNを単独または共に提示する材料における、DCのサブセットおよびこれらの細胞によるサイトカインの内因性の産生を、免疫応答の特異性に沿って分析した。GM-CSF単独の送達は、CD11c(+)CD11b(+)骨髄系DCの動員を増強したが、CpG-ODN送達単独はこのサブセットの総数に対してほとんど効果を示さなかった。しかし、CpG-ODN送達は、その部位での形質細胞様DCの数を実際に増加させた。これは主にTヘルパー(Th)-1サイトカイン、特に、抗原と共にCpG-ODN提示に応答してCD8(+)細胞傷害性T細胞免疫を促進することができる1型インターフェロン、およびインターロイキン(IL)-12を分泌すると記述されている。したがって、CpGシグナル伝達は、形質細胞様DCの存在の増加から予想されるように、常在DC上の活性化マーカーの発現をアップレギュレートするのみならず、ワクチン部位でIFN-γおよびIL-12産生を誘導した。その上、完全に防御されなかった(感染症模倣体:CpG-ODNの10μg用量)動物のサブセットにおいて形成された腫瘍へのT細胞浸潤の分析により、これらの動物においても、CpG-ODNによるDCプログラミングによって対照に対してCD8(+)T細胞浸潤がほぼ3倍に増加することが判明した。さらに、チロシナーゼ関連タンパク質(TRP)-2は、マウス(B16全細胞ワクチンが含まれる)およびヒトの双方における黒色腫ワクチンによって誘発される免疫応答の主な抗原標的であり、脾臓から単離された細胞をMHCクラス1/TRP2ペプチド五量体によって染色すると、ワクチン接種マウスにおいてTRP2特異的CD8 T細胞の劇的な増大が明らかとなった。これらの抗原特異的T細胞は、腫瘍細胞の殺傷に関与しており、ワクチン接種後の免疫防御を容易にする。加えて、生存マウスの33%が、腫瘍接種部位(頚部背部)で皮膚の斑および体毛の脱色を発症した。おそらくメラノサイト抗原に対するT細胞応答を伴う脱色は、ヒト黒色腫患者における臨床応答の改善に相関するものであり、これらの試験において、感染症模倣体によって処置したマウスに限って観察された。
【0154】
これらの結果は、ポリマー材料システムによる感染症の局面の模倣が、DCを有効に動員、活性化、およびリンパ節へホーミングさせることによって、腫瘍の進行に劇的に影響を及ぼすことを示している。第一のアプローチは、DCを腫瘍抗原提示材料に動員するためにGM-CSF単独のパルスを利用した。DCはその後材料内に常在して、GM-CSFレベルが低下するまで捕捉され、細胞は活性化されて分散されるようになりうる。GM-CSFの特定の濃度および持続は、その効果にとって極めて重要である。その後、GM-CSFによる動員の後にCpG-ODN提示による常在DCの活性化、およびその後の放出によって感染症様微小環境を通じてDCを往復輸送するための連続プロセスが開発された。材料からのPEI縮合CpG-ODNの提示は、材料に常在する活性化宿主DCの数を増加させたのみならず、リンパ節へと遊出したプログラムされたDCのパーセンテージおよび総数を増加させた。さらに、特定のDCサブセットおよびDC機能に関して選択されたCpG-ODNシグナル伝達は、防御的免疫応答に関連した。
【0155】
DCの輸送および活性化に対するシステムの定量的制御は、癌ワクチンの効力に対する調節と言い換えられた。プログラムされてリンパ節へと分散されるDCの数が増加すると、生存は0から25%、最終的には90%まで増加した。実際に形成した腫瘍におけるT細胞数とワクチン効力とのあいだに明確な関係が認められたことから、T細胞は免疫防御を媒介し、および感染症模倣体は、黒色腫抗原特異的T細胞の生成を誘導した。ボーラス型で送達された、および細胞の居所を提供せずに持続的に放出されたワクチンは、有意な防御免疫を産生することができなかったことから、マトリクス構造は、長期間持続型の免疫を産生するために必要であった。報告は、臨床的に適切な腫瘍モデルにおいて防御免疫を促進するためには細胞移植または多数回の全身注射が必要であるという結論に達したが、データは、機能的なポリマー常在材料を含む装置が、たとえ大きく低減された総薬物用量での1回適用であっても(例えば、足場システムにおける3μg 対 反復全身注射での総用量100μg)、これまでのシステムと同等かまたはより優れた有意で特異的な免疫防御を提供することを示している。
【0156】
これらのデータは、材料システムがインサイチューでDCをプログラムして、エクスビボでの細胞操作および移植の複雑さおよび費用を必要としないのみならず、動員されて、活性化され、およびリンパ節へと分散されるDCの数に対して厳密な制御を提供することから、有意な臨床での関連性を有した。患者は装置によって処置され、装置は現在の癌ワクチンに対する代替体を提供するか、またはそれらおよび他のアプローチと共に用いられる。
【0157】
システムは、破壊的免疫応答を促進する(例えば、感染疾患を根治する)または寛容を促進する(例えば、自己免疫疾患を打倒する)ことが望まれる他の状況に応用可能である。インサイチュー細胞プログラミングのための一時的居所としてポリマーを用いることは、エクスビボ細胞操作に依存する現行の細胞治療(例えば、幹細胞治療)に対して強力な代替体である。
【0158】
実施例2:合成CpG-ODN分子の縮合は細胞の取り込みを増加させる
合成CpG-ODN分子をPEIと縮合させて、それによって、細胞膜との会合を促進して、膜貫通輸送を増強することによって細胞インターナリゼーションを促進する陽性荷電の低分子PEI-CpG-ODN縮合体が得られた(図2)。PEIのアミン基とODNのリン酸基のあいだの電荷比7および15でのODN縮合によって、最適な粒子サイズおよび陽電荷(図2BおよびC)が得られたが、高用量でのPEI毒性が原因で、電荷比7を実験において利用した。
【0159】
CpG-ODNとPEIとの縮合は、インビトロでのDCへのヌクレオチド取り込みを劇的に増強した(図3A〜C)。DCへのCpG-ODN取り込みの定量により、ODN縮合体と裸のODNのあいだには数桁の差(〜100倍まで)が明らかになり、これはインビトロで長時間(>80時間)維持された(図3C)。複合体はその後脱縮合して(図3D)、エンドソームに存在することが既に証明されているその細胞内受容体TLR-9へとCpG-ODNを局在化させた。
【0160】
実施例3:CpG-ODNはDCの活性化およびDCの可動化を誘導した
DCの有効なCpG刺激は、細胞内局在化を必要とすることから、PEI縮合体のDC活性化に及ぼす効果を評価した。インビトロでPEI-CpG-ODNによって刺激されたDCは、裸のCpG-ODNによって刺激されたDCと比較して増強されたレベルのCD86、MHCII、およびCCR7発現を示し、これは縮合体のDC取り込みと強く相関した(図4AおよびB)。DCは、PEI-CpG-ODNの細胞取り込み時に、細針状の樹状突起の発達と大きい膜膨張とを含む活性化された形態を示し、これによって成熟DCはT細胞を「包み込んで」強い細胞-細胞相互作用を促進することができる。PEI-CpG-ODNによって刺激されたDCの活性化状態は、TNF-αおよびLPS(図3C)によって刺激された陽性対照の状態を代表したか、またはそれを超えており、PEI-CpG-ODN縮合体は、インビトロでCCL19に対するDCの遊走を非刺激DC(図4D)に対して3倍増加させた。
【0161】
縮合オリゴヌクレオチドおよび高レベルのGM-CSFの双方に曝露された細胞において、有意なDC活性化が認められたが(図5A)、PEI-CpG-ODN縮合体はまた、GM-CSF阻害からDCを解放した。加えて、PEI-CpG-ODN刺激はまた、高いGM-CSF源(500 ng/ml)からCCL19へと向かうDC遊走も促進した(図5B)。
【0162】
PEI-CpG-ODN縮合体を有効に固定して常在DCに提示して(図6A)DCの活性化および可動化を刺激するPLGシステムが開発された。局所PEI-CpG-ODN提示は、インビトロでのDCの可動化を促進した(図6)。興味深いことに、PLGマトリクスからCCL19へのDC遊出を増強するPEI-CpG-ODNの最適な用量範囲5〜50μgが存在するが、高用量(500μg)は、DC遊走に対して効果を有しなかった(図6BおよびC)。PEI-CpG-ODN 25μgまた、このモデルにおいて高いGM-CSFレベルがDC遊走に対して有する抑制効果を中和した(図6C)。これらの結果は、適切なCpG-ODN提示が、インサイチューで高レベルのGM-CSFによって動員されてそうでなければ捕捉された宿主DCを持続的にプログラムして分散させるための手段を提供することを示している。
【0163】
実施例4:感染症模倣体はインビボでDCを持続的にプログラムして分散させる
DCを持続的に動員してプログラムするための感染症模倣システムは、宿主DCをPLGマトリクスに誘引するためにGM-CSFの同時放出によって作製されたが、PEI-CpG-ODN縮合体は、おそらくプラスミドDNAに関して示されているように、動員されたDCに複合体を局所に取り込ませる静電結合により、マトリクス内にほとんどが保持された(25日間で>80%)(図6)。特に、最適化された場合、このアプローチによって、インサイチューでマトリクスに常在するMHCIIおよびCCR7発現DCの数はそれぞれ、およそ2.5倍および4.5倍増加した(GM-CSFまたはCpG-ODN送達単独に対して)(図7AおよびB)。興味深いことに、高用量のPEI-CpG-ODN(>50μg)によって、比較的低いMHCII発現および増強されたCCR7発現が得られ、このことは低用量と比較してDC機能の差次的調節を示している(図7A)。最適なCpG-ODNシグナル伝達(〜10〜25μg)は、インサイチューで阻害性GM-CSFレベル(>40 ng/ml)の存在下でDC活性化を増強し、この感染症模倣システムは、エクスビボプロトコルにおいて一般的に投与される活性化DCの数(>106個)をもたらした(図7AおよびB)。
【0164】
最も重要なことに、マトリクスに最初に動員されてその後リンパ節へと分散されたDCの数の6倍増加は、このシステムによって達成された(図8A)。感染症模倣体に対する免疫応答の大きさは、これらの動物のリンパ節が顕著に肥大したことから、おおよそ認識されることができた(図8BおよびC)。感染の応答によって特徴付けされるように、これらの腫脹したリンパ節は、DCを含むより多くの数の免疫細胞を含有した(図8CおよびD)。
【0165】
実施例5:感染症模倣微小環境は強力な抗腫瘍免疫を付与する
次に、免疫応答を生成するために持続的にDCを動員およびプログラムすることができるか否かを、黒色腫モデルにおいて試験した。このワクチンは、動物の50%が80日間の時間枠において腫瘍を形成しなかったことから(図9)、有意な防御を提供し、この結果は、広く研究された細胞に基づく治療によって得られた結果と驚くほど類似であった(図9)。lys+CpGを投与された動物は、処置後140日でも37.5%が腫瘍を有さず、免疫防御を達成した。
【0166】
さらに、完全に防御されなかった動物のサブセットにおいて形成された腫瘍組織へのT細胞浸潤の分析により、これらの動物においてもCpG-ODNによるDCプログラミングによって対照と比較してCD8(+)T細胞浸潤のほぼ3倍の増加が起こることが明らかとなった(図10)。このように、Lys-GM-CpG処置を受けた動物は全て治療上の利点を証明した。
【0167】
実施例6:腫瘍の防御はCpG-ODNの提示および形質細胞様DC(pDC)の濃縮によって調節される
骨髄およびリンパ球系列の双方の造血前駆細胞は、侵入する病原体に対して特異的応答を伝えることができる特異的防衛機構がその各々に備わっている2つの主なカテゴリーのDC、すなわち形質細胞様DC(pDC)および通常の(conventional)DC(cDC)への分化能を有する。この柔軟性によって、おそらくDCサブセットの動員および生成を、所望の免疫応答を誘発させることに最も熟達させることが可能になる。cDCには、長い突出した樹状突起を有する古典的(classical)DC形態を示し、それによって抗原処理およびT細胞に対する抗原提示にそれらを特に適合させる、CD11c+CD11b+およびCD11c+CD8α+細胞が含まれる。pDCは、細菌またはウイルスDNAにおける非メチル化CpGジヌクレオチド配列などの「危険シグナル」に応答して大量の1型インターフェロンを産生することができる丸い非樹状細胞である。
【0168】
pDC由来1型インターフェロン(IFN)は、CD8+T細胞に対する抗原の交差提示および細胞傷害性T細胞のクローン性の増大を容易にするcDCによるインターロイキン産生(例えば、IL-12)を誘発することによって、ウイルス感染症に対する生得の適応免疫につながっている。1型IFNはまた、ナイーブT細胞のTヘルパー1細胞への分化を直接誘導するように作用する。強力なIFNを産生することに加えて、炎症刺激および微生物感染によって刺激されたpDCは、T細胞応答をプライミングするために抗原をプロセシングして提示することができる樹状型へと分化する。pDCおよびcDCは、防御免疫もたらす独自の細胞および分子事象を開始する特殊な機能を行うように協調作用する。
【0169】
多くの細胞に基づく癌ワクチンは、DCネットワークの異なる成分を組み入れることができない。癌ワクチンはしばしば、サイトカイン混合物を用いてエクスビボでDCに変換されて、抗原提示を促進するように腫瘍抗原をパルスされた、容易にアクセス可能な患者由来の血液中の単球を用いて開発される。これらの抗原負荷DCは次に、主にTh1細胞およびCTLによって媒介される抗腫瘍免疫応答を誘導する目的で、癌患者の背中に戻すように注入される。進行癌患者においてエクスビボDCワクチンを利用する最初の治験によって、抗原特異的T細胞増大および防御的サイトカインの産生が起こったが、多くのワクチンは従来の処置(例えば、化学療法)に対して生存に関する長所を示すことができず、FDAの承認を得ることができなかった。これらの細胞に基づくワクチンは、移植されたDCのインビボ機能に対する制御を提供せず、ワクチンに1つのDCタイプを組み入れたに過ぎず、これは最も強力とはならない可能性がある。ゆえに、律速段階はおそらく、特に免疫応答が生成される際のDC活性化および特殊化のプロセスにおいて、エクスビボで免疫コンピテントDCの発達を完全に反復できないことである。本明細書において記述される装置および方法は、そのような初期のアプローチの短所を克服し、ゆえに、初期のシステムに対していくつかの長所を有する。
【0170】
装置は、腫瘍に対する防御免疫応答を生じるために、不均一なDCネットワークのインサイチュー動員および生成を制御する埋め込み可能な合成の細胞外マトリクス(ECM)を含む。サイトカインは材料から周辺組織に放出されることから、DC前駆体およびDCを動員するために、GM-CSFをポリラクチド-コ-グリコリド(FDA承認生体材料)に組み入れた。これらのマクロ孔マトリクスは、固定された腫瘍抗原およびCpGに富むオリゴヌクレオチドを危険シグナルとして提示して、細胞が材料内に常在するあいだにDCの発達および成熟をプログラムすることができる。ワクチン部位で生成されたDCサブセットの分布は、材料および危険シグナルの用量により癌抗原の提示を改変することによって調節され、これは当技術分野において認識されるB16-F10腫瘍モデルにおいて試験した場合に、腫瘍に対する防御的免疫応答の大きさに有意に影響を及ぼした。
【0171】
マトリクスは、DCを動員するためにGM-CSFのパルスを放出するように作出され、GM-CSF 0、3000、および7000 ngを負荷されて、C57BL/6Jマウスの皮下嚢に埋め込まれた。周辺組織において形成されたGM-CSF勾配は、埋め込み部位から1〜3 mmおよび3〜5 mmの距離でそれぞれ、GM-CSF濃度が100μg/mlおよび30μg/ml(GM-CSFを組み入れていないものに対して>30倍の差)に達したように、埋め込み後12時間でピークに達した。因子がPLGから隣り合う組織へと放出されるあいだ、上昇したGM-CSFレベルが長期間(およそ10日)維持された。GM-CSF 3000 ngを負荷したPLGマトリクスの埋め込み後14日での組織学分析により、ブランク対照に対して増強された細胞浸潤が明らかとなり、CD11c(+)DC集団のFACS分析は、GM-CSF送達がブランク対照より有意に多くのDC(〜8倍増加)を動員することを示した。動員されたDCの総数および共刺激分子CD86の発現は、用量依存的にGM-CSF送達を増加させた。
【0172】
次に、PLGマトリクスを改変してTLR活性化PEI縮合CpG-ODN分子を固定して、GM-CSFによって動員されたDC集団に、それらを危険シグナルとして提示した。縮合CpG-ODNシグナル伝達にGM-CSFを提供すると、埋め込み後10日で組織学分析によって明らかとなったように、PLGマトリクスへの細胞浸潤が劇的に増強された。重要なことに、PLGマトリクスからのCpG-ODN提示は、特定のDCサブセットの局所存在を調節して、防御的サイトカインの産生が得られた。GM-CSFによって動員されたDC浸潤物をCpG-ODNによって刺激すると、PLGマトリクスには、t-ヘルパー1(Th1)免疫に関連する1型IFN産生の増強を示すDCサブセットである、CD11c(+)PDCA-1(+)形質細胞様DC(pDC)が濃縮した。
【0173】
CpG-ODNによって、腫瘍部位へのpDCの選択的動員および増大が起こる。CpG-ODNの用量は、常在pDCの数を調節するように制御され、pDC数はCpG-ODNの0、10および100μg用量でそれぞれ細胞190,000個から520,000個まで、1,100,000個まで増加した。GM-CSF送達単独は、マトリクスに動員されたCD11c(+)CD11b(+)cDCの数を有意に増強させたが、CpG-ODNとの同時提示は、mDC集団またはCd11c(+)CD8(+)DCのいずれに対してもほとんど影響を与えなかった。高用量のCpG-ODNは、IFN-α(〜1010 pg/ml)、IFN-γ(〜600 pg/ml)の局所産生を促進し、より程度は低いが埋め込み部位でのIL-12(150 pg/ml)の産生を促進し、これらはこの状態でのpDC数の増加と相関した。GM-CSFによるDCの動員は、CpG-ODNシグナル伝達が、pDC集団の増大およびTh1サイトカインの産生に関して有意な効果を有するために必要であった。これらの結果は、合成細胞外マトリクスからの制御されたGM-CSFおよびCpG-ODN危険シグナル伝達が、Th1サイトカインの産生と共に常在pDCおよびCD11c(+)CD11b(+)cDC数を有効に調節できることを示している。
【0174】
癌抗原をCpG-ODNと共にマトリクス常在DCに同時提示することが、さらなるDCの発達、活性化、および抗原感作を促進して、それによって防御的腫瘍免疫および細胞傷害性T細胞応答をもたらすか否かを決定するために、試験を行った。B16-F10黒色腫腫瘍溶解物をPLGマトリクスに封入することによって、抗原提示マトリクスを組み立てた。GM-CSFおよびCpGシグナル伝達と組み合わせた制御された抗原提示は、埋め込み後10日目で、抗原を有しないマトリクスに対して常在pDC数を2倍、ブランク対照に対して10倍増強した(図12A)。GM-CSFと組み合わせた抗原提示またはCpGシグナル伝達単独ではpDC数に有意な差は観察されず、マトリクス常在DCのGM-CSF媒介動員およびCpG-ODN活性化の双方の利点を示した。ワクチン部位でのCD11c(+)CD11b(+)DC集団は、抗原またはCpGシグナル伝達が単独でもまたは組み合わせてもこれらのcDCの動員および増大に対して有意な効果を有しなかったことから(図12B)、GM-CSF送達のみ(図12B)に依存した。抗原およびCpG-ODN提示マトリクスによってCD11c(+)CD8(+)cDCは200,000個存在するが、これはGM-CSF媒介動員によっておよそ670,000個(ブランクマトリクスに対して9倍増加)まで増加した(図12C)。IFNおよびIL-12の内因性の産生の分析により、GM-CSFと組み合わせた抗原刺激が、CpG-ODN誘導と類似の内因性のIFN-αおよびIFN-γ産生を促進することが明らかとなった(図12D〜E)。加えて、抗原とCpG-ODNの双方を、GM-CSFによって動員された細胞集団に提示するマトリクスにおいて、T細胞増殖因子であるIL-12のインサイチュー産生は、ブランクマトリクスよりおよそ4倍高く、他の全てのマトリクス処方より少なくとも2倍高かった(図3F)。特に、抗原提示マトリクス部位での総細胞の有意な割合(10.3%)がCD8(+)(cDCサブセットおよび細胞傷害性T細胞)であり(図12G)、これはCD11c(+)CD8(+)cDCの数とIL-12の濃度の双方に相関した(図12C、F、G)。これらの結果は、癌抗原の提示に対して感受性である免疫応答が、インサイチューでCD8+T細胞活性を伴うCD8(+)DCを含む特定のDCサブセットの数および機能の双方を操作することによって生成されたことを示している。
【0175】
C57BL/6Jマウスを、インサイチューで特定のDCサブセットの生成および機能を差次的に調節するPLGに基づくワクチン(多様なGM-CSFおよびCPG-ODNの組み合わせ)から提示された黒色腫抗原(例えば、B16-F10腫瘍溶解物)を用いてワクチン接種して、ワクチン接種後14日目にB16-F10黒色腫腫瘍細胞を投与した。非ワクチン接種マウスの100%が腫瘍の負荷により23日までに安楽死とされる一方で、そうでなければ致死量後であっても、B16-F10腫瘍溶解物とCpG-ODN危険シグナル1、10、50、または100μgのいずれかの用量との双方を提示するPLGワクチンによって、ワクチン接種マウスのおよそ10〜30%が腫瘍なしで生存した(図13A)。意外にも、GM-CSF媒介DC動員を抗原およびCpG-ODN提示と組み合わせると、有意な腫瘍防御を生成した。CpG-ODNの10、50、および100μg用量によって、50、60、および90%の生存率が得られた(図13B)。生存率は、10日目でPLGワクチン部位で生成されたpDCの数と強く相関したが、動員されたCD11c(+)CD11b(+)DCの総数とは相関しなかった。加えて、比較的多数のCD11c(+)CD8(+)DC(細胞〜2×105個)を生成し(図13E)、およびインサイチューでIFN-α、IFN-γおよびIL-12産生を増加させるPLGシステムでは、高い生存率(60%および90%)が得られた。
【0176】
CpGおよびGM-CSF負荷足場によって生成されたDC集団は、たとえインサイチューでの総DC数が統計学的に類似であっても(3.05±0.55対2.67±0.64 100万個DC)、GM-CSF負荷足場と比較してより高い比率のpDC(〜38%対7%)およびCD8+cDC(〜9.4%対5.5%)(図13F)が得られ、マウス生存の有意な増強(90%対20%)がもたらされたことから、ワクチンシステムが不均一なDCネットワークを動員できることはまた、ワクチンの効力に対して強い効果を有する。その上、チロシナーゼ関連タンパク質(TRP)-2は、マウス(B16全細胞ワクチンを含む)およびヒトの双方における黒色腫ワクチンによって誘発された免疫応答の主な抗原標的であり、脾細胞をMHCクラスI/TRP2ペプチド五量体によって染色すると、より低いCpG用量である0または50μg(0.2%および0.3%脾細胞)のいずれかを提示するマトリクスと比較して、GM-CSF、抗原、およびCpG-ODN 100μgをワクチン接種したマウスにおけるTRP2特異的CD8 T細胞の有意な増大(0.55%脾細胞、1.80×105±0.6×104個)が明らかとなった。これらの抗原特異的T細胞の発達および増大は、pDC活性化およびその対応する1型IFNの産生によって誘導された。これらの細胞傷害性T細胞は次に、腫瘍細胞の殺傷に関与し、これはワクチン接種後の免疫防御を容易にした。これらの結果は、本明細書において記述される装置(PLGマトリクス)が、特殊化されたDCサブセットのインサイチューでの動員および増大を正確に調節することを示している。このpDCの選択的動員および増大は、これまでのワクチンアプローチと比較して癌抗原に対する免疫応答を劇的に改善し、腫瘍の進行を低減させ、かつ癌患者の生存を改善する。
【0177】
図14A〜Bは、治療モデルにおいて、対照をワクチン接種したマウスに対するPLGワクチンをワクチン接種したマウスの生存を示す。マウスに腫瘍細胞5×105個を接種して、腫瘍を触診可能(1〜3 mm3)となるまでマウスにおいて7日間成長させた。マウスに(7日目)、GM-CSF 3μg、腫瘍溶解物およびCpG-ODN 100μgを含有するPLG足場をワクチン接種した。確立された腫瘍(腫瘍の接種後7日目)を有するマウス(n=10)を用いて生存データを得た。GM-CSF、溶解物、およびCpG-ODNを含有するPLGワクチンをワクチン接種のために用いた。
【0178】
本明細書において記述されるマクロ孔性の合成ECMは、インサイチューで独自のDCネットワークを生成することができる微小環境を作製する炎症および感染症シグナル伝達物質の提示に対して、制御を提供した。これらのDCネットワークの総細胞数および不均一性は、B16黒色腫モデルにおける癌抗原に対する免疫応答の大きさと相関した。GM-CSFは、そのマクロ孔構造において宿主DC前駆細胞およびDCを動員および収容するためにPLGに基づくECMから急速に放出された。次に、インサイチューでのpDC発達を指示するためにCpG-ODNをGM-CSF分泌マトリクスの中に固定したところ、実際にCpGシグナル伝達は埋め込み部位でのCD11c(+)PDCA-1(+)pDC数を増強したのみならず、部位でのpDCの数を用量依存的に濃縮した。腫瘍抗原をPLGマトリクスに組み入れると、ワクチン部位でのCD11c+CD8+cDCの活性および濃縮の増強が観察された。癌抗原の提供によって、総CD8+細胞集団の増強が得られ、このことはCd8+DCおよびCd8+T細胞がインサイチューで抗原提示材料に応答して、免疫応答が細胞傷害性成分を有したことを示している。ワクチン埋め込み部位でのサイトカイン分析により、DCサブセットが、有効な免疫応答を生成するために協調的に作用することが示された。pDC数は1型IFNの存在と強く相関し、これは、これらの細胞によるCTLプライミングを増強するためにCD11c(+)CD11b(+)cDC(参照)の活性化およびそれによる抗原交差提示に役立った。加えて、pDCおよびCD8+cDC数は、IL-12産生と相関し、これはマトリクス常在DCによる抗原発現および交差提示ならびにCTLの発達および成長を促進する。
【0179】
腫瘍の成長およびT細胞分析から、DCネットワークの不均一性がインサイチューで増加すると、ワクチン効力も増加することが示された。総DC数は、GM-CSFシグナル伝達と統計学的に類似のままであったが、CpG-ODN危険シグナルを提供すると、pDC数を用量依存的に増加させて、これはB16-F10腫瘍投与後の動物の生存に強く相関した。PLGワクチンからの黒色腫抗原提示と共にCpG-ODN用量10、50、および100μg(GM-CSF分泌マトリクスにおいて)によって、マウスの45%、60%、および90%が生存した。PLGワクチンからGM-CSFシグナル伝達を除去すると、インサイチューで生成されたDCの総数が急速に低減し、それによって生存は10%に低下したが、一方でCpG-ODNシグナル伝達を除去すると、大部分のDC(87.4%)がCD11b+CDCであったことからインサイチューでのpDCが低減する。防御免疫を誘導するために必要な最少数のDCを各DCサブセットに関して決定したが、腫瘍投与後に50%より大きい生存を達成するためには、CD11b+cDCおよそ2,000,000個と協調するためにpDCがおよそ600,000個およびCD8+cDCが200,000個(全DCの〜30%)必要であった。
【0180】
結果は装置として臨床的に有意であり、および方法は、免疫を生成するためにインビボでDCサブセットを定量的に標的として使用することができ、それによって独自の防御免疫応答が得られたことを証明した。
【0181】
他の態様
本明細書において参照される特許および科学論文は、当業者に入手可能な知識を確立する。本明細書において引用される全ての米国特許および公表または非公表の米国特許出願は、参照により本明細書に組み入れられる。本明細書において引用された全ての公表された外国特許および特許出願は、参照により本明細書に組み入れられる。本明細書において引用された公表された他の全ての参考文献、文書、原稿、および科学論文は、参照により本明細書に組み入れられる。
【0182】
本発明は、その好ましい態様を参照して詳細に示し、記述してきたが、型および詳細における様々な変更を行ってもよく、それらも添付の特許請求の範囲に包含される本発明の範囲に含まれることは当業者によって理解されると考えられる。
【技術分野】
【0001】
政府の支援
本出願は、米国国立衛生研究所によって与えられたR37 DE013033の下で政府の支援を受けてなされた。米国政府は本発明において一定の権利を有する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
樹状細胞は、抗原提示細胞の中でも免疫系の最も強力な活性化物質である。治療上の利点を得るために樹状細胞を用いることに重点を置いた研究は、樹状細胞が希少であり、単離することが困難であるために遅れている。
【発明の概要】
【0003】
本発明は、インサイチューで細胞、例えば樹状細胞などの免疫細胞を持続的にプログラムするための装置および方法を特色とする。例えば、装置は埋め込まれて滞留し、そのあいだに細胞を絶えず動員して、教育し、およびリンパ節または体の疾患もしくは感染症部位に分散させるまたは送る。既存の装置に対する改善には、装置に入る細胞が長期間活性化され続けること、および免疫学的に活性化された、例えば抗原プライミングされた細胞が同時に長期間出現し続けることが含まれる。装置には、足場組成物、動員組成物、および展開組成物が含まれる。プライミングされた細胞の長期間の持続的な出現を媒介する展開組成物は、細菌由来免疫モジュレーターなどの感染症模倣組成物である。好ましい態様において、細菌由来免疫モジュレーターは、シトシン-グアニンオリゴヌクレオチド(CpG-ODN)などの核酸である。
【0004】
方法は、広く多様な疾患を処置するために、および広く多様な抗原に対するワクチンを開発するために用いられる。好ましい態様において、本発明は、癌ワクチンを開発するために用いられる。本発明の別の好ましい態様は、宿主免疫系を活性化して、続けて免疫応答を誘導するための手段を有する感染症模倣微小環境を含む。外因性の顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)と共に合成シトシン-グアノシンオリゴヌクレオチド(CpG-ODN)配列を用いることは、樹状細胞の遊走を正確に制御して、抗原特異的免疫応答をモジュレートするための方法を提供する。実際に、この合成シトシン-グアノシンオリゴヌクレオチド(CpG-ODN)配列を用いた新規アプローチは、有意な改善を証明し、免疫治療を開発するための新しい道を提供する。
【0005】
装置の様々な成分を表にして以下に記述する。
【0006】
【表1】
【0007】
装置は、3つの一次機能、例えば細胞を装置に誘引すること、免疫原性因子を提示すること、および装置から離れる細胞遊走を誘導することを行う。これらの一次機能の各々は、足場組成物(太字のフォント)および/または生物学的組成物(標準的なフォント)によって行われる。表1は、例示的な装置において少なくとも1つの一次機能と対をなした足場組成物または生物学的組成物のいずれかの例示的な組み合わせを提供する(1〜8)。例えば、足場組成物が、3つ全ての一次機能を行う(装置1)。代替の例において、足場組成物が、1つの一次機能、例えば装置に細胞(好ましくは、樹状細胞)を誘引することを行い、一方で生物学的組成物が、2つの一次機能、例えば免疫原性因子を提示する機能、および装置から離れて遊走するように細胞(好ましくは、樹状細胞)を誘導する機能を行う(装置3)。例として装置5は、装置3の逆の組み合わせである。足場組成物および/または生物学的組成物の例示的な二次機能には、特定の細胞または組織タイプへと装置を仕向けること、装置を1つまたは複数の細胞または組織の表面に接着させる/表面から放出させること、および装置の安定性/分解をモジュレートすることが含まれるがこれらに限定されるわけではない。
【0008】
本発明は、足場組成物と、該足場組成物の中に組み入れられているかまたは該足場組成物の上にコンジュゲートされている生物活性組成物とを含む装置を含み、該足場組成物は、樹状細胞を誘引して、該樹状細胞に免疫原性因子を導入し、それによって該樹状細胞を活性化し、かつ該足場組成物から離れて遊走するように該樹状細胞を誘導する。または、足場組成物の中に組み入れられているかまたは足場組成物の上にコーティングされている生物活性組成物が、樹状細胞を誘引して、該樹状細胞に免疫原性因子を導入し、それによって該樹状細胞を活性化し、かつ該足場組成物から離れて遊走するように該樹状細胞を誘導する。他の好ましい態様においては、足場組成物または生物活性組成物が、個別に樹状細胞を装置に誘引して、樹状細胞に免疫原性因子を導入し、かつ装置から離れて遊走するように樹状細胞を誘導する。
【0009】
好ましい態様において、動員組成物はGM-CSF、例えば封入されたGM-CSFである。装置は、局所GM-CSF濃度を一時的に制御して、それによって免疫細胞の動員、常在化、および装置から位置が離れているリンパ節または組織部位、例えば感染の部位または腫瘍の位置へのその後の分散/展開を制御する。GM-CSFの濃度は、それが動員要素または展開要素として機能するか否かを決定する。したがって、インサイチューで樹状細胞をプログラムする方法は、足場組成物と、封入された動員組成物とを含む装置を、被験体に導入することによって行われる。動員組成物のパルスが、装置の導入後1〜7日以内に装置から放出されて、残余量の動員組成物を装置内または装置上に残す。パルスに続いて、数週間にわたる残余量の緩徐な放出がある。動員組成物の局所濃度および放出の時間的パターンは、樹状細胞の動員、保持、および装置からのその後の放出を媒介する。例えば、パルスは、装置と会合した動員組成物の量の少なくとも50、60、75、90、または95%を含む。例示的な時間放出プロファイルは、装置を被験体へと導入した後1〜5日で、装置と会合した動員組成物の量の少なくとも60%を放出することを特徴とするパルスを含む。パルスに続いて、残余量は、パルス期間後長期間(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12日間、または2、3、4、5週間もしくはそれより長く)にわたって緩徐に放出される。
【0010】
足場を作出する方法は、足場組成物を提供する段階、樹状細胞を誘引または忌避するための手段を有するポリペプチドを含む第一の生物活性組成物を該足場組成物の中に組み入れるかまたは該足場組成物の上にコーティングする段階、および該足場組成物を第二の生物活性組成物と接触させる段階によって行われ、ここで、前記第二の生物活性組成物は、前記足場組成物に共有結合的にまたは非共有結合的に会合し、前記第二の生物活性組成物は、免疫原性因子を含む。この方法の代替の態様において、連結させるおよび接触させる段階は、複数の層をもたらすように繰り返され、ここで、第二の生物活性組成物は、樹状細胞を活性化する手段を有する化合物の組み合わせを含む。
【0011】
方法は、足場組成物と、該足場組成物の中に組み入れられているかまたは該足場組成物の上にコンジュゲートされている生物活性組成物とを含む装置を、被験体に投与する段階を含む、インサイチューで持続的に樹状細胞をプログラムすることを含み、該足場組成物は、樹状細胞を誘引して該樹状細胞に免疫原性因子を導入し、それによって該樹状細胞を活性化し、かつ該足場組成物から離れて遊走するように該樹状細胞を誘導する。装置は、樹状細胞の不均一な集団を動員して刺激する。各々のサブセットは、特殊化されて大いに免疫応答の生成の一因となる。例えば、装置は、CpG-ODN提示を媒介し、かつ抗腫瘍免疫の発達において特に重要である樹状細胞のサブセットである形質細胞様DC(pDC)の濃縮を媒介する。
【0012】
方法は、足場組成物と、該足場組成物の中に組み入れられているかまたは該足場組成物の上にコンジュゲートされている生物活性組成物とを含む装置を、被験体に投与する段階を含む、ワクチンの効力を増加させることを含み、該足場組成物は、樹状細胞を誘引して該樹状細胞に免疫原性因子を導入し、それによって該樹状細胞を活性化し、かつ該足場組成物から離れて遊走するように該樹状細胞を誘導し、それによってワクチン接種手法の有効性を増加させる。
【0013】
方法は、足場組成物と、該足場組成物の中に組み入れられているかまたは該足場組成物の上にコンジュゲートされている生物活性組成物とを含む装置を、被験体に投与する段階を含む、癌に対するワクチン接種を被験体に行うことを含み、該足場組成物は、樹状細胞を誘引して該樹状細胞に免疫原性因子を導入し、それによって該樹状細胞を活性化し、かつ該足場組成物から離れて遊走するように該樹状細胞を誘導し、それによって被験体に抗腫瘍免疫を付与する。限局性腫瘍または充実性腫瘍の場合、装置は、腫瘍部位もしくはその近傍に、または腫瘍が切除されたもしくは外科的に除去された部位に投与されるかまたは埋め込まれる。例えば、装置は、腫瘍部位または切除部位から1、3、5、10、15、20、25、40 mm離れた距離で埋め込まれ、例えばPLGワクチン装置は腫瘍塊から16〜21 mm離して投与される。
【0014】
免疫原性因子には、toll様受容体(TLR)リガンドが含まれる。好ましい態様において、用いられる免疫原性因子は、改変TLR-9リガンド配列、PEI-CpG-ODNである。
【0015】
足場組成物は、非生物分解性材料を含む。例示的な非生物分解性材料には、金属、プラスチックポリマー、またはシルクポリマーが含まれるがこれらに限定されるわけではない。その上、足場組成物は生物適合性の材料で構成される。生物適合性材料は非毒性または非免疫原性である。
【0016】
生物活性組成物は、足場構造に共有結合的または非共有結合的に連結される。生物活性組成物は、樹状細胞を誘引する手段を有する、足場組成物の表面に共有結合的または非共有結合的に結合される要素を含む。またはもしくは加えて、生物活性組成物は、免疫原性因子を樹状細胞に導入する手段を有する、足場組成物の表面に共有結合的にまたは非共有結合的に結合される要素を含む。またはもしくはさらに加えて、生物活性組成物は、足場組成物から離れて遊走するように樹状細胞を誘導する手段を有する、足場組成物の表面に共有結合的にまたは非共有結合的に結合される要素を含む。
【0017】
樹状細胞を操作する手段を有する生物活性組成物の要素は、分泌型または膜結合型アミノ酸、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、ヌクレオチド、ジヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、ポリマー、低分子、または化合物である。好ましい態様において、この要素は、樹状細胞を足場組成物に誘引することから、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)である。別の好ましい態様において、この要素は、CpG-ODN配列を樹状細胞に導入して、それによって細胞を活性化するための手段を有することから、PEI-CpG-ODN配列である。第三の好ましい態様において、この要素は、足場組成物から離れてリンパ節へと向かう樹状細胞の遊走を媒介するケモカイン受容体である、CCR7をコードするポリヌクレオチドまたはポリペプチドである。CCR7要素は、足場組成物から離れる樹状細胞の遊走を増強するために、PEI-CpG-ODN配列と同時にまたは連続的に樹状細胞に導入される。
【0018】
本発明の足場組成物は、外部表面を含有する。本発明の足場組成物は、またはもしくは加えて内部表面を含有する。足場組成物の外部または内部表面は、中実または多孔性である。孔サイズは、約10 nm未満、直径約100 nm〜20μmの範囲であるか、または約20μmより大きい。
【0019】
本発明の足場組成物は、1つまたは複数の区画を含む。
【0020】
本発明の装置は、経口、全身、皮下もしくは経皮、人工ステントとして、または外科的に投与されるかまたは埋め込まれる。
【0021】
本発明の装置および方法は、インサイチューでの持続的な細胞プログラミングのためのプロトコルに関連するいくつかの問題に対する解決策を提供する。細胞の免疫応答を刺激して、感染または疾患を有する体の組織に定着するようにその外向きの遊走を誘導するインサイチュー細胞プログラミングシステムは、回復の成功、例えば疾患組織の特異的消失を増強する。細胞機能および/または挙動、例えば移動を制御するそのような装置は、足場組成物と1つまたは複数の生物活性組成物とを含有する。生物活性組成物は、足場組成物の中に組み入れられるかまたはその上にコーティングされる。足場組成物および/または生物活性組成物は、樹状細胞の誘引、プログラミング、および遊走を時間的および空間的に(方向性に)制御する。
【0022】
装置は、インビボで材料からの宿主細胞の能動的動員、改変、および放出を媒介して、それによって足場に接触する細胞の機能を改善する。例えば、装置は、体において既に常在している細胞を足場材料に誘引または動員して、常在細胞を望ましい運命(例えば、免疫活性化)へとプログラムまたは再プログラムする。
【0023】
この装置には、生物活性材料を組み入れるかまたはそれによってコーティングされる足場組成物が含まれ;装置は、樹状細胞の誘引、活性化、および遊走を調節する。装置が設計される応用に応じて、装置は、足場自身の物理または化学的特徴を通して樹状細胞の誘引、活性化、および/または遊走を調節する。例えば、足場組成物は、差次的に透過性であり、足場の一定の物理的領域に限って細胞の遊走を可能にする。足場組成物の透過性は、例えばより大きいまたはより小さい孔サイズ、密度、ポリマーの架橋、剛性、靱性、延性、粘弾性に関して材料を選択または操作することによって調節される。足場組成物は、装置または装置内の区画の出口の標的領域に向かって細胞がその中をより容易に動くことができる物理的通路または小道を含有する。足場組成物は任意で、細胞が装置の中を動くために必要な時間が正確に予測可能に制御されるように、各々が異なる透過性を有する区画または層に組織化される。遊走はまた、足場組成物の分解、脱水もしくは再水和、酸素添加、化学変化もしくはpHの変化、または進行中の自己アセンブリによっても調節される。
【0024】
誘引、活性化、および/または遊走は生物活性組成物によって調節される。装置はその構造を通して細胞の活性化および遊走を制御および指示する。化学的親和性は、出口の特定の領域に細胞を向けるために用いられる。例えば、サイトカインは、細胞の遊走を誘引または抑制させるために用いられる。それらの生物活性物質の密度および混合物を変化させることによって、装置は遊走の時期を制御する。これらの生物活性物質の密度および混合物は、物質の初回ドープ処理レベルまたは濃度勾配によって、公知の浸出率を有する足場材料に生物活性物質を包埋することによって、足場材料の分解による放出によって、ある濃度領域からの拡散によって、ある領域に拡散する前駆体化学物質の相互作用によって、または常在サポート細胞による組成物の産生/排泄によって制御される。足場の物理または化学構造はまた、装置の中への生物活性物質の拡散も調節する。
【0025】
生物活性組成物には、細胞機能および/または挙動を調節する1つまたは複数の化合物が含まれる。生物活性組成物は、足場組成物に共有結合的に連結するか、または足場に非共有結合的に会合する。
【0026】
細胞遊走プロセスに関与するシグナル伝達事象は、免疫メディエータに応答して開始される。このように、装置は、GM-CSF、CpG-ODN配列、癌抗原、および/または免疫モジュレーターを含む第二の生物活性組成物を任意に含有する。
【0027】
いくつかの場合において、第二の生物活性組成物は、組成物が足場組成物の中または上に相対的に固定化された状態で、足場組成物に機能的に連結する。他の場合において、第二の生物活性組成物は、足場に非共有結合的に会合する。非共有結合は、共有結合より強さが一般的に1桁から3桁弱い結合であり、足場からのおよび周辺組織への因子の拡散を容認する。非共有結合には、静電結合、水素結合、ファンデルワールス結合、芳香族π結合および疎水結合が含まれる。
【0028】
足場組成物は、生物適合性である。組成物は、生物分解性/腐食性であるか、または体内での分解に対して抵抗性である。比較的永続的な(分解抵抗性の)足場組成物には、金属および絹などのいくつかのポリマーが含まれる。好ましくは、足場組成物は、温度、pH、水和状態、および多孔性、主鎖連結の架橋密度、タイプ、および化学、もしくは分解に対する感受性からなる群より選択される物理的パラメータに基づいて既定の速度で分解するか、または足場組成物は化学ポリマーの比率に基づいて既定の速度で分解する。例えば、ラクチドのみを含む高分子量ポリマーは一定期間かけて、例えば1〜2年かけて分解するが、ラクチドとグリコリドの50:50混合物を含む低分子量ポリマーは数週間、例えば1、2、3、4、6、10週間のうちに分解する。高分子量の高グルクロン酸アルジネートで構成されるカルシウム架橋ゲルは、インビボで数ヶ月(1、2、4、6、8、10、12ヶ月)から数年(1、2、5年)かけて分解するが、低分子量アルジネートおよび/または部分的に酸化されているアルジネートを含むゲルは数週間のうちに分解する。
【0029】
例示的な足場組成物には、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、PLGAポリマー、アルジネートおよびアルジネート誘導体、ゼラチン、コラーゲン、フィブリン、ヒアルロン酸、ラミニンに富むゲル、アガロース、天然および合成多糖、ポリアミノ酸、ポリペプチド、ポリエステル、ポリ酸無水物、ポリホスファジン、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(アルキレンオキシド)、ポリ(アリルアミン)(PAM)、ポリ(アクリレート)、改変スチレンポリマー、プルロニックポリオール、ポリオキサマー、ポリ(ウロン酸)、ポリ(ビニルピロリドン)、および上記のいずれかのコポリマーまたはグラフトコポリマーが含まれる。1つの好ましい足場組成物には、RGD-改変アルジネートが含まれる。
【0030】
別の好ましい足場組成物は、マクロ孔性ポリ-ラクチド-コ-グリコリド(PLG)である。例えば、PLGマトリクスには、GM-CSF、危険シグナル、および標的抗原、例えば癌抗原が含まれ、PLGマトリクスは、動員されたDCがプログラムされる際の居所として役立つ。動員要素であるGM-CSFはPLG足場に封入される。封入されたGM-CSFを含むPLGマトリクスは、樹状細胞動員組成物のパルスを提供して、次に放出速度は徐々に遅くなる。パルスは、生物活性組成物の初回量の少なくとも40、50、60、75、80%またはそれより多くを含み、残りのパーセントは、処置される被験体内のまたは被験体上の部位への投与後の翌日または数週間にわたって徐々に放出される。例えば、放出は、最初の5日以内に生物活性GM-CSF量のおよそ60%であり、その後、次の10日間にわたって生物活性GM-CSFの緩徐で持続的な放出が続く。この放出プロファイルは、常在DCを有効に動員するための周辺組織中への因子の拡散速度に影響を与える。
【0031】
足場組成物の多孔性は、装置の中の細胞の遊走に影響を及ぼす。孔はナノ孔性、ミクロ孔性、またはマクロ孔性である。例えば、ナノ孔の直径は約10 nm未満であり、ミクロ孔は直径約100 nm〜20μmの範囲であり、およびマクロ孔は約20μmより大きい(好ましくは約100μmより大きく、およびさらにより好ましくは約400μmより大きい)。1つの例において、足場は直径約400〜500μmの整列した孔を有するマクロ孔性である。
【0032】
装置は一段階で製造され、この場合1つの層または区画を作出して、1つまたは複数の生物活性組成物を注入またはコーティングする。例示的な生物活性組成物は、ポリペプチドまたはポリヌクレオチドを含む。または、装置は、二段階またはそれより多い(3、4、5、6、......10段階またはそれより多い)段階で製造され、この場合1つの層または区画を作出して1つまたは複数の生物活性組成物を注入またはコーティングした後に、第二の、第三の、第四の、またはそれより多い層を構築し、次に1つまたは複数の生物活性組成物を順に注入またはコーティングする。各々の層もしくは区画は、他の層もしくは区画と同じであるか、または生物活性組成物の数もしくは混合物のみならず、独自の化学的、物理的、および生物的特性によって互いに区別される。
【0033】
足場を作出する方法は、足場組成物を提供する段階、足場組成物を第一の生物活性組成物と共有結合的に連結させるかまたは非共有結合的に会合させる段階によって行われる。第一の生物活性組成物は好ましくは、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子を含有する。足場組成物はまた、第二の生物活性組成物、好ましくは1つまたは複数のシトシン-グアノシンオリゴヌクレオチド(CpG-ODN)配列と接触させる。第二の生物活性組成物は、足場組成物と会合して、ドープ処理された足場、すなわち1つまたは複数の生物活性物質を含む足場組成物をもたらす。接触させる段階を任意で繰り返して、複数のドープ処理足場を作製し、例えば接触段階の各々は、足場装置において第二の生物活性組成物の勾配をもたらすように、第二の生物活性組成物の異なる量を特徴とする。組成物の量を変化させることよりむしろ、その後の接触段階は、異なる生物活性組成物、すなわち、前回のドープ処理段階の前回の組成物または混合物とは因子の構造または化学式によって区別される、第三、第四、第五、第六の組成物または組成物の混合物を伴う。方法は任意で、個々のニッチ(niche)、層、または成分を互いに接着させること、および/または細胞の移動または生物活性組成物をさらに制御/調節するために装置の1つまたは複数の境界内または境界で半透過性、透過性、または非透過性の膜を挿入することを伴う。
【0034】
装置の治療応用には、免疫細胞の教育が含まれる。例えば、方法には、生物活性組成物がその中またはその上に組み入れられている足場組成物を含む装置と、足場に結合した哺乳動物細胞とを提供する段階、および例えば装置を哺乳動物組織の中に埋め込むまたは固定することによって、哺乳動物組織を装置に接触させる段階が含まれる。装置の投与または埋め込み時の、各々の成分、動員組成物(例えば、GM-CSF)、危険シグナル(例えば、CpG-ODN)、および抗原(例えば、精製腫瘍抗原または腫瘍細胞溶解物)の例示的な相対量は、以下のとおりである:GM-CSF:0.5μg〜500μg;CpG-ODN:50μg〜3,000μg;および腫瘍抗原/溶解物:100μg〜10,000μg。
【0035】
細胞、例えば宿主細胞の活性をモジュレートする方法は、足場組成物とその中またはその上に組み入れられた動員組成物とを含有する装置を哺乳動物に投与する段階、および次に細胞を展開シグナルに接触させる段階によって行われる。展開シグナルは、装置からの細胞の出現を誘導する。出口での細胞の活性は、装置に入る前の細胞の活性とは異なる。細胞は装置に動員されて、一定期間、例えば数分間;0.2、0.5、1、2、4、6、12、24時間;2、4、6日間;数週間(1〜4)、数ヶ月間(2、4、6、8、10、12)、または数年間装置内に常在して、そのあいだに細胞は構造要素および生物活性組成物に曝露されて、細胞の活性または活性レベルの変化に至る。細胞は、変化した(再教育されたまたは再プログラムされた)細胞の出現を誘導する展開シグナルに接触するかまたは曝露されて、細胞は装置から周辺組織または離れた標的位置へと遊走する。
【0036】
展開シグナルは、タンパク質、ペプチド、または核酸などの組成物である。例えば、装置の中に遊走する細胞は、それらが装置の中に入ると展開シグナルに遭遇するしかない。いくつかの場合において、展開シグナルは核酸分子、例えば装置からのおよび周辺組織への細胞の遊走を誘導するタンパク質をコードする配列を含有するプラスミドである。展開シグナルは、細胞が装置内のプラスミドに遭遇した場合に生じ、DNAは細胞にインターナライズされて(すなわち細胞はトランスフェクションを受けて)、細胞は、DNA分子によってコードされる遺伝子産物を産生する。いくつかの場合において、展開のシグナルを伝達する分子は装置の要素であり、動員組成物に対する細胞の曝露と比較して遅れて(例えば時間的または空間的に)装置から放出される。または、展開シグナルは、動員組成物の低減または非存在である。例えば、動員組成物は、細胞の装置内への遊走を誘導して、および動員組成物の濃度の低減または装置からの枯渇、消散、もしくは拡散によって、装置から細胞の出現が起こる。このようにして、個体のT細胞、B細胞、または樹状細胞(DC)などの免疫細胞は、装置へと動員されて、プライミングされ、活性化されて、抗原特異的標的に対する免疫応答を開始する。任意で、標的に対する抗原(その標的に対する免疫応答が望まれる)が、足場構造の中または足場構造の上に組み入れられる。顆粒球マクロファージ刺激因子(GM-CSF)などのサイトカインはまた、免疫活性化を増幅するためのおよび/またはプライミングした細胞のリンパ節への遊走を誘導するための装置の成分でもある。他の細胞特異的動員組成物を以下に記述する。
【0037】
装置は、インビボで細胞を動員して、これらの細胞を改変した後、体の別の部位へとその遊走を促進する。このアプローチは本明細書において樹状細胞および癌ワクチン開発の文脈において例示されるが、微生物病原体に対するワクチンなどの他のワクチンのみならず、細胞治療全般にとっても有用である。本明細書において記述される装置を用いて教育された細胞は、材料に直ちに近接するかまたはいくつかの遠隔部位の組織または臓器の再生を促進する。または、細胞は、組織(局所または遠隔部位)の破壊を促進するように教育される。方法はまた、疾患の予防にとって、例えば疾患の進行または加齢関連組織変化を停止または遅らせるために、組織構造および機能の、細胞に基づく維持を促進するために有用である。装置内での細胞の教育、「プログラミング」および「再プログラミング」によって、体内の任意の細胞の機能または活性が改変されて、多能性幹細胞となり、治療効果を発揮することができる。
【0038】
従来のおよびエクスビボDCに基づくワクチン接種戦略は、癌患者における不均一なDCネットワークによって媒介される免疫応答を、協調して持続することができないことから、これらのアプローチの臨床有効性は限定的である。本明細書において記述される装置および方法は、pDCの選択的動員および増大が癌抗原に対する免疫応答を劇的に改善して、これまでのワクチンアプローチと比較して腫瘍進行を低減させることから、独自の長所を有する。
【0039】
本発明の他の特色および長所は、その好ましい態様の以下の説明および特許請求の範囲から明らかであろう。本明細書において引用される全ての参考文献は参照により本明細書に組み入れられる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】感染症に対する免疫応答の図解である。図1は、細菌の侵入および細菌毒素が皮膚常在細胞に損傷を与えて、GM-CSFを含む炎症性サイトカインの産生および皮膚内皮の活性化を促進する機序を示す図解である。サイトカイン刺激は、白血球の浸出を誘導して、皮膚常在DC(ランゲルハンス細胞)および単球/プレDCを動員する。炎症部位に動員されたDCは、細菌と抗原分子およびTLR9活性化を刺激するCpGに富むDNAとを含む細菌産物に遭遇してこれらを摂取する。TLRライゲーションおよび炎症状態の結果として、DCは、急速に成熟して、そのMHC-抗原複合体、共刺激分子、およびCCR7の発現をアップレギュレートして、リンパ節へのホーミングを開始し、そこでDCは抗原特異的T細胞応答を開始しかつ伝播する。
【図2】図2Aは、CpGに富むオリゴヌクレオチド配列のPEI縮合の模式図である。陽性荷電アミン基を有するPEI多価陽イオンを陰性荷電リン酸基からなるCpG-ODNと電荷比(NH3+:PO4-)で混合すると、陽性荷電PEI-CpG-ODN縮合体が得られる。図2Bは、電荷比4、7および15でのCpG-ODN 1826およびそのPEI縮合体のゼータ電位(mV)を示す棒グラフである。四角は、平均値および標準偏差(n=4)を表す。図2Cは、電荷比4、7および15でのCpG-ODN 1826およびそのPEI縮合体の粒子サイズを示す棒グラフである。値は平均粒子サイズおよび標準偏差を表す(n=4)。
【図3−1】図3A〜Cは、JAWSII DCによるCpG-ODNのインビトロ取り込みを示す。図3A〜Bは、細胞の明視野画像およびTAMRA標識CpG-ODN(A)分子またはPEI-CpG-ODN縮合体(B)の取り込みを示すその対応する蛍光画像である。図3Cは、110時間に及ぶ裸の(-○-)およびPEI-CpG-ODN(-●-)縮合体の取り込みの定量化を示す棒グラフである。尺度のバー−20μm。C(n>細胞10個)における値は、平均値および標準偏差を表す。
【図3−2】図3Dは、PEI-CpG-ODN縮合体の取り込みの定量とJAWSII DC内でのその後の脱縮合とを示す折れ線グラフである。細胞におけるPEI-CpGODN縮合体の数(-■-)および非縮合CpG-ODNの量(-□-)を70時間にわたってモニターして定量した。D(n>細胞7個)における値は、平均値および標準偏差を表す。
【図4−1】(A)DC活性化の撮像。図4Aは、PEI(電荷比-7)と縮合したTAMRA標識CpG-ODN分子の取り込みを示す蛍光画像と相関する活性化DC形態の一連の明視野画像である。尺度のバー−20μm。
【図4−2】図4Bは、非刺激後(陰影をつけた線)、CpG-ODN(---)、およびPEI-CpG-ODN縮合体(−)後の活性化マーカーCD86、MHCII、およびCCR7に関して陽性の一連のJawsII DCの一連のFACSヒストグラムである。
【図4−3】図4Cは、非刺激、およびTNF-α/LPS、またはCpG-ODN、またはPEI-CpG-ODNによる刺激後の活性化マーカーCD86、MHCIIおよびCCR7に関して陽性のDCのパーセンテージを示す表データを示すチャートである。図4Dは、CCL19に向かうCpG-ODNおよびDC遊出を示す棒グラフである。300 ng/ml CCL19を添加した培地に向かうトランスウェルシステムの上部のウェルからのDC遊出に及ぼす、非刺激(■)、およびPEI(■)、またはCpG-ODN(■)、またはPEI-CpG-ODN(■)刺激の効果。遊走数を24時間で得た。CおよびDにおける値(n=4)は、平均値および標準偏差を表す。CpG-ODN活性化培地(5μg/ml)。*P<0.05、**P<0.01。
【図5A】0(□)、50(■)、および500 ng/ml GM-CSF(■)を添加した培地におけるPEI-CpG-ODN(5μg/ml)刺激後のMHCIIおよびCCR7発現に関して陽性のJawsII DCのパーセンテージを示す一連の棒グラフである。
【図5B】GM-CSFの存在下、CCL19に向かうCpG-ODNおよびDC遊出を示す折れ線グラフである。300 ng/ml CCL19を添加した培地に向かうトランスウェルシステムの上部のウェルからのDC遊出に及ぼす、非刺激(-■-)およびPEI(---)、またはCpG-ODN(-●-)、またはPEI-CpG-ODN(-●-)による刺激の効果。遊走数を24時間で得た。値は平均値および標準偏差(n=4)を表す。
【図6−1】図6Aは、インビトロでPBSにおいてインキュベートした時間に対するPLGマトリクスに保持されたPEI-CpG-ODN縮合体の画分を示す折れ線グラフである。
【図6−2】図6B〜6Cは、CpG-ODN負荷足場からのJAWS II DCの遊出を示す棒グラフである。(B)300 ng/ml CCL19を添加した培地に向かう、CpG-ODN 5、50、500μgを負荷した足場から遊走したDCの総数。(C)500 ng/ml GM-CSFの存在下、CpG-ODN 25μgを負荷した足場から300 ng/ml CCL19を添加した培地に向かって遊走したDCの総数。遊走数を48時間で得た。値は、平均値および標準偏差を表す(n=4または5)。
【図7A】PLGに基づく感染症模倣体は、インサイチューでDCを持続的にプログラムする。図7aは、PLGマトリクスに負荷された様々な用量のPEI-CpG-ODNおよびGM-CSFに応答した宿主DC動員(細胞数)およびDC活性化(MHCまたはCCR7を発現する%)の表データを示すチャートである。
【図7B】PLGに基づく感染症模倣体は、インサイチューでDCを持続的にプログラムする。マトリクスをC57/BL6Jマウスの背部に7日間埋め込んだ。図7Bは、C57/BL6Jマウスの背部に埋め込んだ後7日目でのPEI-ODN対照、PEI-CpG-ODN 10μg、GM-CSF 400および3000 ng、ならびにPEI-CpG-ODN 10μgと組み合わせてGM-CSG 400および3000 ngを負荷したマトリクスから単離されたCD11c(+)MHCII(+)およびCD11c(+)CCR7(+)宿主DCの数を示す棒グラフである。値は、平均値および標準偏差(n=3〜5)を表す。*P<0.05、**P<0.01。
【図8A】感染症模倣体は、インサイチューでプログラムされたDCを持続的に分散させる。図8aは、FITC着色ブランクマトリクス(-□-)、FITC着色GM-CSF負荷マトリクス(-■-)、ならびにFITC着色GM-CSFおよびCpG-ODNマトリクス(-■-)に常在後の時間の関数としての、鼠径リンパ節にホーミングしたFITC(+)DCの数を示す棒グラフである。GM-CSFの用量は、3000 ngであり、CPG-ODNの用量は10μgであった。Aにおける値は、平均値および標準偏差(n=4または5)を表す。*P<0.05、**P<0.01。
【図8B】感染症模倣体は、インサイチューでプログラムされたDCを持続的に分散させる。図8Bは、C57BL/6Jマウスから抽出された(対照)およびCpG-ODN 10μg+GM-CSF 3000 ngを組み入れたマトリクスの埋め込み後10日目に抽出された(感染症模倣体)鼠径リンパ節のデジタル写真である。
【図8C】感染症模倣体は、インサイチューでプログラムされたDCを持続的に分散させる。図8Cは、ブランクマトリクス(□)およびGM-CSF 3000 ng(■)またはCpG-ODN 10μg+GM-CSF 3000 ng(■)を組み入れたマトリクスの埋め込み後2および7日目でC57BL/6Jマウスから抽出された鼠径リンパ節から単離された総細胞数を示す棒グラフである。Cにおける値は、平均値および標準偏差(n=4または5)を表す。*P<0.05、**P<0.01。
【図8D】感染症模倣体は、インサイチューでプログラムされたDCを持続的に分散させる。図8Dは、ブランクマトリクス(□)およびGM-CSF 3000 ng(■)またはCpG-ODN 10μg+GM-CSF 3000 ng(■)を組み入れたマトリクスの埋め込み後2および7日目でC57BL/6Jマウスから抽出された鼠径リンパ節から単離されたCD11c+DC数を示す棒グラフである。Dにおける値は、平均値および標準偏差(n=4または5)を表す。*P<0.05、**P<0.01。
【図9】感染症模倣微小環境が強力な抗腫瘍免疫を付与することを示す棒グラフである。PLG癌ワクチンをマウスに埋め込んだ後の腫瘍発生までの時間。ブランクPLG足場(ブランク)、抗原単独(Lys)、抗原+GM-CSF 3000 ng(Lys+GMCSF 3000 ng)、抗原+PEI-CpG-ODN縮合体(Lys+CpG)、ならびに抗原、GM-CSF 3000 ngおよびPEI-CpG-ODNの組み合わせ(Lys+3000 ng+PEI-CpG-ODN)を負荷した足場の比較。動物をまた、比較のために、GM-CSFを産生するように遺伝子改変されている放射線照射B16-F10黒色腫細胞を用いた細胞に基づくワクチン(細胞ベース)を用いても免疫した。ワクチン接種後14日目に、C57BL/6JマウスにB16-F10黒色腫腫瘍細胞105個を投与して、腫瘍発生の開始に関してモニターした(n=9または10)。
【図10】感染症模倣体のワクチン接種効率はT細胞応答に依存する。図10Aは、腫瘍溶解物、GM-CSF 3000 ngおよびCpG-ODNの提示を適切に制御するPLG癌ワクチン、ならびにブランク(ブランク)足場対照をワクチン接種したマウスからの腫瘍切片の代表的な一連の光学顕微鏡写真である。腫瘍を発症したマウスから20〜25日目に外植された腫瘍組織へのCD4(+)およびCD8(+)T細胞浸潤を検出するために、切片を染色した。図10Bは、ワクチン接種動物のB16-F10黒色腫腫瘍へのT細胞浸潤を示す棒グラフである。腫瘍を、ブランクPLG足場(□)、またはB16-F10黒色腫腫瘍溶解物、GM-CSF 3000 ngおよびPEI-CpG-ODN 10μgを組み入れたPLG足場(■)によって処置したC57BL/6Jマウスから20〜25日目に外植した。T細胞浸潤をランダムな腫瘍切片(n=4、1 mm3)において検査した。尺度のバー−50μm。A、DおよびEにおける値は平均値および標準偏差(n=3または4)を表す。*P<0.05、**P<0.01。
【図11A】DC動員およびプログラミングのインビボ制御。図11Aは、23日間のPLGマトリクスからのGM-CSFの累積放出を示す折れ線グラフである。Aにおける値は、平均値および標準偏差を表す(n=4または5)。
【図11B】DC動員およびプログラミングのインビボ制御。図11Bは、14日後のC57BL/6Jマウスの背部における皮下嚢から外植されたPLG足場切片のH&E染色を示す写真である:ブランク足場およびGM-CSF(3000 ng)負荷足場。尺度のバーB−500μm。
【図11C】DC動員およびプログラミングのインビボ制御。図11cは、外植された足場から単離されて、DCマーカー、すなわちCD11cおよびCD86に関して染色された細胞の一連のFACSプロットである。細胞を、28日間埋め込んだブランクおよびGM-CSF(3000 ng)負荷足場から単離した。FACSプロットにおける数値は、双方のマーカーに関して陽性の細胞集団のパーセンテージを示す。
【図11D】DC動員およびプログラミングのインビボ制御。図11Dは、ブランク対照(ブランク)に対して標準化した、GM-CSF 1000、3000、および7000 ngの用量に応答した、埋め込み後14日目にPLG足場から単離されたCD11c(+)CD86(+)DCの画分の増加を示す棒グラフである。Dにおける値は、平均値および標準偏差を表す(n=4または5)、*P<0.05、**P<0.01。
【図11E】DC動員およびプログラミングのインビボ制御。図11Eは、埋め込み後の時間の関数として、GM-CSF 0(-)、3000(--○--)、および7000 ng(--●--)を組み入れたPLG足場の埋め込み部位でのGM-CSFのインビボ濃度プロファイルを示す折れ線グラフである。Eにおける値は、平均値および標準偏差を表す(n=4または5)。
【図11F】DC動員およびプログラミングのインビボ制御。図11Fは、C57BL/6Jマウスの背部への埋め込み後の時間の関数として、GM-CSF 0(□)、400(■)、3000 ng(■)、および7000 ng(網掛けの□)を負荷した足場から単離されたCD11c(+)CCR7(+)宿主DCのパーセンテージを示す棒グラフである。Fにおける値は、平均値および標準偏差を表す(n=4または5)、*P<0.05、**P<0.01。
【図12A】PLGマトリクスに浸潤しているDCに対するCpG-ODNと抗原の同時提示は、局所CD8+cDC数、IL-12産生、および総CD8(+)細胞数を増強する。ブランクマトリクス(ブランク)およびGM-CSF 3000 ng(GM)もしくはCpG-ODN 100μg(CpG)の用量単独、または併用(CpG+GM)に応答した、または腫瘍溶解物(GM+Ant、CpG+Ant、およびCpG+GM+Ant)を同時提示された、埋め込み後10日目での形質細胞様DCの数。Aにおける値は、平均値および標準偏差(n=4または5)を表す。*P<0.05、**P<0.01。
【図12B】PLGマトリクスに浸潤しているDCに対するCpG-ODNと抗原の同時提示は、局所CD8+cDC数、IL-12産生、および総CD8(+)細胞数を増強する。ブランクマトリクス(ブランク)およびGM-CSF 3000 ng(GM)もしくはCpG-ODN 100μg(CpG)の用量単独、または併用(CpG+GM)に応答した、または腫瘍溶解物(GM+Ant、CpG+Ant、およびCpG+GM+Ant)を同時提示された、埋め込み後10日目でのCD11c(+)CD11b(+)cDCの数。Bにおける値は、平均値および標準偏差(n=4または5)を表す。*P<0.05、**P<0.01。
【図12C】PLGマトリクスに浸潤しているDCに対するCpG-ODNと抗原の同時提示は、局所CD8+cDC数、IL-12産生、および総CD8(+)細胞数を増強する。ブランクマトリクス(ブランク)およびGM-CSF 3000 ng(GM)もしくはCpG-ODN 100μg(CpG)の用量単独、または併用(CpG+GM)に応答した、または腫瘍溶解物(GM+Ant、CpG+Ant、およびCpG+GM+Ant)を同時提示された、埋め込み後10日目でのCD11c(+)CD8(+)cDCの数。Cにおける値は、平均値および標準偏差(n=4または5)を表す。*P<0.05、**P<0.01。
【図12D】PLGマトリクスに浸潤しているDCに対するCpG-ODNと抗原の同時提示は、局所CD8+cDC数、IL-12産生、および総CD8(+)細胞数を増強する。ブランクマトリクス(ブランク)およびGM-CSF 3000 ng(GM)もしくはCpG-ODN 100μg(CpG)単独用量、もしくは併用(CpG+GM)に応答した、または腫瘍溶解物(GM+Ant、CpG+Ant、およびCpG+GM+Ant)と同時提示された、埋め込み後10日目でのIFN-αのインビボ濃度。Dにおける値は、平均値および標準偏差(n=4または5)を表す。*P<0.05、**P<0.01。
【図12E】PLGマトリクスに浸潤しているDCに対するCpG-ODNと抗原の同時提示は、局所CD8+cDC数、IL-12産生、および総CD8(+)細胞数を増強する。ブランクマトリクス(ブランク)およびGM-CSF 3000 ng(GM)もしくはCpG-ODN 100μg(CpG)単独用量、もしくは併用(CpG+GM)に応答した、または腫瘍溶解物(GM+Ant、CpG+Ant、およびCpG+GM+Ant)と同時提示された、埋め込み後10日目でのIFN-γのインビボ濃度。Eにおける値は、平均値および標準偏差(n=4または5)を表す。*P<0.05、**P<0.01。
【図12F】PLGマトリクスに浸潤しているDCに対するCpG-ODNと抗原の同時提示は、局所CD8+cDC数、IL-12産生、および総CD8(+)細胞数を増強する。ブランクマトリクス(ブランク)およびGM-CSF 3000 ng(GM)もしくはCpG-ODN 100μg(CpG)単独用量、もしくは併用(CpG+GM)に応答した、または腫瘍溶解物(GM+Ant、CpG+Ant、およびCpG+GM+Ant)と同時提示された、埋め込み後10日目でのIL-12のインビボ濃度。Fにおける値は、平均値および標準偏差(n=4または5)を表す。*P<0.05、**P<0.01。
【図12G】PLGマトリクスに浸潤しているDCに対するCpG-ODNと抗原の同時提示は、局所CD8+cDC数、IL-12産生、および総CD8(+)細胞数を増強する。ブランクPLGマトリクス(−)ならびにGM-CSF 3000 ngおよびCpG-ODN 100μg単独(---)を負荷したマトリクス、または腫瘍抗原を負荷したマトリクス(陰影をつけた線)に浸潤しているCD8(+)細胞のFACSヒストグラム。
【図13−1】CpG-ODN提示および形質細胞様DCの濃縮によって調節される腫瘍防御。B16-F10黒色腫腫瘍投与の14日前にPLGワクチンをワクチン接種したマウスの生存時間。(図13A)は、腫瘍溶解物およびCpG-ODN 1、10、50、または100μgを負荷したPLGマトリクスをワクチン接種したマウスにおける生存期間の比較を示す。図13Bは、腫瘍溶解物、GM-CSF 3000 ng、およびCpG-ODN 1、10、50、または100μgを負荷したPLGマトリクスをワクチン接種したマウスにおける生存時間の比較を示す。
【図13−2】CpG-ODN提示および形質細胞様DCの濃縮によって調節される腫瘍防御。10日目でのPLGワクチン部位での(図13C)CD11c(+)PDCA-1(+) DC、(図13D)CD11c(+)CD11b(+)DC、および(図13E)CD11c(+)CD8(+)cDCの数の相関、ならびに100日目でのB16-F10黒色腫腫瘍投与で生き残った動物のパーセンテージ。
【図13−3】CpG-ODN提示および形質細胞様DCの濃縮によって調節される腫瘍防御。図13Fは、10日目でPLGワクチン部位で生成されたCD11c(+)CD11b(+)cDC、CD11c(+)PDCA-1(+)pDC、およびCD11c(+)CD8(+)cDCからなる総DC集団の画分を示す。生存率(%)をB16-F10黒色腫細胞の投与後100日目で得る。
【図14】確立された腫瘍に対するPLGワクチン有効性を示す折れ線グラフである。図14Aは、ブランクPLG足場、およびPLGワクチン(GM-CSF 3μg+CpG-ODN 100μg+腫瘍溶解物)で処置したC57BL/6マウスにおける生存時間の比較を示す。図14Bは、ブランクPLG足場およびPLGワクチン(GM-CSF 3μg+CpG-ODN 100μg+腫瘍溶解物)によって処置したC57BL/6マウスにおける腫瘍の成長の比較を示す。マウスに0日目にB16-F10黒色腫腫瘍細胞5×105個を接種して、腫瘍を7日間成長させて、マウスにブランクPLGマトリクスまたはPLGワクチンのいずれかを埋め込んだ。腫瘍サイズの代表値を最小の直径および最大の直径の積の半分として表記した。
【発明を実施するための形態】
【0041】
発明の詳細な説明
癌ワクチンは典型的に、研究室における面倒で費用のかかる細胞の操作に依存し、その後の細胞移植によって、不良なリンパ節ホーミングおよび限られた効力に至る。本発明は、体内における免疫細胞の輸送および活性化を直接制御するために、細菌感染症の重要な局面を模倣する材料を用いることによって、これらの問題を解決する。ポリマーは、最初に宿主樹状細胞(DC)を動員して収容するようにサイトカインを放出し、その後常在DCを活性化してリンパ節へのそのホーミングを劇的に増強するように癌抗原および危険シグナルを提示するよう、設計した。そうでなければ癌のために25日以内に死亡する動物において90%の生存が達成されたことから、これらの材料によって特異的および防御的抗腫瘍免疫が生じた。これらの材料は、体内における多様な細胞タイプの輸送をプログラムして制御するために、癌および他のワクチンにおいて有用である。
【0042】
ポリマーシステムは、薬物送達装置として役立つのみならず、それに対してDCが動員され、そこにDCが常在する物理的な抗原提示構造として役立つように設計され、常在のあいだにDCは材料(ポリ[ラクチド-コ-グリコリド])および生物活性分子(GM-CSFおよびCpG-ODN)を用いて活性化される。これらの生物活性分子は優れた安全性プロファイルを有する。材料システムは、有効な癌ワクチンとして役立ち、既存の細胞治療に固有の時間、出費、および調節負荷を解消して、かつ多数回の全身注射、および高い総薬物負荷の必要性を低減または消失させる。本明細書において記述される装置は、インサイチューでDCをプログラムするために感染症模倣材料を利用する。
【0043】
ワクチン接種のための材料システムを適切に設計するために、GM-CSFがインビトロでDC動員、活性化および遊出に強い影響を与えることができることの定量的理解を発展させた。GM-CSFはDC動員および増殖を用量依存的に増強した。しかし、高濃度(>100 ng/ml)のGM-CSFは、リンパ節由来化学誘引物質(CCL19)に向かうDCの遊走を阻害した。免疫組織化学染色により、高濃度のGM-CSF(500 ng/ml)はまた、CCL19受容体CCR7およびMHCIIのDC発現をダウンレギュレートすることが判明した。これらの結果は、インビボでDCを動員およびプログラムするためにGM-CSF曝露に対する制御が必要であることを示した。GM-CSF単独を双方の目的のために用いる場合、その局所濃度は、材料に捕捉されるようになったDCを解放するために経時的に減少するように設計される。または、局所環境における危険シグナル(例えば、CpG-ODN)の提供を用いて、それらが感染症模倣部位に常在したらGM-CSF阻害からDCを解放するようにする。
【0044】
この理解に基づいて、インビボで定義された空間的時間的様式で、GM-CSF、危険シグナル、および癌抗原を提示するように、ならびに動員DCがプログラムされる際の居所として役立つように、マクロ孔のポリ-ラクチド-コ-グリコリド(PLG)マトリクスを設計した。GM-CSFを高圧CO2発泡プロセスを用いてPLG足場に封入した(54%効率)。これらのマトリクスは、最初の5日以内にその生物活性GM-CSF負荷のおよそ60%を放出し、その後生物活性GM-CSFの遅い持続的な放出が次の10日間にわたって起こった。この放出プロファイルは、常在DCを効率よく動員するように周辺組織の中へと因子が拡散することを可能にする。
【0045】
炎症メディエータ
樹状細胞(DC)の増殖、遊走、および成熟は、炎症性メディエータに対して感受性であり、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)は、特に癌抗原に対する免疫応答の強力な刺激物質として同定されている。GM-CSFはまた、これらの抗原提示免疫細胞を動員およびプログラムする能力も有する。加えて、細菌DNAにおいて見いだされるシトシン-グアノシン(CpG)オリゴヌクレオチド(CpG-ODN)配列は、DC活性化を刺激して、特異的T細胞応答に至る強力な免疫モジュレーターである。外因性のGM-CSFおよびCpG-ODNの提示による感染症模倣微小環境の作製は、DC遊走の数および時期を正確に制御して抗原特異的免疫応答をモジュレートするための道を提供する。
【0046】
脊椎動物の免疫系は、抗原特異的応答の生成および感染症の一掃に長けた、病原体を認識するための様々な機序を使用する。免疫は、抗原提示細胞(APC)によって、特に、抗原を捕捉して、刺激、すなわち細菌DNAにおけるCpGジヌクレオチド配列などの侵入病原体の独自の「危険シグナル」によって活性化される樹状細胞(DC)によって、制御される(その各々が参照により本明細書に組み入れられる、Banchereau J, and Steinman RM. Nature. 392, 245-252. (1998);Klinman DM. Nat. Rev. Immunol. 4, 249-58 (2004))。
【0047】
しかし、自己組織に由来する癌様細胞は、DC成熟にシグナルを伝達するために必要な危険シグナルを欠いており、代わりに細胞が免疫から逃避することを可能にする免疫抑制性の微小環境を促進する。感染の重要な要素は、炎症性サイトカインおよび危険シグナルである(図1)。ポリマー材料システムは、ワクチンとして有用なインサイチューの感染症模倣微小環境を提供するために必要な空間的時間的様式で、これらの要因を提示するのに理想的である。これらの感染症模倣体は、宿主DCの持続的プログラミングを提供し、インサイチューでの効率的なDC活性化および分散を提供する。これらの感染症模倣装置は、黒色腫癌ワクチンを含む多数のワクチン応用にとって必要である。
【0048】
多くの感染症において、炎症性サイトカインおよび危険シグナルは、免疫認識および病原体の一掃を媒介する特異的DC応答を刺激する(図1)。例えば、細菌の侵入および毒素の放出の際に、線維芽細胞、ケラチノサイト、およびメラノサイトなどの皮膚細胞が損傷を受けて、それによってランゲルハンスDC(皮膚)およびDC前駆体(単球;血液)(Hamilton J. Trends in Immunol. 23, 403-408. (2002);Hamilton J., and Anderson G. Growth Factors. 22(4), 225- 231. (2004);Bowne W.B., et al. Cytokines Cell Mol Ther. 5(4), 217-25. (1999).;Dranoff, G. Nat. Rev. Cancer 4, 11-22 (2004);各々が参照により本明細書に組み入れられる)を動員するように作用するGM-CSF(Hamilton J. Trends in Immunol. 23, 403-408. (2002);Hamilton J., and Anderson G. Growth Factors. 22(4), 225-231. (2004);その各々が参照により本明細書に組み入れられる)などの炎症性サイトカインが放出される。DCは、感染部位に達すると、分化し始め、炎症に応答して貪食能を増加させて(Mellman I., and Steinman R.M. Cell. 106, 255-258. (2001)、参照により本明細書に組み入れられる)、細菌またはその産物を摂取したDCは抗原を処理し始めて、細菌DNAにおけるCpGジヌクレオチド配列によって刺激されるエンドソームTLR9シグナル伝達によって、DC成熟は進行する(Krieg A. M., Hartmann G., and Weiner G. J. CpG DNA: A potent signal for growth, activation, and maturation of human dendritic cells. Proc Natl Acad Sci U S A. 16, 9305-9310(1999);参照により本明細書に組み入れられる)。次に、成熟DCは、リンパ節にホーミングして、そこでそれらは感染症を一掃するために抗原特異的T細胞応答をプライミングする。
【0049】
CpG-ODNは、CCR7、CD80/86共刺激分子、およびMHC抗原複合体のDC発現をアップレギュレートする強力な「危険シグナル」である。重要なことに、TLR9シグナル伝達は、サイトカイン産生(例えば、1型IFN)および抗原のMHCI分子への交差提示によって、Th1様の細胞傷害性T細胞応答を促進するようにDCを誘導する。これらのシグナルの提示は、癌様細胞と有効に戦う免疫応答を促進するために必要な危険シグナルを提供する。
【0050】
異なるクラスのCPG-ODNは、ODNの特定の構造および配列に応じて異なる免疫応答を促進する。本発明において利用されるODNであるCpG-ODN 1826は、黒色腫を含む様々なマウスワクチン接種モデルにおいて試験されて成功を収めている。CpG-ODN 1826は、単独で、またはペプチドワクチンおよび全細胞ワクチンのためのアジュバントとして用いられた場合に有益な効果を示している。その上、ODN 1826はDC成熟およびサイトカイン産生を直接促進することが示されている。この特定のCpG ODN配列はまた、Th1細胞およびNK細胞を間接的に活性化して、このように、適応細胞免疫応答を増強する。
【0051】
送達およびTLR9へのその局在化を増強するためにDCへのCpGインターナリゼーションを促進するベクターシステムが開発されている。アミンに富む多価陽イオンであるポリエチルイミン(PEI)は、DNAリン酸基との会合によって、プラスミドDNAを縮合させるために広く用いられており、それによって細胞膜会合および細胞へのDNA取り込みを容易にする小さい陽性荷電縮合体が得られる(Godbey W.T., Wu K.K., and Mikos, A.G. J. of Biomed Mater Res, 1999, 45, 268-275;Godbey W.T., Wu K.K., and Mikos, A.G. Proc Natl Acad Sci U S A. 96(9),5177-81. (1999);その各々が参照により本明細書に組み入れられる)。その結果、PEIは、遺伝子のトランスフェクションを増強するために、およびインサイチューで宿主細胞における長期間の遺伝子発現を促進するPEI-DNA負荷PLGマトリクスを組み立てるために、非ウイルスベクターとして利用されている(Huang YC, Riddle F, Rice KG, and Mooney DJ. Hum Gene Ther. 5, 609-17. (2005)、参照により本明細書に組み入れられる)。ゆえに、CpG-ODNをPEI分子とともに縮合して、アミン−ホスフェート電荷比に依存したこれらのPEI-CpG-ODN縮合体のサイズおよび電荷を特徴付けした。CpG-ODNのDCインターナリゼーションをPEI縮合体が増強できることを査定して、DC内のPEI-CpG-ODNのその後の脱縮合、およびDC活性化のその促進をインビトロで分析した。PEI-CpG-ODNが第3章において記述されるGM-CSFに基づくシステムのワクチン接種効果に対して改善能を有するか否かを決定するために、GM-CSFの存在下でのDC成熟および可動化に及ぼすその刺激効果も同様に検査した。
【0052】
インサイチューで感染症を適切に模倣して細胞をプログラムするために、PLGシステムは、炎症性サイトカイン(例えば、GM-CSF)を放出する薬物送達装置として役立つのみならず、DCが動員されて常在し、そのあいだにそれらが危険シグナル(例えば、CpG-ODN)によって活性化される物理的構造として役立つように設計された。DC動員および多孔性PLGマトリクス内でのDC常在を制御できることは、インサイチューでGM-CSFの送達に対する時間的制御を用いることによって達成され、それによってGM-CSFレベルがインサイチューで鎮静するように設計された場合に限って、プログラムされたDCのバッチが分散されることになる。このシステムは、プログラムされたDCの6%をリンパ節に分散して、癌ワクチンとして適用した場合にマウスの23%において防御的抗腫瘍免疫を誘導した。細胞のプログラミングおよび分散効率は、GM-CSF阻害からDCを持続的に解放して、インサイチューで高いGM-CSFレベルの存在下でのDC成熟および分散を促進する、圧倒的な二次シグナル(CpG-ODN)を用いて改善される。具体的に、PLGマトリクスは、外因性のGM-CSFと共に合成CpG-ODNを局所提示して、GM-CSFによって動員されたDCがインサイチューでCpG-ODNによって刺激されるように組み立てられた。
【0053】
樹状細胞
樹状細胞(DC)は、哺乳動物免疫系内の免疫細胞であり、造血骨髄前駆細胞に由来する。より具体的には、樹状細胞は、リンパ(または形質細胞)または骨髄前駆細胞からそれぞれ生じる、リンパ系(または形質細胞様)樹状細胞(pDC)および骨髄系樹状細胞(mDC)の小分類に分類されうる。前駆体細胞のタイプによらず、前駆体細胞から未成熟な樹状細胞が産まれる。未成熟樹状細胞は、高いエンドサイトーシス活性と低いT細胞活性化能とを特徴とする。このように、未成熟樹状細胞は構成的に、そのすぐ隣にある病原体の周囲の環境を採取する。例示的な病原体には、ウイルスまたは細菌が含まれるがこれらに限定されるわけではない。採取は、toll様受容体(TLR)などのパターン認識受容体(PRR)によって達成される。樹状細胞は、toll様受容体などのパターン認識受容体によって病原体を認識すると、活性化して成熟する。
【0054】
成熟樹状細胞は、病原体を貪食してそれらを切断するのみならず、それらのタンパク質を分解して、MHC(腫瘍組織適合性抗原複合体)分子(クラスI、IIおよびIII)を用いてその細胞表面上に抗原と呼ばれるこれらのタンパク質の小片を提示する。成熟樹状細胞はまた、T細胞活性化の共受容体として役立つ細胞表面受容体をアップレギュレートする。例示的な共受容体には、CD80、CD86、およびCD40が含まれるがこれらに限定されるわけではない。同時に、成熟樹状細胞は、CCR7などの化学走化性受容体をアップレギュレートして、それによって細胞は、血流またはリンパ系を通じてそれぞれ脾臓またはリンパ節へと遊走することが可能になる。
【0055】
樹状細胞は、皮膚などの外部環境に接触する外部組織に存在する(皮膚に常在する樹状細胞はまた、ランゲルハンス細胞とも呼ばれる)。または、樹状細胞は、鼻、肺、胃、および腸管の内層などの外部環境に接触する内部組織に存在する。最後に、未成熟樹状細胞は血流に常在する。活性化されると、これらの組織の全てからの樹状細胞がリンパ様組織へと遊走して、そこでそれらは抗原を提示して、T細胞およびB細胞と相互作用して免疫応答を開始する。本発明に関して特に重要な1つのシグナル伝達システムは、高濃度の免疫細胞に向かって遊走する成熟樹状細胞を誘引するために、樹状細胞表面上に発現されるケモカイン受容体CCR7およびリンパ節構造によって分泌されるケモカイン受容体リガンドCCL19を伴う。成熟樹状細胞との接触によって活性化される例示的な免疫細胞には、ヘルパーT細胞、キラーT細胞、およびB細胞が含まれるがこれらに限定されるわけではない。マクロファージおよびBリンパ球を含む免疫系における多数の細胞タイプが抗原を提示するが、樹状細胞は、全ての抗原提示細胞の中でも最も強力な活性化物質である。
【0056】
樹状細胞は、細胞体から伸長する多数の樹状突起を含む特徴的な細胞の形状からその名称を得た。この細胞形状の機能上の利点は、細胞の体積と比較して有意に増加した細胞表面および周囲に対する接触領域である。未成熟の樹状細胞は時に特徴的な樹状突起形成を欠損し、ベール細胞と呼ばれる。ベール細胞は、樹状突起よりむしろ大きい細胞質ベールを保有する。
【0057】
Toll様受容体(TLR)
TLRは、病原体関連分子パターン(PAMP)と呼ばれる構造的に保存された分子を認識する1回膜貫通ドメインの非触媒性受容体のクラスである。PAMPは、微生物上に存在して、宿主分子とは識別される。TLRは全ての脊椎動物に存在する。TLR 13個(連続的にTLR 1〜13と呼ばれる)がヒトおよびマウスにおいて同定されている。ヒトはTLR 1〜10を含む。
【0058】
TLRおよびインターロイキン-1(IL-1)受容体は、その全てのメンバーがTIRドメインを共有する(Toll-IL-1受容体)受容体スーパーファミリーを含む。TIRドメインは、3つの独自の機能を有する3つの変種に存在する。サブグループ1のTIRドメインは、マクロファージ、単球、および樹状細胞によって産生されるインターロイキンに関する受容体に存在する。サブグループ2のTIRドメインは、微生物起源の分子に直接または間接的に結合する古典的なTLRに存在する。サブグループ3のTIRドメインは、サブグループ1のTIRドメインを含むタンパク質とサブグループ2のTIRドメインを含むタンパク質とのあいだのシグナル伝達を媒介する細胞質ゾルアダプタータンパク質に存在する。
【0059】
TLRリガンドは、病原体または細胞ストレスなどの宿主生存に対する脅威に常に関連して、それらに対して非常に特異的である分子を含む。TLRリガンドは病原体に対して非常に特異的であるが、宿主に対しては特異的ではない。例示的な病原性分子には、リポ多糖(LPS)、リポタンパク質、リポアラビノマンナン、フラゲリン、二本鎖RNA、およびDNAの非メチル化CpG島が含まれるがこれらに限定されるわけではない。
【0060】
本発明の1つの好ましい態様において、Toll様受容体9(TLR9)は、細菌DNAにおける特異的非メチル化CpG含有配列、または樹状細胞のエンドソーム区画において見いだされる合成オリゴヌクレオチド(ODN)によって活性化される。CpG部位のメチル化状態は、細菌DNAと哺乳動物DNAのあいだのみ成らず、正常組織と癌様組織のあいだにおいて決定的な差異である。1つまたは複数のCpGモチーフを含む非メチル化ODNは、細菌DNAの効果を模倣する。またはもしくは加えて、1つまたは複数のCpGモチーフを含む非メチル化ODNは、悪性腫瘍細胞内に存在する腫瘍遺伝子において生じる。
【0061】
TLR-9受容体の1つまたは複数の配列は、本発明の1つまたは複数のCpG-ODN配列を認識する。本発明に包含されるTLR-9受容体は、以下の配列によって記述される。
【0062】
ヒトTLR-9イソ型Aは、以下のmRNA配列(NCBIアクセッション番号NM_017442およびSEQ ID NO:1;本明細書において提示される全てのmRNA配列の開始コドンを太字で大文字で示す)によってコードされる。
【0063】
ヒトTLR-9イソ型Aは、以下のアミノ酸配列(NCBIアクセッション番号NP_059138およびSEQ ID NO:2)によってコードされる。
【0064】
顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)
顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)は、マクロファージ、T細胞、肥満細胞、内皮細胞、および線維芽細胞によって分泌されるタンパク質である。具体的にGM-CSFは白血球増殖因子として機能するサイトカインである。GM-CSFは幹細胞を刺激して顆粒球および単球を産生する。単球は血流に存在して、組織へと遊走し、その後マクロファージへと成熟する。
【0065】
本明細書において記述される足場装置は、宿主DCを装置に誘引するためにGM-CSFポリペプチドを含み、放出する。企図されるGM-CSFポリペプチドは、内因性の起源から単離されるか、またはインビボもしくはインビトロで合成される。内因性のGM-CSFポリペプチドは、健康なヒト組織から単離される。合成GM-CSFポリペプチドは、鋳型DNAを用いて宿主生物または細胞、例えば哺乳動物または培養ヒト細胞株のトランスフェクションまたは形質転換を行った後にインビボで合成される。または、合成GM-CSFポリペプチドは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)または他の当技術分野において認識される方法によってインビトロで合成される(Sambrook, J., Fritsch, E.F., and Maniatis, T., Molecular Cloning: A Laboratory Manual. Cold Spring Harbor Laboratory Press, NY, Vol. 1, 2, 3 (1989)、参照により本明細書に組み入れられる)。
【0066】
GM-CSFポリペプチドは、インビボでタンパク質安定性を増加するように改変される。または、GM-CSFポリペプチドは、ある程度免疫原性であるように操作される。内因性の成熟ヒトGM-CSFポリペプチドは、アミノ酸残基23位(ロイシン)、27位(アスパラギン)、および39位(グルタミン酸)でグリコシル化されると報告されている(米国特許第5,073,627号を参照されたい)。本発明のGM-CSFポリペプチドは、グリコシル化状態に関してこれらのアミノ酸残基の1つまたは複数で改変される。
【0067】
GM-CSFポリペプチドは組換え型である。または、GM-CSFポリペプチドは、哺乳動物GM-CSFポリペプチドのヒト化誘導体である。GM-CSFポリペプチドが誘導される例示的な哺乳動物種には、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、フェレット、ネコ、イヌ、サル、または霊長類が含まれるがこれらに限定されるわけではない。好ましい態様において、GM-CSFは、組換え型ヒトタンパク質(PeproTech、カタログ番号300-03)である。または、GM-CSFは組換え型ハツカネズミ(マウス)タンパク質(PeproTech、カタログ番号315-03)である。最後にGM-CSFは組換え型マウスタンパク質のヒト化誘導体である。
【0068】
ヒト組換え型GM-CSF(PeproTech、カタログ番号300-03)は、以下のポリペプチド配列(SEQ ID NO:3)によってコードされる。
【0069】
マウス組換え型GM-CSF(PeproTech、カタログ番号315-03)は、以下のポリペプチド配列(SEQ ID NO:7)によってコードされる。
【0070】
ヒト内因性のGM-CSFは、以下のmRNA配列(NCBIアクセッション番号NM_000758およびSEQ ID NO:8)によってコードされる。
【0071】
ヒト内因性GM-CSFは、以下のアミノ酸配列(NCBIアクセッション番号NP_000749.2およびSEQ ID NO:9)によってコードされる。
【0072】
シトシン-グアノシン(CpG)オリゴヌクレオチド(CpG-ODN)配列
CpG部位は、その長さに沿った直線状の塩基配列においてシステインヌクレオチドがグアニンヌクレオチドの次に出現する(「p」はそれらのあいだのリン酸基連結を表し、これは、シトシン-グアニン相補的塩基対形成とは区別される)デオキシリボ核酸(DNA)の領域である。CpG部位は、DNAメチル化において中心的役割を果たし、これは遺伝子発現をサイレンシングするために細胞が用いるいくつかの内因性の機序の1つである。プロモーター要素内のCpG部位のメチル化によって、遺伝子のサイレンシングが起こりうる。癌の場合、腫瘍抑制遺伝子はしばしばサイレンシングされ、一方で、腫瘍遺伝子または癌誘導遺伝子が発現されることは公知である。重要なことに、腫瘍抑制遺伝子(癌形成を防止する)のプロモーター領域におけるCpG部位は、メチル化されることが示されているが、腫瘍遺伝子のプロモーター領域のCpG部位は、一定の癌において低メチル化されているかまたはメチル化されていない。TLR-9受容体は、DNAにおける非メチル化CpG部位に結合する。
【0073】
本発明は、CpGジヌクレオチドおよびオリゴヌクレオチドを含む。企図されるCpGオリゴヌクレオチドは、内因性の起源から単離されるか、またはインビボもしくはインビトロで合成される。内因性のCpGオリゴヌクレオチドの例示的な起源には、微生物、細菌、真菌、原虫、ウイルス、カビ、または寄生虫が含まれるがこれらに限定されるわけではない。または、内因性のCpGオリゴヌクレオチドは、哺乳動物の良性または悪性新生物腫瘍から単離される。合成CpGオリゴヌクレオチドは、鋳型DNAの宿主生物へのトランスフェクションまたは形質転換後にインビボで合成される。または合成CpGオリゴヌクレオチドは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)または他の当技術分野において認識される方法によってインビトロで合成される(Sambrook, J., Fritsch, E.F., and Maniatis, T., Molecular Cloning: A Laboratory Manual. Cold Spring Harbor Laboratory Press, NY, Vol. 1, 2, 3 (1989)、参照により本明細書に組み入れられる)。
【0074】
CpGオリゴヌクレオチドは、樹状細胞による細胞取り込みのために提示される。1つの態様において、裸のCpGオリゴヌクレオチドが用いられる。「裸の」という用語は、追加の置換基を含まない、単離された内因性または合成ポリヌクレオチド(またはオリゴヌクレオチド)を記述するために用いられる。別の態様において、CpGオリゴヌクレオチドは、細胞取り込みの効率を増加させるために、1つまたは複数の化合物に結合している。またはもしくは加えて、CpGオリゴヌクレオチドは、足場および/または樹状細胞内のオリゴヌクレオチドの安定性を増加させるために1つまたは複数の化合物に結合している。
【0075】
CpGオリゴヌクレオチドは、細胞取り込みの前に縮合される。1つの好ましい態様において、CpGオリゴヌクレオチドは、樹状細胞への細胞取り込み効率を増加させる陽イオンポリマーであるポリエチルイミン(PEI)を用いて縮合される。
【0076】
本発明のCpGオリゴヌクレオチドは、多数のクラスに分けられうる。例えば、本発明の組成物、方法および装置に包含される例示的なCpG-ODNは、刺激性、中性(neutral)、または抑制性である。本明細書において用いられる「刺激性」という用語は、TLR9を活性化するクラスのCpG-ODN配列を記述することを意味する。本明細書において「中性」という用語は、TLR9を活性化しないクラスのCpG-ODN配列を記述することを意味する。本明細書において用いられる「抑制性」という用語は、TLR9を阻害するクラスのCpG-ODN配列を記述することを意味する。「TLR9を活性化する」という用語は、それによってTLR9が細胞内シグナル伝達を開始するプロセスを記述する。
【0077】
刺激性のCpG-ODNは、その免疫刺激活性が異なるさらに3つのタイプ、A型、B型、およびC型に分けられうる。A型刺激性CpG-ODNは、ホスホジエステル中心CpG含有回文モチーフおよびホスホロチオエート3'ポリ-Gストリングを特徴とする。TLR9の活性化後、これらのCpG ODNは、形質細胞様樹状細胞(pDC)からの高いIFN-α産生を誘導する。A型CpG ODNは、TLR9-依存的NF-κBシグナル伝達を弱く刺激する。
【0078】
B型刺激性CpG ODNは、1つまたは複数のCpGジヌクレオチドを有する完全なホスホロチオエート骨格を含有する。TLR9活性化後、これらのCpG-ODNはB細胞を強く活性化する。A型CpG-ODNとは対照的にB型CpG-ODNは、IFN-α分泌を弱く刺激する。
【0079】
C型刺激性CpG ODNは、A型およびB型の特色を含む。C型CpG-ODNは、完全なホスホロチオエート骨格とCpG含有回文モチーフとを含有する。A型CpG ODNと同様に、C型CpG ODNは、pDCからの強いIFN-α産生を誘導する。B型CpG ODNと同様に、C型CpG ODNは、強いB細胞刺激を誘導する。
【0080】
例示的な刺激性CpG ODNは、ODN 1585、ODN 1668、ODN 1826、ODN 2006、ODN 2006-G5、ODN 2216、ODN 2336、ODN 2395、ODN M362(全てInvivoGen)を含むが、これらに限定されるわけではない。本発明はまた、先のCpG ODNの任意のヒト化バージョンを包含する。1つの好ましい態様において、本発明の組成物、方法、および装置は、ODN 1826(その配列は5'から3'方向へ
であり、CpG要素を太字で示す、SEQ ID NO:10)を含む。
【0081】
TLR9を刺激しない中性の、または対照のCpG ODNが、本発明に包含される。これらのODNは、その刺激相対物と同じ配列を含むが、CpGジヌクレオチドの代わりにGpCジヌクレオチドを含有する。
【0082】
本発明に包含される例示的な中性または対照のCpG ODNは、ODN 1585対照、ODN 1668対照、ODN 1826対照、ODN 2006対照、ODN 2216対照、ODN 2336対照、ODN 2395対照、ODN M362対照(全てInvivoGen)を含むがこれらに限定されるわけではない。本発明はまた、先のCpG ODNの任意のヒト化バージョンを包含する。
【0083】
TLR9を阻害する抑制性CpG ODNは、本発明に包含される。例示的な強力な阻害性配列は、哺乳動物テロメアにおいて見いだされる (TTAGGG)4(ODN TTAGGG、InvivoGen、SEQ ID NO: 11)、および3塩基の交換によってマウス刺激性CpG ODNに由来するODN 2088(InvivoGen)である。抑制性ODNは、細胞結合および細胞取り込みに影響を及ぼすことなくエンドソーム小胞におけるTLR9とCpG ODNの同時局在を破壊する。本発明に包含される抑制性のCpG ODNは、刺激性CpG ODNの作用を微調節する、減弱させる、逆転させる、または妨害するために用いられる。またはもしくは加えて、抑制性のCpG ODNを含む本発明の組成物、方法、または装置は、自己免疫状態を処置するために、または移植手法後の免疫応答を防止するために用いられる。
【0084】
癌抗原
本発明の組成物、方法、および装置は、そのような装置が投与された被験体にワクチン接種を行うためのおよび/または被験体に対して防御免疫を提供するための手段を有する癌抗原を含む。癌抗原は、単独でまたはGM-CSF、CpG-ODN配列、もしくは免疫モジュレーターと組み合わせて用いられる。その上、癌抗原は、GM-CSF、CpG-ODN配列、または免疫モジュレーターと同時にまたは連続的に用いられる。
【0085】
本発明の組成物、方法、および装置に包含される例示的な癌抗原には、生検から抽出された腫瘍溶解物、放射線照射腫瘍細胞、MAGEシリーズ抗原(MAGE-1は一例である)、MART-1/黒色腫、チロシナーゼ、ガングリオシド、gp100、GD-2、O-アセチル化GD-3、GM-2、MUC-1、Sos1、プロテインキナーゼC-結合タンパク質、逆転写酵素タンパク質、AKAPタンパク質、VRK1、KIAA1735、T7-1、T11-3、T11-9、ヒト(Homo Sapiens)テロメラーゼ酵素(hTRT)、サイトケラチン-19(CYFRA21-1)、扁平上皮癌抗原1(SCCA-1)、(プロテインT4-A)、扁平上皮癌抗原2(SCCA-2)、卵巣癌抗原CA125(1A1-3B)(KIAA0049)、MUCIN 1(腫瘍関連ムチン)、(癌腫関連ムチン)、(多形上皮ムチン)、(PEM)、(PEMT)、(エピシアリン(EPISIALIN))、(腫瘍関連上皮膜抗原)、(EMA)、(H23AG)、(落花生反応性尿中ムチン)、(PUM)、(乳癌関連抗原DF3)、CTCL腫瘍抗原se1-1、CTCL腫瘍抗原se14-3、CTCL腫瘍抗原se20-4、CTCL腫瘍抗原se20-9、CTCL腫瘍抗原se33-1、CTCL腫瘍抗原se37-2、CTCL腫瘍抗原se57-1、CTCL腫瘍抗原se89-1、前立腺特異的膜抗原、5T4癌胎児栄養膜糖タンパク質、Orf73カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス、MAGE-C1(癌/精巣抗原CT7)、MAGE-B1抗原(MAGE-XP抗原)(DAM10)、MAGE-B2抗原(DAM6)、MAGE-2抗原、MAGE-4a抗原、MAGE-4b抗原、結腸癌抗原NY-CO-45、肺癌抗原NY-LU-12変種A、癌関連表面抗原、腺癌抗原ART1、傍腫瘍関連脳-精巣癌抗原(癌神経抗原MA2;傍腫瘍神経抗原)、神経腫瘍遺伝子腹側抗原(Neuro-oncological ventral antigen)2(NOVA2)、肝細胞癌抗原遺伝子520、腫瘍関連抗原CO-029、腫瘍関連抗原MAGE-X2、滑膜肉腫、Xブレークポイント2、T細胞によって認識される扁平上皮癌抗原、血清学的に定義された結腸癌抗原1、血清学的に定義された乳癌抗原NY-BR-15、血清学的に定義された乳癌抗原NY-BR-16、クロモグラニンA;副甲状腺分泌タンパク質1、DUPAN-2、CA 19-9、CA 72-4、CA 195、癌胎児抗原(CEA)が含まれるがこれらに限定されるわけではない。
【0086】
免疫モジュレーター
本発明の組成物、方法、および装置は、樹状細胞活性化を刺激する手段を有する、TLRリガンド、増殖因子、死につつある細胞の産物、例えば熱ショックタンパク質が含まれるがこれらに限定されるわけではない免疫モジュレーターを含む。免疫モジュレーターは、単独で、またはGM-CSF、CpG-ODN配列、もしくは癌抗原と組み合わせて用いられる。免疫モジュレーターは、GM-CSF、CpG-ODN配列、または癌抗原と同時にまたは連続的に用いられる。
【0087】
細胞表面または内部細胞区画のいずれかにおいて見いだされる公知の全てのTLRリガンドは、本発明の組成物、方法、および装置に包含される。例示的なTLRリガンドには、トリアシルリポタンパク質(TLR1);リポタンパク質、グラム陽性ペプチドグリカン、リポテイコ酸、真菌、およびウイルス糖タンパク質(TLR2);二本鎖RNA、ポリI:C(TLR3);リポ多糖、ウイルス糖タンパク質(TLR4);フラゲリン(TLR5);ジアシルリポタンパク質(TLR6);低分子合成化合物、一本鎖RNA(TLR7およびTLR8);非メチル化CpG DNA(TLR9);プロフィリン(TLR11)が含まれるがこれらに限定されるわけではない。同様に、フィブロネクチンおよび熱ショックタンパク質(HSP)のような宿主分子もTRLリガンドとして含まれる。宿主TLRリガンドも同様に本発明に包含される。生得の免疫におけるTLRの役割ならびにそれらを活性化および阻害するために用いられるシグナル伝達分子は、当技術分野において公知である(論評に関しては、参照により本明細書に組み入れられる、Holger K. Frank B., Hessel E., and Coffman RL. Therapeutic targeting of innate immunity with Toll-like receptor agonists and antagonists. Nature Medicine 13, 552-559 (2007)を参照されたい)。
【0088】
公知の全ての増殖因子は、本発明の組成物、方法および装置に包含される。例示的な増殖因子には、トランスフォーミング増殖因子(TGF-β)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、神経成長因子(NGF)、ニューロトロフィン、血小板由来増殖因子(PDGF)、エリスロポエチン(EPO)、トロンボポエチン(TPO)、ミオスタチン(GDF-8)、増殖分化因子-9(GDF9)、酸性線維芽細胞増殖因子(aFGFまたはFGF-1)、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGFまたはFGF-2)、上皮細胞増殖因子(EGF)、肝細胞増殖因子(HGF)が含まれるがこれらに限定されるわけではない。本発明は、サイトカインのみならず樹状細胞活性化を刺激するための増殖因子を包含する。例示的なサイトカインには、IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-8、IL-10、IL-12、IL-15、IL-17、IL-18、TNF-α、IFN-γ、およびIFN-αが含まれるがこれらに限定されるわけではない。
【0089】
細胞死および死につつある細胞の産物の指標は、樹状細胞活性化を刺激する。そのため、死につつある細胞の全ての産物が、本発明の組成物、方法、および装置に包含される。例示的な細胞死産物には、オルガネラ、小胞、細胞骨格要素、タンパク質、DNA、およびRNAなどの細胞の任意の細胞内特色が含まれるがこれらに限定されるわけではない。特に重要なものは、細胞がストレス下にある際に発現され、細胞死の際に放出される熱ショックタンパク質である。例示的な熱ショックタンパク質には、Hsp10、Hsp20、Hsp27、Hsp33、Hsp40、Hsp60、Hsp70、Hsp71、Hsp72、Grp78、Hsx70、Hsp84、Hsp90、Grp94、Hsp100、Hsp104、Hsp110が含まれるがこれらに限定されるわけではない。
【0090】
微小環境およびワクチン効率
本明細書において記述される装置/足場は、感染症模倣微小環境を表す。各々の装置は、特定の抗原に対する免疫応答を刺激/増強することができる活性化樹状細胞を、誘引/受容、教育/刺激し、かつ周辺の体組織へと送る工場を構成する。具体的には、足場装置は、感染症微小環境を模倣して樹状細胞応答をさらに活性化するために、病原性分子と共に埋め込まれるかまたは病原性分子によってコーティングされる。
【0091】
材料システムによって感染症を適切に模倣する局面は、DCを持続的に動員して、活性化し、LNへとホーミングすることによって、癌ワクチンとして適用された場合に、腫瘍の進行に対して劇的に強い影響を与える。GM-CSF単独を用いた第一のPLGワクチンによって、バッチプロセスが得られ、この場合宿主DCはGM-CSFによって動員されて腫瘍抗原提示部位に常在し、GM-CSFレベルが低下するまで捕捉され、細胞は活性化されて分散するようになる(参照により本明細書に組み入れられる、米国特許出願第11/638,796号を参照されたい)。局所GM-CSF濃度の時間的変動により、動員されたDCの数、ならびにその活性化および分散の時期に対する制御が可能となった。最善のGM-CSFに基づくワクチンは、試験した動物のほぼ4分の1において防御免疫を付与することができたが、動員されたDCのおよそ26%が活性化され(DC〜240,000個)およびDCのおよそ6%がLNに分散された。高レベルのGM-CSFは多数のDCを動員したが、DCの活性化を限定し、潜在的に治療的なDCは足場内に捕捉されたままであった。これらの結果は、DC活性化および分散のGM-CSF阻害を妨害する圧倒的な「危険シグナル」としてCpG-ODNを局所に提示することによって細菌感染症を模倣する改善されたシステムを開発する動機付けとなった。本明細書において記述されるこれらの装置は、DCの増加したおよび持続的な出現を媒介することによって有意な進歩を表す。
【0092】
CpG-ODN分子を、DCへのODN取り込みおよびそのTLR-9受容体への局在化を促進するのみならず(図3)、PLGマトリクスにおいて静電気的に固定されて腫瘍抗原と共に同時に提示されるようにするために、PEIと共に縮合した(図6)。インビトロの結果は、PEI-CpG-ODN縮合体がDC内で脱縮合して、阻害レベルのGM-CSF(500 ng/ml)の存在下で、DCの活性化とリンパ節由来ケモカインCCL19に向かう分散とを促進するTLRシグナル伝達を刺激できることを示した。
【0093】
インビボにおいて、適切に設計された感染症模倣体は、GM-CSFによる動員の後に縮合CpG-ODNの提示による常在DCSの即時活性化およびその後の放出により、感染症様微小環境を通じてDCを往復輸送する、持続的プロセスを媒介した。併用CpG-ODN送達の用量効果のインビボスクリーニングによって、DC活性化に及ぼす差次的効果が明らかとなり、高用量のCpG-ODN(>50μg)およびGM-CSF(>1μg)ではCCR7およびMHCII発現の異常な切り離しが起こったが、最適なCpG-ODN用量(10〜25μg)は、高レベルのGM-CSF(3μg、インビボ)によって妨害される場合でも有意なDC活性化(44%、および細胞1.5×106個)を誘導した。したがって、最適なCpG-ODN提示は、インサイチューで強いGM-CSFパルスによって動員された多数のDCを活性化することができ、これらの数は、エクスビボプロトコルにおいてしばしばプログラムされて移植された数を超える(図7)。
【0094】
このDCプログラミングプロセスは、GM-CSFの強いパルスによる動員の後に縮合CpG-ODN刺激による常在DCSのその後のプログラミングおよび放出が起こる感染症様微小環境を通じてDCが往復輸送されることから持続的であることが証明された。LNにホーミングするDCのパーセンテージは6%から13%へとほぼ倍加し(米国特許出願第11/638,796号および図8)、これはプログラムされたDC 180,000個(CpG-ODNが存在しない場合の装置と比較して〜4倍の増強)が感染症模倣体によってリンパ節に分散されたことに対応した(図7および8)。特に、この状態におけるリンパ節は著しく肥大して(図8)、屠殺時には多数のDCが負荷されており、感染症模倣体がそれらの動物において作出されたという結論を支持した。
【0095】
これらの感染症材料システムが、DCの輸送および活性化を持続的に制御できることは、癌ワクチンの有効性に対する調節と言い換えられた。プログラムされてリンパ節へと分散される材料に常在する活性化DCの数が増加すると、効力は、0〜23%および最後に50%に増加した。宿主T細胞は、免疫防御を媒介し、実際に形成された腫瘍(図10)におけるCD4およびCD8リンパ球の数(感染症の模倣により〜50%の増加)とワクチンの効力のあいだに明確な関係が見いだされた。これらの結果は、このシステムが強力で特異的で持続的な抗腫瘍免疫を刺激することが既に見いだされていることから(Akira S, Takeda K, Kaisho T. Nature Immunol, 2, 675-80, 2001)、GM-CSFを分泌するように操作された放射線照射腫瘍細胞を用いて開発されたエクスビボワクチンと定性的に一貫する。対照的に、感染症模倣材料システムは、インサイチューでDCをプログラムして、全てのエクスビボ細胞操作および移植を必要とすることなく、動員されて活性化されリンパ節(LN)へと分散されるDCの数に対して厳密な制御を提供した。
【0096】
これらの結果は、インサイチューでの細胞の挙動およびプログラミングを微調整する価値があることを示している。これらの研究におけるワクチンの効力の背後にある機序は、明らかに、DCの可動化およびプログラミングの数および時期に対する適切な制御であった。感染症模倣体は、そうでなければ致死的となる感染症、癌、および自己免疫に対する免疫を作製する手段を有するワクチンを開発するための有用なツールである。
【0097】
足場組成物および構築
足場の成分は、多様な幾何学形状(例えば、ビーズ、ペレット)、ニッチ、平面層(例えば、薄いシート)で組織化される。例えば、多成分足場は、その各々が異なる物理的性質(ポリマーの%、ポリマー架橋の%、足場の化学組成、孔サイズ、多孔性、および孔の構築、剛性、靱性、延性、粘弾性、および/または増殖因子、ホーミング/遊走因子、分化因子などの生物活性物質の組成)を特徴とする同心円に構築される。各々のニッチは、細胞集団に対して特定の効果を有し、例えば特定の細胞機能、増殖、分化、分泌された因子もしくは酵素の生成、または遊走を促進または阻害する。足場においてインキュベートされた細胞は、標的組織、例えば損傷を受けた組織部位に直接影響を及ぼすために、足場から出て遊走するように教育および誘導される。例えば、間質血管細胞および平滑筋細胞は、血管または体腔の層などの管様構造の修復のために用いられるシート様構造において有用である。例えば、そのような構造は、胃壁破裂などの腹壁損傷または欠損を修復するために用いられる。同様に、皮膚幹細胞および/またはケラチノサイトを播種したシート様足場は、皮膚組織を再生するための帯具または創傷包帯において用いられる。装置は、標的組織上にまたはそれに近接して、体の防護された位置に、血管に近接して、または外部創傷包帯の場合には体外に留置または移植される。装置は、多様な公知の方法およびツール、例えばスプーン、鉗子またはグラスパー、皮下注射針、内視鏡マニピュレータ、血管内または経血管カテーテル、定位針、スネーク装置、臓器表面跛行ロボット(米国特許出願第20050154376号;Ota et al., 2006, Innovations 1:227-231)、最小侵襲性外科装置、外科埋め込みツールおよび経皮パッチを用いて体組織の中または体組織の上に導入される。装置はまた、例えばマトリクス材料を連続的に注入または挿入することによってその場でアセンブルされうる。足場装置に任意で、例えば増殖因子または分化因子などの物質の連続的注入または噴霧によって、細胞または生物活性組成物を再度充填する。
【0098】
足場または足場装置は、その上またはその中で細胞が会合または付着する物理的構造であり、足場組成物は構造を作出する材料である。例えば、足場組成物には、以下に記載される材料などの生物分解性のまたは永続的な材料が含まれる。足場の機械的特徴は、再生が求められる応用または組織タイプに従って多様である。これは、生物分解性(例えば、コラーゲン、アルジネート、多糖、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ(グリコリド)(PGA)、ポリ(L-ラクチド)(PLA)、またはポリ(ラクチド-コ-グリコリド)(PLGA))であるか、または永続的(例えば、絹)である。生物分解性の構造の場合、組成物は物理的または化学的作用、例えば水和レベル、熱もしくはイオン交換によって、または細胞作用、例えば近傍もしくは常在細胞による酵素、ペプチドもしくは他の化合物の生成によって、分解する。硬度は、軟性/柔軟(例えば、ゲル)からガラス状、ゴム状、もろい、強靱、弾性、堅い、まで多様である。構造は、ナノ孔性、ミクロ孔性、またはマクロ孔性である孔を含有し、孔のパターンは任意で、均一、不均一、整列、反復、またはランダムである。
【0099】
アルジネートは、分子量、分解速度、および足場形成法を制御することによって、特定の応用のために処方される可能性がある用途の広い多糖に基づくポリマーである。カップリング反応を用いて細胞接着配列RGDなどの生物活性エピトープをポリマー骨格に共有結合的に付着させることができる。アルジネートポリマーは、多様な足場タイプに形成される。注射可能なハイドロゲルは、カルシウムイオンなどの架橋剤を付加することによって低分子量アルジネート溶液から形成されうるが、マクロ孔の足場は、高分子量のアルジネートディスクの凍結乾燥によって形成される。足場処方の差は、足場分解の動態を制御する。アルジネート足場からのモルフォゲンまたは他の生物活性物質の放出速度は、空間的および時間的に制御された様式でモルフォゲンを提示するように足場処方によって制御される。この制御された放出は、全身の副作用を消失させて、多数回注射の必要性をなくすのみならず、埋め込み部位での宿主細胞および足場に播種された移植細胞を活性化する微小環境を作製するために用いることができる。
部分的に酸化されたアルジネート
RGD改変アルジネート
【0100】
足場は、任意で全体または部分的に生物分解性である生物適合性のポリマーマトリクスを含む。ハイドロゲルは、適したポリマーマトリクス材料の一例である。ハイドロゲルを形成することができる材料の例には、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、PLGAポリマー、アルジネートおよびアルジネート誘導体、ゼラチン、コラーゲン、アガロース、天然および合成多糖、ポリペプチド、特にポリ(リジン)などのポリアミノ酸、ポリヒドロキシ酪酸およびポリ-ε-カプロラクトン、ポリ酸無水物などのポリエステル;ポリホスファジン、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(アルキレンオキシド)、特にポリ(エチレンオキシド)、ポリ(アリルアミン)(PAM)、ポリ(アクリレート)、ポリ(4-アミノメチルスチレン)などの改変スチレンポリマー、プルロニックポリオール、ポロキサマー、ポリ(ウロン酸)、ポリ(ビニルピロリデン)、およびグラフトコポリマーを含む上記のコポリマーが含まれる。
【0101】
足場は、コラーゲン、フィブリン、ヒアルロン酸、アガロース、およびラミニンに富むゲルなどの、しかしこれらに限定されない多様な合成ポリマーおよび天然に存在するポリマーから組み立てられる。ハイドロゲルに関して1つの好ましい材料は、アルジネートまたは改変アルジネート材料である。アルジネート分子は、(1-4)連結β-D-マンヌロン酸(M単位)およびα-L-グルロン酸(G単位)モノマーを含み、これはポリマー鎖に沿って比率および連続した分布が多様でありうる。アルジネート多糖は、二価の陽イオン(例えば、Ca+2、Mg+2、Ba+2)に対して強い親和性を有し、これらの分子に曝露されると安定なハイドロゲルを形成する多価電解質システムである。Martinsen A., et al., Biotech. & Bioeng., 33 (1989) 79-89を参照されたい。例えば、カルシウム架橋アルジネートハイドロゲルは歯科応用、創傷包帯、軟骨細胞の移植にとって、および他の細胞タイプのためのマトリクスとして有用である。
【0102】
例示的な装置は、比較的低分子量、好ましくはサイズが解離後にヒトの腎クリアランス閾値であるアルジネートまたは他の多糖を利用し、例えばアルジネートまたは多糖は分子量1000〜80,000ダルトンに低減される。好ましくは、分子量は、1000〜60,000ダルトンであり、特に好ましくは1000〜50,000ダルトンである。同様に、グルロン酸単位は、マンヌロン酸単位とは対照的に、ポリマーをゲル化するために二価の陽イオンによるイオン架橋のための部位を提供することから、高いグルロン酸含有量のアルジネート材料を用いることが有用である。参照により本明細書に組み入れられる米国特許第6,642,363号は、細胞移植および組織工学操作応用にとって特に有用であるアルジネートまたは改変アルジネートなどの多糖を含有するポリマーを作出および用いるための方法を開示する。
【0103】
アルジネート以外の有用な多糖には、以下の表に記載されるものなどのアガロースおよび微生物多糖が含まれる。
【0104】
多糖足場組成物
a N−中性、A=陰イオン性、およびC=陽イオン性。
【0105】
本発明の足場は、多孔性または非多孔性である。例えば、足場は約10 nm未満の直径を有するナノ孔性;孔の直径が好ましくは約100 nm〜20μmの範囲であるミクロ孔性;または孔の直径が約20μmより大きい、より好ましくは約100μmより大きい、およびさらにより好ましくは約400μmより大きいマクロ孔性である。1つの例において、足場は、直径約400〜500μmの孔が整列するマクロ孔性である。望ましい孔サイズおよび孔の整列を有するポリマーマトリクスの調製は、実施例において記述される。多孔性のハイドロゲル産物を調製するための他の方法は当技術分野において公知である(参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第6,511,650号)。
【0106】
生物活性組成物
装置には、1つまたは複数の生物活性組成物が含まれる。生物活性組成物は、精製された天然に存在する化合物、合成によって産生された化合物、または組換え型化合物、例えばポリペプチド、核酸、低分子、または他の物質である。例えば、組成物には、GM-CSF、CpG-ODN、および腫瘍抗原または他の抗原が含まれる。本明細書において記述される組成物は精製される。精製化合物は関心対象化合物の重量(乾燥重量)で少なくとも60%である。好ましくは、調製物は、関心対象化合物の少なくとも75重量%、より好ましくは少なくとも90重量%、および最も好ましくは少なくとも99重量%である。純度は任意の適切な標準的な方法によって、例えばカラムクロマトグラフィー、ポリアクリルアミドゲル電気泳動、またはHPLC分析によって測定される。
【0107】
ポリマーマトリクスへのポリペプチドのカップリングは、当業者に公知の合成法を用いて達成される。ペプチドをポリマーにカップリングさせるアプローチは、Hirano and Mooney, Advanced Materials, p.17-25 (2004)において考察される。他の有用な結合化学には、Hermanson, Bioconjugate Techniques, p. 152-185 (1996)において考察される化学、特にカルボジイミドカップラー、DCCおよびDIC(ウッドワード試薬K)を用いることが含まれる。ポリペプチドは、そのようなカルボジイミド結合のための末端アミン基を含有する。アミド結合形成は好ましくは、ペプチド合成において一般的に用いられる水溶性酵素である1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)によって触媒される。
【0108】
生物活性組成物の放出動態の制御
GM-CSFなどの生物活性組成物の放出プロファイルは、多数の異なる技術、例えば封入、足場との付着/会合の性質、足場の多孔性、および生物活性組成物の粒子サイズを用いて制御される。
【0109】
例えば、GM-CSFは、GM-CSFを足場に組み入れる1つの手段によって封入される。GM-CSFを最初にPLGミクロスフェアに封入した後、これらのGM-CSF負荷ミクロスフェアを気体発泡プロセスに供し、マクロ孔PLG足場を作製した。ミクロスフェアにGM-CSFを組み入れることによって、GM-CSFをポリマーのより深部に包埋して、これによって装置は1〜5日間にわたってGM-CSF送達の初回パルスを持続させることができる。他の組み入れ法は任意で、望ましいGM-CSFパルスの持続を変更するまたは微調整するために用いられ、次にこれはDC動員の動態を変化させると考えられる。例えば、凍結乾燥GM-CSFと混合した発泡性のPLG粒子によって、ポリマー足場の表面により多く会合するGM-CSFが得られ、タンパク質はより迅速に拡散する。
【0110】
放出動態を改変する代替の足場組み立て法には、足場の孔の物理的構造を改変して、それによって例えばRiddle et al., Role of poly(lactide-co-glycolide) particle size on gas-foamed scaffolds. J Biomater Sci Polym Ed. 2004;15(12):1561-70において記述されるように異なる分解時間および放出動態(体積のパーセンテージとしての孔サイズまたは総多孔性の変化)をもたらすことが含まれる。放出動態を変化させる別の方法は、組成物、すなわち足場を作出する原料を改変して、それによって放出特性を変化させることである。例えば、異なるポリマー、例えばアルジネート、PLA、PGA、またはPLGAを用いる。同様に、グリコール酸および乳酸の異なる比率を有するポリマーを用いることによって、異なる放出プロファイルが得られる。例えば、組成(ラクチド対グリコリド比)および分子量が異なる多様なPLGを用いて、公知のダブルエマルション(水/油/水)プロセスによりミクロスフェア(5〜50μm)を調製した後、気体発泡/微粒子浸出技術を用いて、微粒子PLGおよびPLGミクロスフェアを用いた足場の調製を行う(Ennett et al., Temporally regulated delivery of VEGF in vitro and in vivo. J Biomed Mater Res A. 2006 Oct;79(1))。別の技術は、異なる区画にタンパク質を組み入れる段階を伴う(例えばタンパク質PLGミクロスフェアを封入する、または発泡前にポリマーと単純に混合して凍結乾燥する)。
【0111】
装置の充填および/または再充填
GM-CSFなどの生物活性組成物を、装置の異なる層/区画内に組み入れて、それによってGM-CSFの多数のパルスを送達させる。各々のパルスは、DCの流入によって装置を充填(または再充填)する。足場は、GM-CSF(または他の生物活性物質)の多数のパルスを作製するために多様な方法を用いて組み立てられる。例えば、そのような装置は、異なる区画にタンパク質を組み入れて(例えば、タンパク質PLGミクロスフェアを封入することによって、または発泡前に単純にポリマーと混合して凍結乾燥することによって)、それによってタンパク質の2つまたはそれより多い独自の放出プロファイル(すなわち、パルス)を作製することによって作出される(例えば、Richardson et al., Polymeric system for dual growth factor delivery. Nat Biotechnol. 2001 Nov;19(11)において記述されるように)。
【0112】
または、タンパク質は、迅速に分解するPLGミクロスフェア(例えば、低分子量、50:50比)、および遅く分解するPLGミクロスフェア(高分子量、85:15比)に封入される。次に、これらのミクロスフェアを共に混合して、後にこれらを用いて足場を組み立てる。ゆえに、タンパク質は速く分解するポリマーおよび遅く分解するポリマーの双方に封入されて、それによって少なくとも2つの独自の放出動態および送達パルスが得られる。この方法は、その比測定特徴が異なる、3、4、5種類またはそれより多い異なるミクロスフェアを作製するために利用され、それによってGM-CSFなどの生物活性組成物の放出の3、4、5回またはそれより多いパルスが得られる。
【0113】
1つより多いパルスを送達する装置を作出するための別のアプローチは、層状の足場を組み立てることである。層状の足場は、異なる足場処方における別の足場との圧縮成形によって作出される。例えば、原料(ショ糖+PLG1+タンパク質)はまた、型において圧縮され、わずかに変化した処方(ショ糖+PLG2+タンパク質)も同様に型において圧縮される。次にこれらの2つの層を互いに圧縮した後、発泡させ、それによって例えばChen et al., Pharm Res. Spatio-temporal VEGF and PDGF delivery patterns blood vessel formation and maturation. 2007 Feb;24(2):258-64において記述されるように、タンパク質の濃度が独自に空間的に制御された二層足場が得られる。
【0114】
装置の構築
足場構造は、ペプチドポリマー、多糖、合成ポリマー、ハイドロゲル材料、セラミクス(例えば、リン酸カルシウムまたはヒドロキシアパタイト)、タンパク質、糖タンパク質、プロテオグリカン、金属および金属合金などの、多数の異なる堅固な、半堅固な、柔軟な、ゲル、自己アセンブルする、液晶、または流体組成物から構築される。組成物は、当技術分野において公知の方法、例えば注入成形、予め形成された構造の凍結乾燥、プリンティング、自己アセンブリ、転相、溶媒鋳造、融解プロセシング、気体発泡、繊維形成/プロセシング、微粒子浸出、またはその組み合わせを用いて細胞足場構造にアセンブルされる。次に、アセンブルされた装置を、処置される個体の体に埋め込むかまたは投与する。
【0115】
装置は、いくつかの方法でインビボでアセンブルされる。足場は、体に非ゲル化型で導入されて、インサイチューでゲル化するゲル化材料から作出される。装置成分を、アセンブリが起こる部位に送達する例示的な方法には、針または他の押し出しツールを通しての注入、噴霧、塗布、または組織部位での沈着法、例えばカニューレを通して挿入される適用装置を用いた送達が含まれる。1つの例において、非ゲル化または無構造足場材料を、体に導入する前にまたは導入しているあいだに生物活性物質および細胞と混合する。得られたインビボ/インサイチューアセンブル足場は、これらの物質および細胞の混合物を含有する。
【0116】
足場のインサイチューアセンブリは、ポリマーの自然発生的会合の結果として、または相乗的もしくは化学的に触媒された重合化から起こる。相乗的または化学的触媒作用は、アセンブリ部位でのまたはその近傍での多数の内因性因子または状態、例えば体温、イオン、もしくは体のpHによって、またはオペレータによってアセンブリ部位に供給される外因性の因子もしくは状態、例えば導入された後の非ゲル化材料に向けられる光子、熱、電気、音、または他の放射線によって開始される。エネルギーは、放射線ビームによって、またはワイヤもしくは光ファイバーケーブル、もしくは超音波変換器などの、熱もしくは光の導体を通して、足場材料に向けられる。または、例えば針の中を通過することによって剪断力を受けた後に再架橋する両親媒性物質などのシアーシニング材料が用いられ、軽減されている。
【0117】
足場装置のインビボおよびエクスビボアセンブリの双方にとって適したハイドロゲルは、当技術分野において周知であり、例えばLee et al., 2001, Chem. Rev. 7:1869-1879において記述される。アセンブリを自己アセンブルするための両親媒性ペプチドアプローチは、例えばHartgerink et al., 2002, Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 99:5133-5138において記述されている。シアーシニング後の可逆的なゲル化法は、Lee et al., 2003, Adv. Mat. 15:1828-1832において例示される。
【0118】
類似にまたは異なるようにドープ処理されたゲルまたは他の足場材料の連続層を標的部位に適用することによって、多数の区画装置がインビボでアセンブルされる。例えば、装置は、既に注入された材料の中心に針を用いて次の内層を連続的に注入することによって形成され、同心円の球状体を形成する。非同心円区画は、既に注入された層の異なる位置に材料を注入することによって形成される。マルチヘッド注入装置は区画を並行しておよび同時に押し出す。層は、生物活性物質および異なる細胞タイプによって異なるようにドープ処理された類似のまたは異なる足場組成物で作出される。または、区画は、各区画内でのその親水性/疎水性特徴または二次相互作用に基づいて自己組織化する。
【0119】
区画化装置
一定の状況において、独自の化学および/または物理的特性を有する区画を含有する装置は有用である。区画化装置は、各区画に関して異なる組成または濃度の組成物を用いることによって設計されて組み立てられる。
【0120】
または、区画は、個々に組み立てた後に、互いに接着させる(例えば、内部区画が1つまたは全ての面で第二の区画によって取り囲まれる「サンドイッチ」)。後者の構築アプローチは、各層の他の層に対する内因性の接着、各層におけるポリマー鎖の拡散および相互浸透、第二の層の第一の層に対する重合化または架橋、接着剤(例えば、フィブリン糊)の使用、または他の区画における1つの区画の物理的捕捉を用いて達成される。区画は、自己アセンブルして、適切な前駆体(例えば、温度感受性オリゴペプチド、イオン強度感受性オリゴペプチド、ブロックポリマー、架橋剤およびポリマー鎖(またはその組み合わせ)、ならびに細胞制御アセンブリを許容する細胞接着分子を含有する前駆体)の存在に応じてインビトロまたはインビボのいずれかで適切に相互接続する。
【0121】
または、区画化装置は、プリンティング技術を用いて形成される。生物活性物質をドープ処理した足場前駆体の連続層を基板上に置いて、その後例えば自己アセンブル化学によって架橋させる。架橋が化学、光または熱触媒重合化によって制御される場合、各層の厚さおよびパターンはマスクによって制御され、各触媒作用後に非架橋前駆体材料を洗浄すると複雑な三次元パターンが構築される(WT Brinkman et al., Photo-cross-linking of type 1 collagen gels in the presence of smooth muscle cells: mechanical properties, cell viability, and function. Biomacromolecules, 2003 Jul-Aug;4(4):890-895.;W. Ryu et al., The construction of three-dimensional micro-fluidic scaffolds of biodegradable polymers by solvent vapor based bonding of micro-molded layers. Biomaterials, 2007 Feb;28(6):1174-1184;Wright, Paul K. (2001). 21st Century manufacturing. New Jersey: Prentice-Hall Inc.)。複雑な多区画層はまた、基板の異なる領域上の異なるドープ処理足場前駆体を「塗布する」インクジェット装置を用いて構築される。Julie Phillippi (Carnegie Mellon University) presentation at the annual meeting of the American Society for Cell Biology on December 10, 2006; Print me a heart and a set of arteries, Aldhouse P., New Scientist 13 April 2006 Issue 2547 p 19.; Replacement organs, hot off the press, C. Choi, New Scientist, 25 Jan 2003, v2379。これらの層は、複雑な三次元区画に構築される。装置はまた、以下の方法のいずれかを用いて構築される:ジェットフォトポリマー、選択的レーザー焼結法、薄膜積層法、熱溶解積層法、シングルジェットインクジェット、三次元プリンティング、または薄膜積層法。
【0122】
足場装置からの生物活性物質の放出プロファイルは、拡散およびポリマー分解の双方の因子、システムに負荷される因子の用量、およびポリマーの組成によって制御される。同様に、作用範囲(組織分布)、および作用の持続、または放出された因子の空間時間的勾配は、これらの変数によって調節される。関心対象組織における因子の拡散および分解は、任意で因子を化学改変すること(例えば、PEG化増殖因子)によって調節される。いずれの場合においても、放出の時間枠は、装置による有効な細胞送達が望ましい時間を決定する。
【0123】
生物活性物質は、足場材料において物質を捕捉するために、表面吸着、物理的固定、例えば相の変化を用いることが含まれる公知の方法を用いて足場組成物に付加される。例えば、増殖因子は、水相または液相に存在する際に足場組成物と混合して、環境条件(例えば、pH、温度、イオン濃度)を変化させた後、液体をゲル化または固化して、それによって生物活性物質を捕捉する。または、例えばアルキル化剤またはアシル化剤を用いた共有結合的カップリングを用いて、既定のコンフォメーションにおける足場上で生物活性物質の安定な長期間の提示を提供する。そのような物質を共有結合的にカップリングするための例示的な試薬を以下の表に提供する。
【0124】
ポリマーにペプチド/タンパク質を共有結合的にカップリングさせる方法
[a]EDC:1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドヒドロクロリド;DCC:ジシクロヘキシルカルボジイミド。
【0125】
本発明において用いるのに適した生物活性物質には、インターフェロン、インターロイキン、ケモカイン、サイトカイン、コロニー刺激因子、化学走化性因子、顆粒球/マクロファージコロニー刺激因子(GMCSF)が含まれるがこれらに限定されるわけではない。樹状細胞を活性化するために都合よく用いられる可能性がある先に言及したタンパク質の任意のスプライス変種、およびその低分子アゴニストまたはアンタゴニストも同様に、本明細書において企図される。
【0126】
先に言及したサイトカインの例には、IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-10、IL-12、IL-15、IL-17、IL-18、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、インターフェロン-γ(γ-IFN)、IFN-α、腫瘍壊死因子(TNF)、TGF-β、FLT-3リガンド、およびCD40リガンドが含まれるがこれらに限定されるわけではない。
【0127】
本発明の足場は任意で、移植された細胞またはインプラントの近位の宿主細胞が、望ましい時間枠で望ましい因子を局所で利用できるようにする遺伝子を取り込んで発現させるように、少なくとも1つの非ウイルス遺伝子治療ベクターを含む。そのような非ウイルスベクターには、陽イオン脂質、ポリマー、ターゲティングタンパク質、およびリン酸カルシウムが含まれるがこれらに限定されるわけではない。
【0128】
足場の組み立て
D、L-ラクチドおよびグリコリドの85:15、120 kDコポリマー(PLG)(Alkermes, Cambridge, MA)を気体発泡プロセスにおいて利用して足場を形成した(Cohen S., Yoshioka T., Lucarelli, M., Hwang L.H., and Langer R. Pharm. Res. 8,713-720 (1991);参照により本明細書に組み入れられる)。GM-CSFを封入するPLGミクロスフェアを標準的なダブルエマルションを用いて作出した(Harris, L.D., Kim, B.S., and Mooney, D.J. J. Biomed.Mater. Res. 42,396-402 (1998);参照により本明細書に組み入れられる)。PLGミクロスフェア16 mgを孔形成物質であるNaClまたはショ糖(粒子サイズが250μm〜425μmとなるようにふるいにかける)150 mgと混合して、圧縮成形した。得られたディスクを高圧CO2環境において平衡にして、圧を急速に低減させて、ポリマー粒子を膨張させて相互接続構造へと融合させる。水の中に浸すことによってNaClを足場から浸出させると、90%多孔性である足場が得られた。腫瘍溶解物をPLG足場に組み入れるために、C57BL/6Jマウス(Jackson Laboratory, Bar Harbor Maine)の背部の皮下で成長させたB16-F10腫瘍の生検をコラゲナーゼ(250 U/ml)(Worthington, Lakewood, NJ)において消化して、40μmセルストレーナーを通して濾過した後、107個/mlと同等の濃度に浮遊させた。腫瘍細胞浮遊液を液体窒素中での急速凍結と融解(37℃)の4サイクルに供した後、400 rpmで10分間遠心した。腫瘍溶解物を含有する上清(1 ml)を収集してPLGミクロスフェアと共に凍結乾燥し、得られた混合物を用いてPLG足場に基づく癌ワクチンを作出した。CpG-ODNをPLG足場に組み入れるために、PEI-CpG-ODN縮合液を50%(重量/体積)ショ糖溶液60μlと共にボルテックスミキサーによって撹拌して、凍結乾燥して乾燥ショ糖と共に混合して最終重量を150 mgとした。PEI-CpG-ODN縮合体を含有するショ糖をブランク、GM-CSF、および/または腫瘍溶解物負荷PLGミクロスフェアと混合して、PLG癌ワクチンを作出した。
【0129】
本発明の足場組成物は、GM-CSFおよびCpG-ODN配列を含む。広範囲の濃度の各要素が企図される。好ましい態様において、足場組成物はPLGを含む。GM-CSFに関しては、ポリマー足場組成物40 mgあたりGM-CSFポリペプチド0〜100μgが足場組成物に組み入れられるか、またはその上にコーティングされる。または、GM-CSF 0〜50μg、0〜25μg、0〜10μg、0〜5μg、および0〜3μgを含む用量が足場組成物に組み入れられる。好ましい態様において、GM-CSF 0〜3μgが足場組成物に組み入れられる。CpG-ODN配列またはPEI-CpG-ODN縮合物に関しては、ポリマー足場組成物40 mgあたりPEI-CpG-ODN 0〜1000μgが足場組成物に組み入れられるか、またはその上にコーティングされる。または、PEI-CpG-ODN 0〜500μg、0〜250μg、0〜100μg、0〜50μg、0〜25μg、0〜10μg、および0〜5μgを含む用量が足場組成物に組み入れられる。好ましい態様において、PEI-CpG-ODN 0〜50μgが足場組成物に組み入れられる。
【0130】
CpG-ODNの組み入れおよびインビトロ放出試験
CpG-ODN組み入れの組み入れ効率を決定するために、CpG-ODN 50μgと共にPLG足場を調製して、クロロホルム(Sigma Aldrich)1 mlにおいて消化して、水性緩衝液2 mlによって洗浄した。水相を単離して、組み入れられたCpG-ODNの量を、Nanodrop機器ND1000(Nanodrop technologies, Wilmington, DE)を用いて吸光度の読み(光路0.2 mmで計算した260/280、および260/230比)によって決定した。同様に、CpG-ODN放出動態を決定するためにCpG-ODN負荷足場を、インキュベータ(37℃)内のリン酸緩衝生理食塩液(PBS)1 ml中に入れた。様々な時点で、PBS放出培地を収集して新鮮な培地と交換した。PLG足場に組み入れられてPBSの中に放出されたCpG-ODNの全量を経時的に分析して記録した。
【0131】
インビトロDC遊走アッセイおよびDC活性化
DC株、JAWSII(ATCC, Manassas, VA)をインビトロ実験のために用いて、20%FBS(Invitrogen, Carlsbad, CA)および5 ng/ml GM-CSFを添加したα-MEM(Invitrogen, Carlsbad, CA)において維持した。DC活性化に及ぼすCpGに富むオリゴヌクレオチド(CpG-ODN)のインビトロ効果を決定するために、JAWSII細胞を5μg/ml CpG-ODN 1826、5'-tcc atg acg ttc ctg acg tt-3'(Invivogen, San Diego, CA)と共に24時間培養して、0、50、または500 ng/ml GM-CSFの存在下で12時間培養した。DC活性化に及ぼす縮合CpG-ODNの効果を査定するために、混合物をボルテックスミキサーによって撹拌しながらODN-1826溶液をPEI溶液中に滴下することによってCpG-ODNをPEI分子と縮合した(Huang YC, Riddle F, Rice KG, and Mooney DJ. Hum Gene Ther. 5, 609-17. (2005);参照により本明細書に組み入れられる)。PEIとCpG-ODN(NH3+:PO4-)との電荷比を縮合の際に7で一定に維持した。DC活性化に関する陽性対照として、DCをまた、刺激因子、TNF-α(10 ng/ml)(Peprotech, Rocky Hill, NJ)、およびLPS(10 ng/ml)(Sigma-Aldrich, St. Louis, MO)と共に培養した。次にDCを採収して一次抗体(BD Pharmingen, San Diego, CA):PE結合CD86(B7、共刺激分子)、FITC結合CCR7、およびFITC結合MHCIIによって染色した。細胞をFACSによって分析して、アイソタイプ対照を用いて陽性FITCおよびPEに従ってゲートを設定し、各表面抗原に関して染色陽性の細胞のパーセンテージを記録した。
【0132】
遊走アッセイは、孔サイズ5μmの6.5 mmトランスウェルディッシュ(Costar, Cambridge, MA)において行った。CpG-ODN刺激が、GM-CSFの存在下でCCL19(Peprotech, Rocky Hill, NJ)に向かうDCの化学走化性に影響を及ぼす可能性を調べるために、5μg/mlのCpG-ODNまたはPEI-CpG-ODN(電荷比7)、および0、50、および500 ng/ml GM-CSFのいずれかによって刺激したDC 5×105個を上部のウェルに入れて、300 ng/ml CCL19を下のウェルに入れた。12時間後、チャンバーの底のウェルに遊走した細胞を採集して、コールターカウンターを用いて計数した。DC 1×106個を播種して、ウシコラーゲン(BD Biosciences, San Jose, CA)を用いてトランスウェルに固定したPLG足場(直径13 mm、4分の1である厚さ2 mm)に縮合体5、50、および500μgを組み入れることによって、PEI-CpG-ODN負荷PLGマトリクスからCCL19に向かうDCの分散を査定した。GM-CSFの存在下でのCpG刺激の効果を試験するために、PEI-CpG-ODN 25μgを含有する足場を有する上部ウェルの培地に500 ng/ml GM-CSFを添加した。様々な時点で、チャンバーの底のウェルに遊走した細胞を採収してコールターカウンターを用いて計数した。
【0133】
インビボDC遊走および活性化アッセイ
ブランク足場およびPEI-ODN対照(5'- tcc atg agc ttc ctg agc tt -3')10μgまたはPEI-CpG-ODN縮合体10μgを負荷した足場の存在下または非存在下でGM-CSFを含有する足場を、7〜9週齢の雄性C57BL/6Jマウスの背部の皮下嚢に埋め込んだ。組織学的検査のために、足場を切除して、Z-固定液において固定して、パラフィンに包埋して、ヘマトキシリンおよびエオジンによって染色した。DC動員を分析するために、足場を切除して、コラゲナーゼ溶液(Worthingtion, 250 U/ml)を用いて37℃で45分間撹拌して内植組織を単細胞浮遊液に消化した。細胞浮遊液を40μmセルストレーナーの中に注いで、足場の粒子から細胞を単離して、細胞を沈降させて冷PBSによって洗浄した後、Z2コールターカウンター(Beckman Coulter)を用いて計数した。得られた細胞集団を、フローサイトメトリーによって分析するために蛍光マーカーに結合させた一次抗体(BD Pharmingen, San Diego, CA)によって染色した。APC結合CD11c(樹状細胞マーカー)およびPE結合CD86(B7、共刺激分子)染色をDC動員分析のために行い、APC結合CD11c、FITC結合CCR7、およびPE結合MHCII染色をDCプログラミング分析のために行った。細胞を、アイソタイプ対照を用いて陽性FITC、APC、およびPEに従ってゲートを設定して、各表面抗原に関して染色陽性の細胞のパーセンテージを記録した。足場から鼠径リンパ節に向かうインビボDC遊出を追跡するために、凍結乾燥フルオレセインイソチオシアネート(FITC)(Molecular Probes, Carlsbad, CA)250μgを、足場の処理の前にPLGミクロスフェアと混合することによって足場に組み入れ、3%FITC溶液330μlと共に足場を30分間インキュベートすることによってFITCを適用した。FITC着色足場をC57BL/6Jマウスの左脇腹皮下に埋め込んで、鼠径リンパ節(LN)を、足場埋め込み後の様々な時点で採収した。LNからの細胞浮遊液をコラゲナーゼにおける30分間の消化、および70μmセルストレーナーを通して組織を押しつけることによって調製し、フローサイトメトリーによってCD11c(+)FITC(+)細胞数に関して検査した。
【0134】
腫瘍成長アッセイ
黒色腫腫瘍溶解物および様々な用量のGM-CSFおよび/またはPEI-CpG-ODN縮合体10μgを有するPLG足場をC57BL/6Jマウスの下左脇腹皮下に埋め込んだ。動物にB16-F10黒色腫細胞(ATCC, Manassas, NJ)105個を、背部頚部への皮下注射によって14日後に投与した。動物を腫瘍成長の発生(およそ1 mm3)に関してモニターして、腫瘍が20〜25 mm(最も長い直径)まで成長した場合には人道的理由から屠殺した。組織学検査に関して、腫瘍を注入後20〜25日目に生検を行ってZ固定液(Anatech, Battle Creek, MI)において固定して、ヘマトキシリンおよびエオジンに関して染色した。T細胞浸潤に関して腫瘍組織を調べるために、アビジン-ビオチン-ペルオキシダーゼVectastain Elite ABCキット(Vector Laboratories)を用いて免疫ペルオキシダーゼ染色を行った。用いた一次抗体はGK 1.5(CD4)および53-6.72(CD8)であり、染色を、DAB+基質色素原(DAKO, Carpinteria, CA)を用いて顕色させた。腫瘍試料(n=3または4)からの切片をNikon光学顕微鏡(Indianapolis, IN)によって40倍および100倍で可視化して、陽性染色T細胞を手動で計数した。PLG癌ワクチンをまた、既に記述されているように(Dranoff G., et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 90, 3539-3543(1993);参照により本明細書に組み入れられる)、GM-CSFを発現するように遺伝子改変されてその後放射線照射(3500 rad)されたB16-F10黒色腫細胞を用いた一般的な細胞に基づくワクチンと比較した。放射線照射腫瘍細胞(5×105個)をC57BL/6Jマウスの皮下に注射して、マウスにB16-F10黒色腫細胞105個を14日後に投与した。
【0135】
統計分析
本試験における値は全て、平均値±S.D.として表記した。群のあいだの有意差をStudentのt検定によって分析し、0.05未満のP値は有意であると見なした。
【0136】
ワクチン装置
生物適合性の足場は、癌ワクチンのための送達ビヒクルとして有用である。癌ワクチンは、癌細胞に対する内因性の免疫応答を刺激する。現在生産されているワクチンは主に液性免疫系(すなわち、抗体依存的免疫応答)を活性化する。現在開発中の他のワクチンは、腫瘍細胞を殺すことができる細胞傷害性Tリンパ球を含む細胞性免疫系の活性化に重点を置いている。癌ワクチンは一般的に、抗原提示細胞(例えば、マクロファージおよび樹状細胞)および/またはT細胞、B細胞、およびNK細胞などの他の免疫細胞の双方に対する癌抗原の提示を増強する。癌ワクチンはいくつかの型の1つをとってもよいが、その目的は、APCによるそのような抗原の内因性のプロセシング、およびMHCクラスI分子の状況における細胞表面上の抗原提示の最終的な提示を容易にするために、癌抗原および/または癌関連抗原を抗原提示細胞(APC)に送達することである。1つの型の癌ワクチンは、被験体から採取されてエクスビボで処置された後、被験体に細胞全体として再導入される癌細胞の調製物である全細胞ワクチンである。これらの処置は任意で、細胞を活性化するためにサイトカイン曝露、細胞からサイトカインを過剰発現させるための遺伝子操作、または腫瘍特異的抗原もしくは抗原カクテルによるプライミング、および培養物の増大を伴う。樹状細胞ワクチンは、抗原提示細胞を直接活性化し、その増殖、活性化、およびリンパ節への遊走は、免疫応答の誘発能を増強するために足場組成物によって調節される。処置される癌のタイプには、中枢神経系(CNS)癌、CNS胚細胞腫瘍、肺癌、白血病、多発性骨髄腫、腎臓癌、悪性神経膠腫、髄芽細胞腫、および黒色腫が含まれる。
【0137】
抗原特異的免疫応答を誘発する目的に関して、足場装置は哺乳動物に埋め込まれる。装置は、免疫細胞を活性化して特異的抗原によって細胞をプライミングするように調整されて、それによって免疫防御の増強ならびに望ましくない組織および細菌またはウイルス病原体などの標的微生物の破壊を増強する。装置は、GM-CSFなどのシグナル伝達物質を含有および/または放出することによって、マクロファージ、T細胞、B細胞、NK細胞、および樹状細胞などの適切な免疫細胞を誘引する。これらのシグナル伝達物質は、足場組成物において他の生物活性化合物を組み込むために用いられる同じ技術を用いて、その放出を空間的および時間的に制御するように足場組成物に組み入れられる。
【0138】
免疫細胞が装置の内部に存在すると、装置は、望ましくない組織(例えば、癌、脂肪の沈着、またはウイルス感染もしくはそうでなければ疾患を有する細胞)または微生物を攻撃するようにまたは免疫系の他の局面によって攻撃を与えるように、免疫細胞をプログラムする。免疫細胞活性化は、標的特異的組成物の調製物、例えば癌細胞表面マーカー、ウイルスタンパク質、オリゴヌクレアチド(oligonucleatide)、ペプチド配列、または他の特異的抗原などの望ましくない組織または生物の表面上に見いだされるリガンドに常在免疫細胞を曝露することによって達成される。例えば、有用な癌細胞特異的抗原および他の組織または生物特異的タンパク質を以下の表に記載する。
【0139】
装置は任意で、多価ワクチンを作製するために多数のリガンドまたは抗原を含有する。組成物は、装置の中を遊走する免疫細胞が装置の中を横切る際に組成物に曝露されるように、足場組成物の1つまたは複数の区画の表面内に包埋されるかまたはその上にコーティングされる。抗原または他の免疫刺激分子は、足場組成物が分解すると細胞に曝露されるかまたは細胞に曝露されるようになる。装置はまた、リガンドを認識して抗原提示を増強するように免疫細胞をプログラムするワクチンアジュバントを含有してもよい。例示的なワクチンアジュバントには、ケモカイン/サイトカイン、CpGに富むオリゴヌクレオチド、または標的細胞特異的抗原またはリガンドに同時に曝露される抗体が含まれる。
【0140】
装置は、免疫細胞を足場の中に遊走するように誘引して、そこで細胞は抗原特異的に教育されて活性化される。次に、プログラムされた免疫細胞は、多くの方法でリンパ節に向かって出て行くように誘導される。動員組成物および展開シグナル/組成物、例えばリンパ節遊走誘導物質は、足場材料への組み入れおよび/またはそこからの放出法によってプログラムされるか、または誘引物質を含有する足場区画の連続的分解によって制御されて、1回または複数回のバーストで放出される。バーストが消散すると、細胞は離れるように遊走する。忌避物質を含有する区画は、1回もしくは複数回のバーストで、または経時的に着実に忌避物質を分解および放出するように設計される。忌避物質の相対的濃度により、免疫細胞は装置から出るように遊走する。または、装置の中に置かれているまたは装置の中に遊走した細胞は、忌避物質を放出するように、または自身の挙動を変化させるようにプログラムされる。例えば、足場に付着させたプラスミドDNAに細胞を曝露することによって、局所遺伝子治療が行われる。有用な忌避物質には、ケモカインおよびサイトカインが含まれる。または装置は、装置を分解および放出することによって、免疫細胞を出現させる。
【0141】
ワクチン装置構築物において標的疾患状態、刺激分子、および有用な抗原を以下に記載する。
【0142】
免疫応答を促進するための生物活性因子
a.インターロイキン: IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-8、IL-10、IL-12、IL-15、IL-17、IL- 18等。
b.TNF-α
c.IFN-γ
d.IFN-α
e.GM-CSF
f.G-CSF
g.Ftl-3リガンド
h.MIP-3β(CCL19)
i.CCL21
j.M-CSF
k.MIF
1.CD40L
m.CD3
n.ICAM
o.抗CTLA-4抗体
p.TGF-β
q.CPGに富むDNAまたはオリゴヌクレオチド
r.細菌に関連する糖部分:リポ多糖(LPS)は例である。
s.Fasリガンド
t.Trail
u.リンフォタクチン
v.マンナン(M-FP)
w.熱ショックタンパク質(apg-2、Hsp70、およびHsp 90は例である。)
【0143】
疾患および抗原−ワクチン接種標的
a.癌:抗原およびその起源
i.生検から抽出された腫瘍溶解物
ii.放射線照射腫瘍細胞
iii.黒色腫
1.MAGE シリーズ抗原(MAGE-1は例である。)
2.MART-1/黒色腫
3.チロシナーゼ
4.ガングリオシド
5.gp100
6.GD-2
7.O-アセチル化GD-3
8.GM-2
iv.乳癌
1.MUC-1
2.Sos1
3.プロテインキナーゼC-結合タンパク質
4.逆転写酵素タンパク質
5.AKAPタンパク質
6.VRK1
7.KIAA1735
8.T7-1、T11-3、T11-9
V.他の一般的および特異的癌抗原
1.ヒトテロメラーゼ酵素(hTRT)
2.サイトケラチン-19(CYFRA21-1)
3.扁平上皮癌抗原1(SCCA-1)、(プロテインT4-A)
4.扁平上皮癌抗原2(SCCA-2)
5.卵巣癌抗原CA125(1A1-3B)(KIAA0049)
6.ムチン1(腫瘍関連ムチン)、(癌腫関連ムチン)、(多形上皮ムチン)(PEM)、(PEMT)、(エピシアリン)、(腫瘍関連上皮膜抗原)、(EMA)、(H23AG)、(落花生反応性尿中ムチン)、(PUM)、(乳癌関連抗原DF3)
7.CTCL腫瘍抗原se1-1
8.CTCL腫瘍抗原se14-3
9.CTCL腫瘍抗原se20-4
10.CTCL腫瘍抗原se20-9
11.CTCL腫瘍抗原se33-1
12.CTCL腫瘍抗原se37-2
13.CTCL腫瘍抗原se57- 1
14.CTCL腫瘍抗原se89-1
15.前立腺特異的膜抗原
16.5T4癌胎児栄養膜糖タンパク質
17.Orf73カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス
18.MAGE-C1(癌/精巣抗原CT7)
19.MAGE-B1抗原(MAGE-XP抗原)(DAM 10)
20.MAGE-B2抗原(DAM6)
21.MAGE-2抗原
22.MAGE-4a抗原
23.MAGE-4b抗原
24.結腸癌抗原NY-CO-45
25.肺癌抗原NY-LU-12変種A
26.癌関連表面抗原
27.腺癌抗原ART1
28.傍腫瘍関連脳-精巣-癌抗原(腫瘍神経抗原MA2;傍腫瘍神経抗原)
29.神経腫瘍腹側抗原2(NOVA2)
30.肝細胞癌抗原遺伝子520
31.腫瘍関連抗原CO-029
32.腫瘍関連抗原MAGE-X2
33.滑膜肉腫、Xブレークポイント2
34.T細胞によって認識される扁平上皮癌抗原
35.血清学的に定義された結腸癌抗原1
36.血清学的に定義された乳癌抗原NY-BR-15
37.血清学的に定義された乳癌抗原NY-BR-16
38.クロモグラニンA;副甲状腺分泌タンパク質1
39.DUPAN-2
40.CA 19-9
41.CA 72-4
42.CA 195
43.癌胎児抗原(CEA)
b.AIDS(HIV関連抗原)
i.Gp120
ii.SIV229
iii.SIVE660
iv.SHIV89.6P
V.E92
vi.HC1
vii.OKM5
viii.FVIIIRAg
ix.HLA-DR(Ia)抗原
X.OKM1
xi.LFA-3
c.一般感染疾患および関連抗原
i.結核
1.結核菌(Mycobacterium tuberculosis)抗原5
2.結核菌抗原85
3.ESAT-6
4.CFP-10
5.Rv3871
6.GLU-S
ii.マラリア
1.CRA
2.RAP-2
3.MSP-2
4.AMA-1
iii.可能性がある変異体インフルエンザおよび髄膜炎株
d.神経保護−神経疾患(例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、プリオン病)に対する保護
1.自己CNS抗原のクラス
2.ヒトα-シヌクレイン(パーキンソン)
3.βアミロイド斑(アルツハイマー)
e.自己免疫疾患(多発性硬化症、リウマチ性関節炎等)
i.MHC抗原に連鎖した疾患
ii.異なるクラスの自己抗原
iii.インスリン
iv.インスリンペプチドB9-23
v.グルタミン酸
vi.デカルボキシラーゼ65(GAD 65)
vii.HSP 60
疾患連鎖T細胞受容体(TCR)
【実施例】
【0144】
実施例
実施例1:GM-CSFを負荷したPLG装置
GM-CSF 3μgを負荷したPLGマトリクスをC57BL/6Jマウスの皮下嚢に埋め込んだ。マクロ孔性PLGマトリクスは、GM-CSF、危険シグナル、および癌抗原を既定の空間的時間的様式でインビボで提示し、かつ動員されたDCがプログラムされる際のDCの居所として役立つ。これらのマトリクスは、常在DCを有効に動員するために、最初の5日以内にその生物活性GM-CSF負荷のおよそ60%を放出し、その後次の10日間にわたって生物活性GM-CSFをゆっくりと持続的に放出した(図11A)。
【0145】
マトリクスは以下のように作出された。D,L-ラクチドおよびグリコリドの85:15、120 kDのコポリマー(PLG)(Alkermes, Cambridge, MA)を気体発泡プロセスにおいて利用してマクロ孔性のPLGマトリクスを形成した(Harris, L.D., Kim, B.S., and Mooney, D.J. Open pore biodegradable matrices formed with gas foaming. J. Biomed.Mater. Res. 42,396-402(1998))。GM-CSFは、高圧CO2発泡プロセスを用いてPLG足場に封入された(54%効率)。GM-CSFを封入するPLGミクロスフェアは、標準的なダブルエマルションを用いて作出された(Cohen S., Yoshioka T., Lucarelli, M., Hwang L.H., and Langer R. Controlled delivery systems for proteins based on poly(lactic/glycolic acid) microspheres. Pharm. Res. 8,713-720 (1991))。腫瘍溶解物を組み入れるために、C57BL/6Jマウス(Jackson Laboratory, Bar Harbor Maine)の背部皮下で成長させたB16-F10腫瘍の生検を、コラゲナーゼ(250 U/ml)(Worthington, Lakewood, NJ)において消化して、液体窒素での急速凍結および融解(37℃)4サイクルに供した後、400 rpmで10分間遠心した。腫瘍溶解物を含有する上清を収集してPLGミクロスフェアと共に凍結乾燥して、得られた混合物を用いてPLG足場に基づく癌ワクチンを作出した。CpG-ODNをPLG足場に組み入れるために、CpG-ODN 1826、5'-tcc atg acg ttc ctg acg tt-3'(Invivogen, San Diego, CA)を最初に、混合物をボルテックスミキサーによって撹拌しながらODN-1826溶液をPEI溶液に滴下することによって、ポリ(エチレンイミン)(PEI、分子量〜25,000 g mol-1、Sigma Aldrich)分子と縮合させた。PEIとCpG-ODN(NH3+:PO4-)の電荷比を、縮合のあいだ7で一定に維持した。PEI-CpG-ODN縮合体溶液を50%(重量/体積)ショ糖溶液60μlと共にボルテックスミキサーによって撹拌して凍結乾燥し、乾燥ショ糖と混合して最終重量を150 mgとした。ショ糖含有縮合体をブランク、GM-CSFおよび/または腫瘍溶解物を負荷したPLGミクロスフェアと混合してPLG癌ワクチンを作出した。
【0146】
動物に投与後、組織学的分析を14日目に行った。分析から、足場への総細胞浸潤は、対照(GM-CSFを組み入れていない)と比較して有意に増強されることが明らかとなった(図11B)。DC(細胞表面抗原CD11cおよびCD86に関して陽性の細胞)に関する特定の分析から、GM-CSFが総常在細胞数を増加させるのみならず、DCである細胞のパーセンテージも増加させることが示された(図11C)。GM-CSF送達の結果として材料に常在しているDCの数は、一般的にプログラムされてエクスビボプロトコル(〜106個)によって投与されたDCの数とほぼ同じであるかそれより良好であり、増強されたDC数は、経時的に材料において維持された。インビボDC動員に及ぼすGM-CSFの効果は時間および用量依存的であった(図11D)。
【0147】
周辺組織における独自のインビボ濃度プロファイルを提供して、DC成熟および常在DCの分散を調節するために、PLG足場から送達されるGM-CSFの用量を変化させた(図11E)。GM-CSFを有しない足場を埋め込むと、埋め込み直後に中等度の局所レベルが得られたがその後1〜2日までに低レベルへと低下し、おそらく手術および埋め込まれたPLGに対する炎症応答により5日目に再度ピークに達した。PLG足場からのGM-CSFの送達によって、経時的に類似のGM-CSF濃度プロファイルが得られたが、かなり高い局所濃度であった。GM-CSFの初回用量をほぼ倍加させると、システムは、おそらく常在DCおよび白血球による内因性のGM-CSF産生により、インビボでのGM-CSFピークレベルに一桁の差を達成した。GM-CSFの二次ピークは用量3000 ngで5日目に見いだされ、用量7000 ngでは7日目に見いだされた(図11E)。GM-CSFの3000または7000 ngのいずれの用量を利用したかによらず、DCの活性化状態は、GM-CSFレベルが低下し始めた際(それぞれ、10日および28日)にピークに達して、DCプログラミングに関して最適な濃度範囲に入る。
【0148】
GM-CSFのパルスが活性化DCのバッチを動員してその後リンパ節へとホーミングするように放出できるか否かを試験した。足場に動員されたDCはこの標識を摂取することから、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)をPLG足場に組み入れて着色した。標識は後に、鼠径リンパ節への輸送後にこれらの細胞を同定するために用いることができる。2日目に、用量3000 ngのGM-CSFによって、おそらく足場部位でDCを捕捉するGM-CSFの高い初回レベルにより、リンパ節ホーミングの阻害が起こった(図11F)。しかし、GM-CSFレベルが低下すると、動員されたFITC陽性DCのバッチはマトリクスから放出されて、それによってリンパ節において優れた持続的なDCの存在が得られる。
【0149】
局所GM-CSF濃度を一時的に制御すると、次にDCのバッチの動員および分散が制御されることから、癌ワクチンとしてのこれらの細胞の有用性を、常在DCに腫瘍抗原を負荷するためにマトリクスに黒色腫腫瘍溶解物を固定することによって評価した。これらのPLG癌ワクチンをC57BL/6Jマウスに埋め込んで、14日後にこれらのマウスに非常に攻撃性で転移性の高いB16-F10黒色腫細胞を注入した。ブランクPLG足場のみを埋め込まれたマウスは全て、これらの細胞の攻撃性により、18日以内に認識可能な腫瘍を有し、23日までに安楽死させなければならなかった。PLG足場からの抗原単独の送達は、この群における数匹のマウスが40日まで生存したことから、マウスの運命をわずかに改善した。意外なことに、GM-CSFと抗原とを同時に送達すると、腫瘍形成を劇的に減少させ、最適なGM-CSF用量は腫瘍の形成を、動物の50%においておよそ40日間遅らせて、動物の23%を治癒した。その上、最適なGM-CSF曝露(400 ng)と組み合わせた局所腫瘍抗原提示は、腫瘍形成までの時間の代表値を、抗原単独と比較して3倍増加させて、最適化されていないGM-CSF曝露と比較してほぼ2倍に増加させた。
【0150】
次に、免疫組織化学による腫瘍組織に対するT細胞浸潤の分析を行って、プログラムされたDCがT細胞活性化および腫瘍へのホーミングを誘導することができるか否かを決定した。抗原単独によるワクチン接種により、CD4(+)T細胞浸潤が得られた。特に、適切なGM-CSF提示によってインサイチューでDCのバッチを動員およびプログラムすることによって、CD8(+)細胞傷害性T細胞数はブランク対照に対して2倍増加した。ワクチンの効力は、CD8およびCD4 T細胞ノックアウトマウスにおいて減弱されて、免疫防御におけるCD4およびCD8 T細胞の特定の役割を証明した。
【0151】
インサイチューDCプログラミングの持続的プロセスは、それらがマトリクスに常在化した後に、GM-CSF阻害からDCを解放する追加の手がかりを提示することによって達成される。特に、外因性のGM-CSFによる合成CpG-ODNの提示は、細菌感染症の模倣体を提供して、その中で炎症性サイトカインによって動員された細胞は、細菌に存在するCpG-ODNなどの「危険シグナル」を活性化する局所のToll様受容体によって刺激される。CpG-ODNは、ヌクレオチドを最初にポリエチレンイミン(PEI)と縮合して陽イオンナノ粒子を形成することによってPLGマトリクスに固定された。CpG-ODNとPLG粒子との組み合わせを発泡させた後、CpG-ODNは、陰イオンPLG材料との静電気相互作用によりマトリクスにほとんどが保持された(25日間で>80%)。CpG-ODN固定によって、GM-CSFによって動員された宿主DCは、それらがマトリクス内に常在するとこれらのヌクレオチドを局所に取り込むことができる。意外にも、このアプローチによって、足場における活性化DC(MHCIIおよびCCR7に関して陽性)の数はそれぞれ、GM-CSFまたはCpG-ODN送達単独に対しておよそ2.5倍および4.5倍増加した。CpG-ODN提示は、インサイチューで阻害性GM-CSFレベル(>40 ng/ml)の存在下でDC活性化を増強し、このことは、DC動員および活性化のより持続的なプロセスを示している。この感染症模倣システムは、活性化DCを確実に生成した。この感染症模倣体による免疫応答の大きさは、これらの動物のリンパ節が顕著に肥大していることからおおよそ確認された。最も重要なことは、マトリクスに最初に動員されてその後リンパ節に分散されたDCの数が6倍に増加することがこのシステムにおいて達成されたことである。
【0152】
次に、持続的DC動員、プログラミングが免疫応答を生成できることを黒色腫モデルにおいて試験した。ワクチンは有意な防御を提供して、防御のレベルはCpG用量と相関した。動物の生存は、CpGの用量0μg、10μg、および100μgで23%から50%に増加して、最終的に90%まで増加した。この材料感染症模倣体は、既存の細胞に基づく治療によって得られる防御と同等またはより良好な免疫防御を誘導した。溶解物単独を伴いCpG-ODNを提示する材料は20%の生存を示すに過ぎず、これは、GM-CSFによってDCが動員されるという利点を示す。DCをプログラムする際に動員されたDCの居所を提供するという利点は、GM-CSF 3000 ngの存在下および非存在下で腫瘍溶解物、CpG-ODNのボーラス注射から成るワクチン製剤が失敗したことによって証明された。その上、動員された細胞の居所を提供することなく持続的なGM-CSF送達を提供するように、ボーラスCpG-ODNおよび腫瘍溶解物送達と共にGM-CSF負荷PLGミクロスフェアを注入した場合、免疫防御はほとんど起こらず、動物は35日間以上生存しなかった。
【0153】
この材料システムによる免疫防御の機序をさらに検査するために、GM-CSFおよびCpG-ODNを単独または共に提示する材料における、DCのサブセットおよびこれらの細胞によるサイトカインの内因性の産生を、免疫応答の特異性に沿って分析した。GM-CSF単独の送達は、CD11c(+)CD11b(+)骨髄系DCの動員を増強したが、CpG-ODN送達単独はこのサブセットの総数に対してほとんど効果を示さなかった。しかし、CpG-ODN送達は、その部位での形質細胞様DCの数を実際に増加させた。これは主にTヘルパー(Th)-1サイトカイン、特に、抗原と共にCpG-ODN提示に応答してCD8(+)細胞傷害性T細胞免疫を促進することができる1型インターフェロン、およびインターロイキン(IL)-12を分泌すると記述されている。したがって、CpGシグナル伝達は、形質細胞様DCの存在の増加から予想されるように、常在DC上の活性化マーカーの発現をアップレギュレートするのみならず、ワクチン部位でIFN-γおよびIL-12産生を誘導した。その上、完全に防御されなかった(感染症模倣体:CpG-ODNの10μg用量)動物のサブセットにおいて形成された腫瘍へのT細胞浸潤の分析により、これらの動物においても、CpG-ODNによるDCプログラミングによって対照に対してCD8(+)T細胞浸潤がほぼ3倍に増加することが判明した。さらに、チロシナーゼ関連タンパク質(TRP)-2は、マウス(B16全細胞ワクチンが含まれる)およびヒトの双方における黒色腫ワクチンによって誘発される免疫応答の主な抗原標的であり、脾臓から単離された細胞をMHCクラス1/TRP2ペプチド五量体によって染色すると、ワクチン接種マウスにおいてTRP2特異的CD8 T細胞の劇的な増大が明らかとなった。これらの抗原特異的T細胞は、腫瘍細胞の殺傷に関与しており、ワクチン接種後の免疫防御を容易にする。加えて、生存マウスの33%が、腫瘍接種部位(頚部背部)で皮膚の斑および体毛の脱色を発症した。おそらくメラノサイト抗原に対するT細胞応答を伴う脱色は、ヒト黒色腫患者における臨床応答の改善に相関するものであり、これらの試験において、感染症模倣体によって処置したマウスに限って観察された。
【0154】
これらの結果は、ポリマー材料システムによる感染症の局面の模倣が、DCを有効に動員、活性化、およびリンパ節へホーミングさせることによって、腫瘍の進行に劇的に影響を及ぼすことを示している。第一のアプローチは、DCを腫瘍抗原提示材料に動員するためにGM-CSF単独のパルスを利用した。DCはその後材料内に常在して、GM-CSFレベルが低下するまで捕捉され、細胞は活性化されて分散されるようになりうる。GM-CSFの特定の濃度および持続は、その効果にとって極めて重要である。その後、GM-CSFによる動員の後にCpG-ODN提示による常在DCの活性化、およびその後の放出によって感染症様微小環境を通じてDCを往復輸送するための連続プロセスが開発された。材料からのPEI縮合CpG-ODNの提示は、材料に常在する活性化宿主DCの数を増加させたのみならず、リンパ節へと遊出したプログラムされたDCのパーセンテージおよび総数を増加させた。さらに、特定のDCサブセットおよびDC機能に関して選択されたCpG-ODNシグナル伝達は、防御的免疫応答に関連した。
【0155】
DCの輸送および活性化に対するシステムの定量的制御は、癌ワクチンの効力に対する調節と言い換えられた。プログラムされてリンパ節へと分散されるDCの数が増加すると、生存は0から25%、最終的には90%まで増加した。実際に形成した腫瘍におけるT細胞数とワクチン効力とのあいだに明確な関係が認められたことから、T細胞は免疫防御を媒介し、および感染症模倣体は、黒色腫抗原特異的T細胞の生成を誘導した。ボーラス型で送達された、および細胞の居所を提供せずに持続的に放出されたワクチンは、有意な防御免疫を産生することができなかったことから、マトリクス構造は、長期間持続型の免疫を産生するために必要であった。報告は、臨床的に適切な腫瘍モデルにおいて防御免疫を促進するためには細胞移植または多数回の全身注射が必要であるという結論に達したが、データは、機能的なポリマー常在材料を含む装置が、たとえ大きく低減された総薬物用量での1回適用であっても(例えば、足場システムにおける3μg 対 反復全身注射での総用量100μg)、これまでのシステムと同等かまたはより優れた有意で特異的な免疫防御を提供することを示している。
【0156】
これらのデータは、材料システムがインサイチューでDCをプログラムして、エクスビボでの細胞操作および移植の複雑さおよび費用を必要としないのみならず、動員されて、活性化され、およびリンパ節へと分散されるDCの数に対して厳密な制御を提供することから、有意な臨床での関連性を有した。患者は装置によって処置され、装置は現在の癌ワクチンに対する代替体を提供するか、またはそれらおよび他のアプローチと共に用いられる。
【0157】
システムは、破壊的免疫応答を促進する(例えば、感染疾患を根治する)または寛容を促進する(例えば、自己免疫疾患を打倒する)ことが望まれる他の状況に応用可能である。インサイチュー細胞プログラミングのための一時的居所としてポリマーを用いることは、エクスビボ細胞操作に依存する現行の細胞治療(例えば、幹細胞治療)に対して強力な代替体である。
【0158】
実施例2:合成CpG-ODN分子の縮合は細胞の取り込みを増加させる
合成CpG-ODN分子をPEIと縮合させて、それによって、細胞膜との会合を促進して、膜貫通輸送を増強することによって細胞インターナリゼーションを促進する陽性荷電の低分子PEI-CpG-ODN縮合体が得られた(図2)。PEIのアミン基とODNのリン酸基のあいだの電荷比7および15でのODN縮合によって、最適な粒子サイズおよび陽電荷(図2BおよびC)が得られたが、高用量でのPEI毒性が原因で、電荷比7を実験において利用した。
【0159】
CpG-ODNとPEIとの縮合は、インビトロでのDCへのヌクレオチド取り込みを劇的に増強した(図3A〜C)。DCへのCpG-ODN取り込みの定量により、ODN縮合体と裸のODNのあいだには数桁の差(〜100倍まで)が明らかになり、これはインビトロで長時間(>80時間)維持された(図3C)。複合体はその後脱縮合して(図3D)、エンドソームに存在することが既に証明されているその細胞内受容体TLR-9へとCpG-ODNを局在化させた。
【0160】
実施例3:CpG-ODNはDCの活性化およびDCの可動化を誘導した
DCの有効なCpG刺激は、細胞内局在化を必要とすることから、PEI縮合体のDC活性化に及ぼす効果を評価した。インビトロでPEI-CpG-ODNによって刺激されたDCは、裸のCpG-ODNによって刺激されたDCと比較して増強されたレベルのCD86、MHCII、およびCCR7発現を示し、これは縮合体のDC取り込みと強く相関した(図4AおよびB)。DCは、PEI-CpG-ODNの細胞取り込み時に、細針状の樹状突起の発達と大きい膜膨張とを含む活性化された形態を示し、これによって成熟DCはT細胞を「包み込んで」強い細胞-細胞相互作用を促進することができる。PEI-CpG-ODNによって刺激されたDCの活性化状態は、TNF-αおよびLPS(図3C)によって刺激された陽性対照の状態を代表したか、またはそれを超えており、PEI-CpG-ODN縮合体は、インビトロでCCL19に対するDCの遊走を非刺激DC(図4D)に対して3倍増加させた。
【0161】
縮合オリゴヌクレオチドおよび高レベルのGM-CSFの双方に曝露された細胞において、有意なDC活性化が認められたが(図5A)、PEI-CpG-ODN縮合体はまた、GM-CSF阻害からDCを解放した。加えて、PEI-CpG-ODN刺激はまた、高いGM-CSF源(500 ng/ml)からCCL19へと向かうDC遊走も促進した(図5B)。
【0162】
PEI-CpG-ODN縮合体を有効に固定して常在DCに提示して(図6A)DCの活性化および可動化を刺激するPLGシステムが開発された。局所PEI-CpG-ODN提示は、インビトロでのDCの可動化を促進した(図6)。興味深いことに、PLGマトリクスからCCL19へのDC遊出を増強するPEI-CpG-ODNの最適な用量範囲5〜50μgが存在するが、高用量(500μg)は、DC遊走に対して効果を有しなかった(図6BおよびC)。PEI-CpG-ODN 25μgまた、このモデルにおいて高いGM-CSFレベルがDC遊走に対して有する抑制効果を中和した(図6C)。これらの結果は、適切なCpG-ODN提示が、インサイチューで高レベルのGM-CSFによって動員されてそうでなければ捕捉された宿主DCを持続的にプログラムして分散させるための手段を提供することを示している。
【0163】
実施例4:感染症模倣体はインビボでDCを持続的にプログラムして分散させる
DCを持続的に動員してプログラムするための感染症模倣システムは、宿主DCをPLGマトリクスに誘引するためにGM-CSFの同時放出によって作製されたが、PEI-CpG-ODN縮合体は、おそらくプラスミドDNAに関して示されているように、動員されたDCに複合体を局所に取り込ませる静電結合により、マトリクス内にほとんどが保持された(25日間で>80%)(図6)。特に、最適化された場合、このアプローチによって、インサイチューでマトリクスに常在するMHCIIおよびCCR7発現DCの数はそれぞれ、およそ2.5倍および4.5倍増加した(GM-CSFまたはCpG-ODN送達単独に対して)(図7AおよびB)。興味深いことに、高用量のPEI-CpG-ODN(>50μg)によって、比較的低いMHCII発現および増強されたCCR7発現が得られ、このことは低用量と比較してDC機能の差次的調節を示している(図7A)。最適なCpG-ODNシグナル伝達(〜10〜25μg)は、インサイチューで阻害性GM-CSFレベル(>40 ng/ml)の存在下でDC活性化を増強し、この感染症模倣システムは、エクスビボプロトコルにおいて一般的に投与される活性化DCの数(>106個)をもたらした(図7AおよびB)。
【0164】
最も重要なことに、マトリクスに最初に動員されてその後リンパ節へと分散されたDCの数の6倍増加は、このシステムによって達成された(図8A)。感染症模倣体に対する免疫応答の大きさは、これらの動物のリンパ節が顕著に肥大したことから、おおよそ認識されることができた(図8BおよびC)。感染の応答によって特徴付けされるように、これらの腫脹したリンパ節は、DCを含むより多くの数の免疫細胞を含有した(図8CおよびD)。
【0165】
実施例5:感染症模倣微小環境は強力な抗腫瘍免疫を付与する
次に、免疫応答を生成するために持続的にDCを動員およびプログラムすることができるか否かを、黒色腫モデルにおいて試験した。このワクチンは、動物の50%が80日間の時間枠において腫瘍を形成しなかったことから(図9)、有意な防御を提供し、この結果は、広く研究された細胞に基づく治療によって得られた結果と驚くほど類似であった(図9)。lys+CpGを投与された動物は、処置後140日でも37.5%が腫瘍を有さず、免疫防御を達成した。
【0166】
さらに、完全に防御されなかった動物のサブセットにおいて形成された腫瘍組織へのT細胞浸潤の分析により、これらの動物においてもCpG-ODNによるDCプログラミングによって対照と比較してCD8(+)T細胞浸潤のほぼ3倍の増加が起こることが明らかとなった(図10)。このように、Lys-GM-CpG処置を受けた動物は全て治療上の利点を証明した。
【0167】
実施例6:腫瘍の防御はCpG-ODNの提示および形質細胞様DC(pDC)の濃縮によって調節される
骨髄およびリンパ球系列の双方の造血前駆細胞は、侵入する病原体に対して特異的応答を伝えることができる特異的防衛機構がその各々に備わっている2つの主なカテゴリーのDC、すなわち形質細胞様DC(pDC)および通常の(conventional)DC(cDC)への分化能を有する。この柔軟性によって、おそらくDCサブセットの動員および生成を、所望の免疫応答を誘発させることに最も熟達させることが可能になる。cDCには、長い突出した樹状突起を有する古典的(classical)DC形態を示し、それによって抗原処理およびT細胞に対する抗原提示にそれらを特に適合させる、CD11c+CD11b+およびCD11c+CD8α+細胞が含まれる。pDCは、細菌またはウイルスDNAにおける非メチル化CpGジヌクレオチド配列などの「危険シグナル」に応答して大量の1型インターフェロンを産生することができる丸い非樹状細胞である。
【0168】
pDC由来1型インターフェロン(IFN)は、CD8+T細胞に対する抗原の交差提示および細胞傷害性T細胞のクローン性の増大を容易にするcDCによるインターロイキン産生(例えば、IL-12)を誘発することによって、ウイルス感染症に対する生得の適応免疫につながっている。1型IFNはまた、ナイーブT細胞のTヘルパー1細胞への分化を直接誘導するように作用する。強力なIFNを産生することに加えて、炎症刺激および微生物感染によって刺激されたpDCは、T細胞応答をプライミングするために抗原をプロセシングして提示することができる樹状型へと分化する。pDCおよびcDCは、防御免疫もたらす独自の細胞および分子事象を開始する特殊な機能を行うように協調作用する。
【0169】
多くの細胞に基づく癌ワクチンは、DCネットワークの異なる成分を組み入れることができない。癌ワクチンはしばしば、サイトカイン混合物を用いてエクスビボでDCに変換されて、抗原提示を促進するように腫瘍抗原をパルスされた、容易にアクセス可能な患者由来の血液中の単球を用いて開発される。これらの抗原負荷DCは次に、主にTh1細胞およびCTLによって媒介される抗腫瘍免疫応答を誘導する目的で、癌患者の背中に戻すように注入される。進行癌患者においてエクスビボDCワクチンを利用する最初の治験によって、抗原特異的T細胞増大および防御的サイトカインの産生が起こったが、多くのワクチンは従来の処置(例えば、化学療法)に対して生存に関する長所を示すことができず、FDAの承認を得ることができなかった。これらの細胞に基づくワクチンは、移植されたDCのインビボ機能に対する制御を提供せず、ワクチンに1つのDCタイプを組み入れたに過ぎず、これは最も強力とはならない可能性がある。ゆえに、律速段階はおそらく、特に免疫応答が生成される際のDC活性化および特殊化のプロセスにおいて、エクスビボで免疫コンピテントDCの発達を完全に反復できないことである。本明細書において記述される装置および方法は、そのような初期のアプローチの短所を克服し、ゆえに、初期のシステムに対していくつかの長所を有する。
【0170】
装置は、腫瘍に対する防御免疫応答を生じるために、不均一なDCネットワークのインサイチュー動員および生成を制御する埋め込み可能な合成の細胞外マトリクス(ECM)を含む。サイトカインは材料から周辺組織に放出されることから、DC前駆体およびDCを動員するために、GM-CSFをポリラクチド-コ-グリコリド(FDA承認生体材料)に組み入れた。これらのマクロ孔マトリクスは、固定された腫瘍抗原およびCpGに富むオリゴヌクレオチドを危険シグナルとして提示して、細胞が材料内に常在するあいだにDCの発達および成熟をプログラムすることができる。ワクチン部位で生成されたDCサブセットの分布は、材料および危険シグナルの用量により癌抗原の提示を改変することによって調節され、これは当技術分野において認識されるB16-F10腫瘍モデルにおいて試験した場合に、腫瘍に対する防御的免疫応答の大きさに有意に影響を及ぼした。
【0171】
マトリクスは、DCを動員するためにGM-CSFのパルスを放出するように作出され、GM-CSF 0、3000、および7000 ngを負荷されて、C57BL/6Jマウスの皮下嚢に埋め込まれた。周辺組織において形成されたGM-CSF勾配は、埋め込み部位から1〜3 mmおよび3〜5 mmの距離でそれぞれ、GM-CSF濃度が100μg/mlおよび30μg/ml(GM-CSFを組み入れていないものに対して>30倍の差)に達したように、埋め込み後12時間でピークに達した。因子がPLGから隣り合う組織へと放出されるあいだ、上昇したGM-CSFレベルが長期間(およそ10日)維持された。GM-CSF 3000 ngを負荷したPLGマトリクスの埋め込み後14日での組織学分析により、ブランク対照に対して増強された細胞浸潤が明らかとなり、CD11c(+)DC集団のFACS分析は、GM-CSF送達がブランク対照より有意に多くのDC(〜8倍増加)を動員することを示した。動員されたDCの総数および共刺激分子CD86の発現は、用量依存的にGM-CSF送達を増加させた。
【0172】
次に、PLGマトリクスを改変してTLR活性化PEI縮合CpG-ODN分子を固定して、GM-CSFによって動員されたDC集団に、それらを危険シグナルとして提示した。縮合CpG-ODNシグナル伝達にGM-CSFを提供すると、埋め込み後10日で組織学分析によって明らかとなったように、PLGマトリクスへの細胞浸潤が劇的に増強された。重要なことに、PLGマトリクスからのCpG-ODN提示は、特定のDCサブセットの局所存在を調節して、防御的サイトカインの産生が得られた。GM-CSFによって動員されたDC浸潤物をCpG-ODNによって刺激すると、PLGマトリクスには、t-ヘルパー1(Th1)免疫に関連する1型IFN産生の増強を示すDCサブセットである、CD11c(+)PDCA-1(+)形質細胞様DC(pDC)が濃縮した。
【0173】
CpG-ODNによって、腫瘍部位へのpDCの選択的動員および増大が起こる。CpG-ODNの用量は、常在pDCの数を調節するように制御され、pDC数はCpG-ODNの0、10および100μg用量でそれぞれ細胞190,000個から520,000個まで、1,100,000個まで増加した。GM-CSF送達単独は、マトリクスに動員されたCD11c(+)CD11b(+)cDCの数を有意に増強させたが、CpG-ODNとの同時提示は、mDC集団またはCd11c(+)CD8(+)DCのいずれに対してもほとんど影響を与えなかった。高用量のCpG-ODNは、IFN-α(〜1010 pg/ml)、IFN-γ(〜600 pg/ml)の局所産生を促進し、より程度は低いが埋め込み部位でのIL-12(150 pg/ml)の産生を促進し、これらはこの状態でのpDC数の増加と相関した。GM-CSFによるDCの動員は、CpG-ODNシグナル伝達が、pDC集団の増大およびTh1サイトカインの産生に関して有意な効果を有するために必要であった。これらの結果は、合成細胞外マトリクスからの制御されたGM-CSFおよびCpG-ODN危険シグナル伝達が、Th1サイトカインの産生と共に常在pDCおよびCD11c(+)CD11b(+)cDC数を有効に調節できることを示している。
【0174】
癌抗原をCpG-ODNと共にマトリクス常在DCに同時提示することが、さらなるDCの発達、活性化、および抗原感作を促進して、それによって防御的腫瘍免疫および細胞傷害性T細胞応答をもたらすか否かを決定するために、試験を行った。B16-F10黒色腫腫瘍溶解物をPLGマトリクスに封入することによって、抗原提示マトリクスを組み立てた。GM-CSFおよびCpGシグナル伝達と組み合わせた制御された抗原提示は、埋め込み後10日目で、抗原を有しないマトリクスに対して常在pDC数を2倍、ブランク対照に対して10倍増強した(図12A)。GM-CSFと組み合わせた抗原提示またはCpGシグナル伝達単独ではpDC数に有意な差は観察されず、マトリクス常在DCのGM-CSF媒介動員およびCpG-ODN活性化の双方の利点を示した。ワクチン部位でのCD11c(+)CD11b(+)DC集団は、抗原またはCpGシグナル伝達が単独でもまたは組み合わせてもこれらのcDCの動員および増大に対して有意な効果を有しなかったことから(図12B)、GM-CSF送達のみ(図12B)に依存した。抗原およびCpG-ODN提示マトリクスによってCD11c(+)CD8(+)cDCは200,000個存在するが、これはGM-CSF媒介動員によっておよそ670,000個(ブランクマトリクスに対して9倍増加)まで増加した(図12C)。IFNおよびIL-12の内因性の産生の分析により、GM-CSFと組み合わせた抗原刺激が、CpG-ODN誘導と類似の内因性のIFN-αおよびIFN-γ産生を促進することが明らかとなった(図12D〜E)。加えて、抗原とCpG-ODNの双方を、GM-CSFによって動員された細胞集団に提示するマトリクスにおいて、T細胞増殖因子であるIL-12のインサイチュー産生は、ブランクマトリクスよりおよそ4倍高く、他の全てのマトリクス処方より少なくとも2倍高かった(図3F)。特に、抗原提示マトリクス部位での総細胞の有意な割合(10.3%)がCD8(+)(cDCサブセットおよび細胞傷害性T細胞)であり(図12G)、これはCD11c(+)CD8(+)cDCの数とIL-12の濃度の双方に相関した(図12C、F、G)。これらの結果は、癌抗原の提示に対して感受性である免疫応答が、インサイチューでCD8+T細胞活性を伴うCD8(+)DCを含む特定のDCサブセットの数および機能の双方を操作することによって生成されたことを示している。
【0175】
C57BL/6Jマウスを、インサイチューで特定のDCサブセットの生成および機能を差次的に調節するPLGに基づくワクチン(多様なGM-CSFおよびCPG-ODNの組み合わせ)から提示された黒色腫抗原(例えば、B16-F10腫瘍溶解物)を用いてワクチン接種して、ワクチン接種後14日目にB16-F10黒色腫腫瘍細胞を投与した。非ワクチン接種マウスの100%が腫瘍の負荷により23日までに安楽死とされる一方で、そうでなければ致死量後であっても、B16-F10腫瘍溶解物とCpG-ODN危険シグナル1、10、50、または100μgのいずれかの用量との双方を提示するPLGワクチンによって、ワクチン接種マウスのおよそ10〜30%が腫瘍なしで生存した(図13A)。意外にも、GM-CSF媒介DC動員を抗原およびCpG-ODN提示と組み合わせると、有意な腫瘍防御を生成した。CpG-ODNの10、50、および100μg用量によって、50、60、および90%の生存率が得られた(図13B)。生存率は、10日目でPLGワクチン部位で生成されたpDCの数と強く相関したが、動員されたCD11c(+)CD11b(+)DCの総数とは相関しなかった。加えて、比較的多数のCD11c(+)CD8(+)DC(細胞〜2×105個)を生成し(図13E)、およびインサイチューでIFN-α、IFN-γおよびIL-12産生を増加させるPLGシステムでは、高い生存率(60%および90%)が得られた。
【0176】
CpGおよびGM-CSF負荷足場によって生成されたDC集団は、たとえインサイチューでの総DC数が統計学的に類似であっても(3.05±0.55対2.67±0.64 100万個DC)、GM-CSF負荷足場と比較してより高い比率のpDC(〜38%対7%)およびCD8+cDC(〜9.4%対5.5%)(図13F)が得られ、マウス生存の有意な増強(90%対20%)がもたらされたことから、ワクチンシステムが不均一なDCネットワークを動員できることはまた、ワクチンの効力に対して強い効果を有する。その上、チロシナーゼ関連タンパク質(TRP)-2は、マウス(B16全細胞ワクチンを含む)およびヒトの双方における黒色腫ワクチンによって誘発された免疫応答の主な抗原標的であり、脾細胞をMHCクラスI/TRP2ペプチド五量体によって染色すると、より低いCpG用量である0または50μg(0.2%および0.3%脾細胞)のいずれかを提示するマトリクスと比較して、GM-CSF、抗原、およびCpG-ODN 100μgをワクチン接種したマウスにおけるTRP2特異的CD8 T細胞の有意な増大(0.55%脾細胞、1.80×105±0.6×104個)が明らかとなった。これらの抗原特異的T細胞の発達および増大は、pDC活性化およびその対応する1型IFNの産生によって誘導された。これらの細胞傷害性T細胞は次に、腫瘍細胞の殺傷に関与し、これはワクチン接種後の免疫防御を容易にした。これらの結果は、本明細書において記述される装置(PLGマトリクス)が、特殊化されたDCサブセットのインサイチューでの動員および増大を正確に調節することを示している。このpDCの選択的動員および増大は、これまでのワクチンアプローチと比較して癌抗原に対する免疫応答を劇的に改善し、腫瘍の進行を低減させ、かつ癌患者の生存を改善する。
【0177】
図14A〜Bは、治療モデルにおいて、対照をワクチン接種したマウスに対するPLGワクチンをワクチン接種したマウスの生存を示す。マウスに腫瘍細胞5×105個を接種して、腫瘍を触診可能(1〜3 mm3)となるまでマウスにおいて7日間成長させた。マウスに(7日目)、GM-CSF 3μg、腫瘍溶解物およびCpG-ODN 100μgを含有するPLG足場をワクチン接種した。確立された腫瘍(腫瘍の接種後7日目)を有するマウス(n=10)を用いて生存データを得た。GM-CSF、溶解物、およびCpG-ODNを含有するPLGワクチンをワクチン接種のために用いた。
【0178】
本明細書において記述されるマクロ孔性の合成ECMは、インサイチューで独自のDCネットワークを生成することができる微小環境を作製する炎症および感染症シグナル伝達物質の提示に対して、制御を提供した。これらのDCネットワークの総細胞数および不均一性は、B16黒色腫モデルにおける癌抗原に対する免疫応答の大きさと相関した。GM-CSFは、そのマクロ孔構造において宿主DC前駆細胞およびDCを動員および収容するためにPLGに基づくECMから急速に放出された。次に、インサイチューでのpDC発達を指示するためにCpG-ODNをGM-CSF分泌マトリクスの中に固定したところ、実際にCpGシグナル伝達は埋め込み部位でのCD11c(+)PDCA-1(+)pDC数を増強したのみならず、部位でのpDCの数を用量依存的に濃縮した。腫瘍抗原をPLGマトリクスに組み入れると、ワクチン部位でのCD11c+CD8+cDCの活性および濃縮の増強が観察された。癌抗原の提供によって、総CD8+細胞集団の増強が得られ、このことはCd8+DCおよびCd8+T細胞がインサイチューで抗原提示材料に応答して、免疫応答が細胞傷害性成分を有したことを示している。ワクチン埋め込み部位でのサイトカイン分析により、DCサブセットが、有効な免疫応答を生成するために協調的に作用することが示された。pDC数は1型IFNの存在と強く相関し、これは、これらの細胞によるCTLプライミングを増強するためにCD11c(+)CD11b(+)cDC(参照)の活性化およびそれによる抗原交差提示に役立った。加えて、pDCおよびCD8+cDC数は、IL-12産生と相関し、これはマトリクス常在DCによる抗原発現および交差提示ならびにCTLの発達および成長を促進する。
【0179】
腫瘍の成長およびT細胞分析から、DCネットワークの不均一性がインサイチューで増加すると、ワクチン効力も増加することが示された。総DC数は、GM-CSFシグナル伝達と統計学的に類似のままであったが、CpG-ODN危険シグナルを提供すると、pDC数を用量依存的に増加させて、これはB16-F10腫瘍投与後の動物の生存に強く相関した。PLGワクチンからの黒色腫抗原提示と共にCpG-ODN用量10、50、および100μg(GM-CSF分泌マトリクスにおいて)によって、マウスの45%、60%、および90%が生存した。PLGワクチンからGM-CSFシグナル伝達を除去すると、インサイチューで生成されたDCの総数が急速に低減し、それによって生存は10%に低下したが、一方でCpG-ODNシグナル伝達を除去すると、大部分のDC(87.4%)がCD11b+CDCであったことからインサイチューでのpDCが低減する。防御免疫を誘導するために必要な最少数のDCを各DCサブセットに関して決定したが、腫瘍投与後に50%より大きい生存を達成するためには、CD11b+cDCおよそ2,000,000個と協調するためにpDCがおよそ600,000個およびCD8+cDCが200,000個(全DCの〜30%)必要であった。
【0180】
結果は装置として臨床的に有意であり、および方法は、免疫を生成するためにインビボでDCサブセットを定量的に標的として使用することができ、それによって独自の防御免疫応答が得られたことを証明した。
【0181】
他の態様
本明細書において参照される特許および科学論文は、当業者に入手可能な知識を確立する。本明細書において引用される全ての米国特許および公表または非公表の米国特許出願は、参照により本明細書に組み入れられる。本明細書において引用された全ての公表された外国特許および特許出願は、参照により本明細書に組み入れられる。本明細書において引用された公表された他の全ての参考文献、文書、原稿、および科学論文は、参照により本明細書に組み入れられる。
【0182】
本発明は、その好ましい態様を参照して詳細に示し、記述してきたが、型および詳細における様々な変更を行ってもよく、それらも添付の特許請求の範囲に包含される本発明の範囲に含まれることは当業者によって理解されると考えられる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
足場組成物、動員組成物、および展開組成物を含む装置であって、該展開組成物が感染症模倣免疫モジュレーターを含む、装置。
【請求項2】
感染症模倣免疫モジュレーターが核酸を含む、請求項1記載の装置。
【請求項3】
核酸がシトシン-グアノシンオリゴヌクレオチド(CpG-ODN)を含む、請求項2記載の装置。
【請求項4】
感染症模倣免疫モジュレーターがPEI-CpG-ODN配列を含む、請求項1記載の装置。
【請求項5】
腫瘍抗原をさらに含む、請求項1記載の装置。
【請求項6】
免疫原性因子をさらに含む、請求項1記載の装置。
【請求項7】
免疫原性因子が、toll様受容体リガンド、CpG-ODN配列またはその誘導体、腫瘍抗原、増殖因子、熱ショックタンパク質、細胞死産物、およびサイトカインからなる群より選択される、請求項6記載の装置。
【請求項8】
動員組成物が顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)を含む、請求項1記載の装置。
【請求項9】
動員組成物が、封入されたGM-CSFを含む、請求項1記載の装置。
【請求項10】
足場組成物を提供する段階、動員組成物および展開組成物を該足場組成物の中に組み入れるかまたは該足場組成物の上にコーティングする段階を含む、足場を作出する方法であって、該展開組成物が感染症模倣免疫モジュレーターを含む、方法。
【請求項11】
組み入れるかまたはコーティングする段階を繰り返して複数の層を作製する、請求項10記載の方法。
【請求項12】
免疫原性因子を足場組成物の中に組み入れるかまたは足場組成物の上にコーティングする段階をさらに含む、請求項10記載の方法。
【請求項13】
足場組成物と、該足場組成物の中に組み入れられているかまたは該足場組成物の上にコンジュゲートされている生物活性組成物とを含む装置を、被験体に投与する段階を含む、インサイチューで持続的に樹状細胞をプログラムする方法であって、該足場組成物が、樹状細胞を誘引して該樹状細胞に免疫原性因子を導入し、それによって該樹状細胞を活性化し、かつ該足場組成物から離れて遊走するように該樹状細胞を誘導する、方法。
【請求項14】
足場組成物と、該足場組成物の中に組み入れられているかまたは該足場組成物の上にコンジュゲートされている生物活性組成物とを含む装置を、被験体に投与する段階を含む、ワクチンの効力を増加させる方法であって、該足場組成物が、樹状細胞を誘引して該樹状細胞に免疫原性因子を導入し、それによって該樹状細胞を活性化し、かつ該足場組成物から離れて遊走するように該樹状細胞を誘導し、それによってワクチン接種手法の有効性を増加させる、方法。
【請求項16】
足場組成物と、該足場組成物の中に組み入れられているかまたは該足場組成物の上にコンジュゲートされている生物活性組成物とを含む装置を、被験体に投与する段階を含む、癌に対するワクチン接種を被験体に行う方法であって、該足場組成物が、樹状細胞を誘引して該樹状細胞に免疫原性因子および腫瘍抗原を導入し、それによって該樹状細胞を活性化し、かつ該足場組成物から離れて遊走するように該樹状細胞を誘導し、それによって該被験体に抗腫瘍免疫を付与する、方法。
【請求項17】
装置が、腫瘍部位にまたは腫瘍部位の近傍に局所投与される、請求項16記載の方法。
【請求項18】
樹状細胞が形質細胞様樹状細胞を含む、請求項16記載の方法。
【請求項19】
足場組成物と、封入された動員組成物とを含む装置を、被験体に導入する段階を含む、インサイチューで樹状細胞をプログラムする方法であって、該動員組成物のパルスが前記導入段階から1〜7日以内に該装置から放出されて、残余量の該動員組成物が残り、続いて数週間にわたる残余量の緩徐な放出があり、それによって樹状細胞の動員、保持、およびその後の該装置からの放出を媒介する、方法。
【請求項20】
動員組成物がGM-CSFを含む、請求項19記載の方法。
【請求項21】
パルスが、装置と会合した動員組成物の量の少なくとも50%を含む、請求項19記載の方法。
【請求項22】
パルスが、装置と会合した動員組成物の量の少なくとも60%を導入段階後1〜5日で放出することを含み、かつ残余量が、該パルスの後、数週間にわたって放出される、請求項19記載の方法。
【請求項1】
足場組成物、動員組成物、および展開組成物を含む装置であって、該展開組成物が感染症模倣免疫モジュレーターを含む、装置。
【請求項2】
感染症模倣免疫モジュレーターが核酸を含む、請求項1記載の装置。
【請求項3】
核酸がシトシン-グアノシンオリゴヌクレオチド(CpG-ODN)を含む、請求項2記載の装置。
【請求項4】
感染症模倣免疫モジュレーターがPEI-CpG-ODN配列を含む、請求項1記載の装置。
【請求項5】
腫瘍抗原をさらに含む、請求項1記載の装置。
【請求項6】
免疫原性因子をさらに含む、請求項1記載の装置。
【請求項7】
免疫原性因子が、toll様受容体リガンド、CpG-ODN配列またはその誘導体、腫瘍抗原、増殖因子、熱ショックタンパク質、細胞死産物、およびサイトカインからなる群より選択される、請求項6記載の装置。
【請求項8】
動員組成物が顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)を含む、請求項1記載の装置。
【請求項9】
動員組成物が、封入されたGM-CSFを含む、請求項1記載の装置。
【請求項10】
足場組成物を提供する段階、動員組成物および展開組成物を該足場組成物の中に組み入れるかまたは該足場組成物の上にコーティングする段階を含む、足場を作出する方法であって、該展開組成物が感染症模倣免疫モジュレーターを含む、方法。
【請求項11】
組み入れるかまたはコーティングする段階を繰り返して複数の層を作製する、請求項10記載の方法。
【請求項12】
免疫原性因子を足場組成物の中に組み入れるかまたは足場組成物の上にコーティングする段階をさらに含む、請求項10記載の方法。
【請求項13】
足場組成物と、該足場組成物の中に組み入れられているかまたは該足場組成物の上にコンジュゲートされている生物活性組成物とを含む装置を、被験体に投与する段階を含む、インサイチューで持続的に樹状細胞をプログラムする方法であって、該足場組成物が、樹状細胞を誘引して該樹状細胞に免疫原性因子を導入し、それによって該樹状細胞を活性化し、かつ該足場組成物から離れて遊走するように該樹状細胞を誘導する、方法。
【請求項14】
足場組成物と、該足場組成物の中に組み入れられているかまたは該足場組成物の上にコンジュゲートされている生物活性組成物とを含む装置を、被験体に投与する段階を含む、ワクチンの効力を増加させる方法であって、該足場組成物が、樹状細胞を誘引して該樹状細胞に免疫原性因子を導入し、それによって該樹状細胞を活性化し、かつ該足場組成物から離れて遊走するように該樹状細胞を誘導し、それによってワクチン接種手法の有効性を増加させる、方法。
【請求項16】
足場組成物と、該足場組成物の中に組み入れられているかまたは該足場組成物の上にコンジュゲートされている生物活性組成物とを含む装置を、被験体に投与する段階を含む、癌に対するワクチン接種を被験体に行う方法であって、該足場組成物が、樹状細胞を誘引して該樹状細胞に免疫原性因子および腫瘍抗原を導入し、それによって該樹状細胞を活性化し、かつ該足場組成物から離れて遊走するように該樹状細胞を誘導し、それによって該被験体に抗腫瘍免疫を付与する、方法。
【請求項17】
装置が、腫瘍部位にまたは腫瘍部位の近傍に局所投与される、請求項16記載の方法。
【請求項18】
樹状細胞が形質細胞様樹状細胞を含む、請求項16記載の方法。
【請求項19】
足場組成物と、封入された動員組成物とを含む装置を、被験体に導入する段階を含む、インサイチューで樹状細胞をプログラムする方法であって、該動員組成物のパルスが前記導入段階から1〜7日以内に該装置から放出されて、残余量の該動員組成物が残り、続いて数週間にわたる残余量の緩徐な放出があり、それによって樹状細胞の動員、保持、およびその後の該装置からの放出を媒介する、方法。
【請求項20】
動員組成物がGM-CSFを含む、請求項19記載の方法。
【請求項21】
パルスが、装置と会合した動員組成物の量の少なくとも50%を含む、請求項19記載の方法。
【請求項22】
パルスが、装置と会合した動員組成物の量の少なくとも60%を導入段階後1〜5日で放出することを含み、かつ残余量が、該パルスの後、数週間にわたって放出される、請求項19記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3−1】
【図3−2】
【図4−1】
【図4−2】
【図4−3】
【図5A】
【図5B】
【図6−1】
【図6−2】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図9】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図11D】
【図11E】
【図11F】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図12D】
【図12E】
【図12F】
【図12G】
【図13−1】
【図13−2】
【図13−3】
【図14】
【図2】
【図3−1】
【図3−2】
【図4−1】
【図4−2】
【図4−3】
【図5A】
【図5B】
【図6−1】
【図6−2】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図9】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図11D】
【図11E】
【図11F】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図12D】
【図12E】
【図12F】
【図12G】
【図13−1】
【図13−2】
【図13−3】
【図14】
【公表番号】特表2011−511834(P2011−511834A)
【公表日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−546785(P2010−546785)
【出願日】平成21年2月13日(2009.2.13)
【国際出願番号】PCT/US2009/000914
【国際公開番号】WO2009/102465
【国際公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【出願人】(507244910)プレジデント・アンド・フェロウズ・オブ・ハーバード・カレッジ (18)
【出願人】(399052796)ダナ−ファーバー キャンサー インスティテュート インク. (36)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月13日(2009.2.13)
【国際出願番号】PCT/US2009/000914
【国際公開番号】WO2009/102465
【国際公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【出願人】(507244910)プレジデント・アンド・フェロウズ・オブ・ハーバード・カレッジ (18)
【出願人】(399052796)ダナ−ファーバー キャンサー インスティテュート インク. (36)
【Fターム(参考)】
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